シニア4年目で初優勝の湯原信光。大きく膨らむ米ツアーへの夢!

4年目、25試合でようやくシニア初勝利。感激の優勝カップを掲げる湯原信光(皇潤クラシック)
4年目、25試合でようやくシニア初勝利。感激の優勝カップを掲げる湯原信光(皇潤クラシック)

 PGAシニアツアーで湯原信光(52)がシニア4年目にして初優勝を果たしました。日本で3本の指に入るとまでいわれた美しいスイングの持ち主ながら、シニア入りしてなかなか勝てなかったのは何なのでしょう?シニアツアー25試合目にして感激の初優勝を皇潤シニア(8月8日最終日=福岡センチュリーゴルフ倶楽部)でつかみとった湯原にスポットを! そして今年の国内シニアツアーは4戦を終わって3試合でシニア初優勝者が誕生しています。シニアツアーにも新しい波が押し寄せているようです。
 
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 皇潤クラシックシニアオープントーナメントは、今年新設された試合です。親会社はサプリメントなどでおなじみの㈱エバーライフ社。会場となった福岡センチュリーゴルフ倶楽部は、女子プロツアーの「ヴァーナルレディス」が長年開催されたコースで、今年はスポンサーだけが変わり「フンドーキンレディス」として試合が行われました(優勝は横峯さくら)。2日間大会で賞金総額2,000万円(優勝賞金360万円)という規模の小さいトーナメントではありますが、シニアの選手達は「賞金額よりも試合数」との強い希望を持っていて、この新しいトーナメントにもほとんどの選手が顔をそろえました。
 

炎暑のもと、最終18番でウイニングパットを終え同伴選手と握手を交わす湯原信光(右端)(左・加藤仁、中・尾崎智勇=福岡センチュリーGC)
炎暑のもと、最終18番でウイニングパットを終え同伴選手と握手を交わす湯原信光(右端)(左・加藤仁、中・尾崎智勇=福岡センチュリーGC)

 連日35度超の炎暑でした。50歳以上のシニアのために競技委員会はこの試合「乗用カート利用可」との特別ルールでのぞみました。中には「歩く方がリズムが出る」とばかりに、乗用カートに見向きもせずに歩く元気ものもいましたが、ほとんどのプレーヤーはカートに乗っていました。歩く選手も日傘をさして、まるで女子プロのような風景でした。
 そんな中、湯原は初日から好調で7バーディー、2ボギーの5アンダー、67で単独首位のスタートでした。2位には3打差をつけるロケット出足は、2日間の短期戦では絶対有利です。
 「でもリードをもらって逃げるのは大変でした。前半3つとれて8アンダーまでいったので、後半はかえって慎重になってボギーを2つも出してしまった。10アンダーにしたいという頭があったが、なかなか許してくれませんでした。久々の優勝で、緊張もあったし、勝つことは大変です」
 最後は、2打差をつけていた水巻善典(5アンダー)がすでにプレーを終わっていたので少しは楽だったようです。最終18番(パー5)は、ショートアイアンでピンから左10メートル超にオンせるという緊張ぶりでしたが、なんとか2パットのパーで収めて逃げ切りました。
 
 「ショットはよかったし、今年中尺にしたパターがよくなったのが大きいです。シニアは先輩ばかりで神経はつかいます。選手層も厚いし、上手い後輩も入ってきますからそう簡単ではないけど、レギュラーツアーとは違った雰囲気は楽しいですね」
 

美しいスイングで終始安定したショットを見せた湯原信光(福岡センチュリーGC)
美しいスイングで終始安定したショットを見せた湯原信光(福岡センチュリーGC)

 4年目にしてやっとつかんだシニア優勝。ショットメーカーとして名をはせた湯原も強度の腰のヘルニアで悩み続けていました。レギュラー時代から引きずっている持病ですが、手術だけは何とか避けて懸命のリハビリやトレーニングでしのいできました。レギュラー最後の勝利(7勝目)になった02年のKBCオーガスタは、「奇跡の復活」といわれる10年ぶりの優勝でした。今回のシニア優勝は、それ以来8年ぶりの勝利の美酒です。腰が完治したわけではありませんが、厳しいトレーニングを続けながらの”カムバック”ですから、その嬉しさもひとしおでしょう。
 
 もう一つの勝因は、パターを中尺に変えたことです。”ショットはうまいのにパターだけが問題”といわれ続けた湯原に、昨年最終戦のとき、”長尺の先輩”、中嶋常幸や倉本昌弘が「お前にはこれしかない!」とアドバイスされ、湯原はロングシャフトへの転向を決意しました。
「目線の位置をいままでと変えずにシャフトを長くしてみた。いわるゆ中尺ですね。そしたら、球を打ち出す神経がいらなくなって距離感だけに集中できるようになった。メカニズムが単純なって結果がよくなってきた」
 今年は開幕戦からこの中尺パターを離せず、ぐんぐんとパッティングの調子が回復し始めました。シニア25試合目の初勝利もそのたまものだったのです。
 
 湯原には若いときから思い続けてきた夢があります。米ツアーへの挑戦です。シニアになってからも米国シニア(チャンピオンズツアー)への予選会を2度挑戦しました。昨年は、本戦に出られるのは優勝者一人という全米シニアオープンのハワイ予選にトライして見事優勝、本戦に進んだ経験もあります。今年も同じハワイ予選を受験、惜しくも2位で逸機しましたが、「僕のアメリカに行きたい夢はまだ終わっていません。今年もチャンピオンズツアーの資格を取りにいきます。みなさんに楽しんでもらえるゴルフを目指して、前に進んでいくだけです」ときっぱり言っている湯原です。日本シニアツアーの賞金ランキング5位以内に入り、うち希望する上位1人が最終予選会に出られるのです。
 
 優勝賞金360万円とはいえ、夢を追いかける湯原にとって”シニア優勝”はビッグなご褒美です。これで賞金ランキングも6位に上がってきました。シニアツアーは残り6試合ですが、これからは賞金も大きい試合が続きます。4戦中、3試合でシニア初優勝者が出たシニアツアーですが、経験豊富な湯原の「1勝」には、また特別な意味がありそうです。