ジャンボ尾崎(63)がようやく世界ゴルフ殿堂入りを果たしたのにはちょっとびっくりでした。というのも、ジャンボは1998年に殿堂入りの資格を得ていたのに、毎年規定の投票数に満たないで″落選〝を繰り返していました。12年も経ったいま、突然?の殿堂入りには何かワケがあったのでしょうか。世界ゴルフ殿堂COOのジャック・ピーター氏、同理事でR&Aチーフエグゼクティブのピーター・ドーソン氏が来日して10月上旬横浜のホテルで記者発表されましたが、ジャンボご本人も少々テレ気味の受彰でした。
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パンパシフィック横浜ベイホテル東急のボールルームには、壇上へ歩む赤絨毯が敷かれ、上下ストライプ入りのスーツに身を固めた尾崎将司がうつむき加減に赤絨毯を踏みしめて壇上に上がりました。中央のジャンボをはさみ、右にジャック・ピーター、ピーター・ドーソン両氏。左には日本ゴルフツアー機構理事の海老沢勝二氏(小泉会長代理)と日本PGA松井功会長が並んで着席しました。
ジャック・ピーター氏から「世界ゴルフ殿堂は、世界のゴルフ界に貢献してきた偉大なプレーヤーを称えるために入る殿堂です。2011年のメンバーの1人には日本の宝ともいうべき人・尾崎将司がこの殿堂に入ることが決まりました。来年5月、米国フロリダ州セント・オーガスティンで開催される入会式典において世界ゴルフ殿堂のメンバーとなります。皆さん、尾崎将司に盛大な拍手をどうぞ!」との発表でした。
ピーター・ドーソン氏のお祝いのスピーチのあと神妙に聞き入っていたジャンボがスピーチです。
「本日は私の世界ゴルフ殿堂入りに際して多くの方々が、また遠方より来ていただきありがとうございます」とまず感謝の意を表したあと、心境を述べました。
「私はかねてより常に”現役”を口にし、そのような行動をとってきました。したがってこういう賞は自分には重荷になるのではないかと思ってました。しかし、ファンの方々に勇気と感動を与え、喜んでもらえることは真摯(しんし)に受け止めなければならないと思います。私は、日本のゴルフ界に貢献してきた自負はありますが、世界では残念な結果しかありません。そうした中で、私を評価していただいたことは光栄でございます」と、受彰には当初消極的だったことをほのめかしました。
続けて、”現役”にこだわる心境をここで改めて吐露しました。
「私が現役にこだわるについても条件があります。それは常に優勝できる立場に身を置いていなければいけないということです。いまも思考錯誤しながら練習を積んでいますが、いまのゴルフ界は若手が台頭し、(用具において)科学の急激な発展が様相を変えてきました。若い人が、進歩した用具によって勢いをつけてきました。私も負けていません。飛距離にこだわって、1ヤードでも、本当は10ヤードでも伸ばしたい。私のポリシーとしてゴルフ一筋で生きてもう一度優勝争いをしたいし、その緊張感の中で自分がどう変わっていくかを確かめたい。私に残された時間は長くありませんが、それを少しでも長くできるよう切磋琢磨(せっさたくま)しています。これからも情熱を持ちながら集中していきたいと思っています。私の頭の中にはいまも”優勝”の2文字しかありません」
このあとゴルフジャーナリスト(代表者)とのやり取りの中でも「私は国際的に世界のトーナメントでポイントを上げたわけじゃない。その気持ちはずっと持っている。こういう賞は、ホントは引退してからの方がいいかなと思っていた」と、受彰にためらいがあったことを再度口にしました。
世界ゴルフ殿堂にこれまで入っていた日本人選手は3人でした。樋口久子(03年)、青木功(04年)、岡本綾子(05年)に続く日本人4人目がジャンボです。1998年にジャンボが表彰の対象となりながら毎年″落選〝したのは、ジャンボ自身も「プライドもあった」ともらしたように残念な結果でした。資格がなくなることはないにしても、ノミネートの紹介から消えるのではないかと心配もされました。
その選考とはどういうものでしょうか。
日本のプレーヤーたちが入るのは「国際部門」ですが、その〔資格基準〕として
①年齢が40歳以上であること。
②試合からの得るポイントが合計50ポイント以上であること。
(たとえば、世界のメジャー優勝には6ポイント。日本ツアーの優勝には2ポイントなどで、ジャンボはすでに225ポイントを得て、ポイント数では1位が続いていた)
国際投票をするのは以下の人たちで構成されます。
①世界ゴルフ殿堂の生存するメンバー。
②選ばれた国際ジャーナリストと資格のある歴史家。
③世界ゴルフ財団の理事会。
④世界ゴルフ殿堂の顧問委員会。
★選ばれた国際ジャーナリストは世界に約200人。うち日本人ジャーナリストは現在18人★
主にこれらの選考委員によって毎年投票が行われますが、投票は1人最高3票までの連記です。
「選考で投票の65%を獲得した被指名者は、皆世界ゴルフ殿堂への受彰者となる」が「誰も65%を獲得しない場合には、投票数の50%を獲得すれば、最多票のものが受彰する」となっています。
今回のジャンボは、無条件で入れる65%には達しませんでしたが、50%は越えており、その最多票を得た被指名者としての受彰でした。いわばぎりぎりでの殿堂入りだったわけです。
殿堂入り候補者にノミネートされてから12年もの間、ジャンボが基準に達しなかったことについてジャック・ピーター殿堂COOはこう話しました。
「その間、ニック・ファルド、セベ・バレステロス、トニー・ジャクリン、ベルンハルド・ランガーら、その他にも有力な候補者がいて票を取られたこと。それと投票者が、被指名者の人選するにあたって、詳細にデータを分析していなかったことなどがあげられる。最近はそういう投票者が減ってきた」と。
確かにジャンボの成績は、優勝回数113回と、抜群ですが、”インターナショナルツアー”となると「72年ニュージーランドPGA」の1勝だけです。
“世界の目”がジャンボに向かなかったとしても不思議ではありませんが、ここへきてようやく日本の宝・尾崎将司にスポットが当たったことは遅まきながら喜ぶべきことでしょう。
表彰式は来年5月9日、米フロリダ州のセント・オーガスティンで盛大に行われますが、ジャンボは長旅を理由にこのパーティーへの出席を渋っているようです。世界殿堂と日本での連携を持っている日本ゴルフツアー機構では「そんなことがあっては日本のメンツにかかわります。なんとしてでも出席してもらえるよう説得します」(JGTO関係者)と心配顔です。晴れやかな表彰式でのジャンボのスピーチを聞きたいものです。