4日間72ホールのうち、なんと28ホールがバーディーです。千葉で生まれ、袖ヶ浦CCでゴルフを育てた池田勇太(24)が、豪快な逆転劇でブリヂストンオープン(10月26日最終日=袖ヶ浦CC袖ヶ浦コース)を制しました。文字通り地元で、ジュニア時代から世話になったブリヂストンの大会での優勝。それも昨年に続いて大会2連覇というのですからスポンサーも大喜び。今季3勝目でプロ通算7勝目。賞金王への期待も膨らみ、石川遼のお株を完全に奪った若大将・勇太の進撃です。
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昨年も”勇太と遼”は最後まで賞金王争いを演じて、男子ゴルフ界に新風を吹き込みました。ブリヂストンの最終日は、その再来を思わせる争いでした。遼が4バーディーで、前半32で回ると、勇太は5バーディーで31です。後半に入ると遼がまた4バーディーで32と追い上げます。勇太も負けていません。13番からの4連続を含めて5バーディーでまた31。勇太「62」、遼「64」。ともにノーボギーのゴルフは壮観でした。惜しむらくはこの二人、同組ではなかったのが残念でしたが、出遅れていた遼も日ごとに調子を戻して最終日は勇太に対抗する”30人抜き”のゴルフを披露してギャラリーを喜ばせました。しかし、予選落ちギリギリで通った遼は、22位フィニッシュがやっと。優勝した勇太には水をあけられた試合になりました。
それにしても勇太の最終日のチャージは凄かったです。首位片山晋呉に2打差の2位からでしたが、一緒に回った片山も苦笑いを連発するくらいパットが入りました。アイアンのキレがよくてピンに絡んだホールも多かったですが、3番は3.5メートル、5番(パー3)は手前ラフからチップイン、15番は4メートル、16番(パー5)は、左ドッグレッグのコーナーに立つ”ご神木”に当ててラフに落としましたが、3オンさせた7メートルをねじ込むと、片山は首を振り振りもう笑っていました。3日目に片山が10アンダー、62で回ってコースレコードを出しましたが、1日遅れで今度は勇太が同じ62でお返しでした。
勇太はジュニア時代からブリヂストン社には世話になり、クラブもブリヂストンですが、このブリヂストンオープンには高校時代から推薦出場させてもらっていました。ですから袖ヶ浦コースは「すみずみまで分かっている。グリーンも、乗ればある程度(ラインは)分かる」(勇太)という強みはありました。それでなくてもパー5は4つとも2オンの可能性があり、プロにはバーディーの出やすいコースですが、6年前の2004年9月に従来の高麗グリーンからベントグリーンに改造されたことで「高麗の難しさ」はなくなり、よりスコアの出るコースにサマ変わりしました。連日10アンダーが出た(片山と池田)袖ヶ浦コースにはそんな裏事情もありますが、そうしたことのすべてを勇太は知り尽くしていたのです。昨年大会でも勇太は4日間のうち3日が60台。最終日は「65」を出しての逆転勝ちでした。今年はそれをさらに5ストローク縮める23アンダーですが、これは大会記録を更新した自己ベスト(従来は63)スコアでもありました。
池田勇太9096万2千円で賞金ランク4位に浮上。3位の石川遼は9585万8千円で、その差は489万6千円と接近しました。1位を走る金庚泰(キム・キョンテ)の1億2026万5千円にも手の届くところまで追い上げてきました。残り試合は5試合。優勝賞金は2試合が3000万円、最後の3試合は4000万円というビッグゲームを残していますから、これから”勇太&遼”のラストスパートは見ものになってきました。今月上旬、テレビマッチで対面した2人は「今年は同じ試合で2人が優勝争いしていないね」と話し合ったばかりでした。
大学(東北福祉大)に進学した分、勇太は遼より4つ年上です。プロ転向は勇太が07年、遼が08年。アマチュアで優勝してプロに入りいきないトップスターになった遼に対して、勇太はQT(ツアー予選会)も2度受験、プロ3年目の昨年、やっと初優勝してスターダムへの仲間入りをしました。今季は勇太3勝で通算7勝。遼は2勝で通算8勝。プロでは多少遅れをとっていた勇太が、じわじわと遼を追い詰めてきました。昨年はシーズン終盤、右手甲や腰を痛めて満足な体調でないまま、最後は遼に賞金王を譲った勇太です。その痛い経験を生かして、今年は福田努トレーナーを日米ツアーに同伴、万全な体調をキープして終盤戦に挑んでいます。
昨年プロ初優勝した日本プロでは、2位に7打差という衝撃的なゴルフでデビューしました。2勝目のVana杯KBCオーガスタでは最終日「63」で回ってプレーオフに持ち込み逆転勝ち。キャノンでも最終日、初日に続くコースレコードタイの「64」で逆転優勝。今季もTOSHINでは17アンダーのハイスコアで1勝目。ANAでは競り勝ち、今回のブリヂストンでは10アンダーでの逆転勝ちです。常に何かをしでかす意外性、爆発力を秘めた魅力を池田勇太は持っています。 石川遼との競り合いがますます面白さを増してきました。