“戦う姿勢”欲しかった有村智恵の逸勝!?仲良しアン・ソンジュとの一騎打ちで4日間大会また勝てず。

キュートな笑顔がかわいい有村智恵のドライバーショット。
キュートな笑顔がかわいい有村智恵のドライバーショット。

 最終組2人が激しい優勝争いを演じましたが、最終18番でボギーにした有村智恵(23)が1年2ヵ月ぶりの勝利を逃がしました。サントリーレディス(神戸・六甲国際GC。12日最終日)、有村にとっては今季4試合めの”4日間大会”でしたが、そのいずれも最後に崩れて優勝を逸しているのは気がかりです。自滅で敗れたあと、勝った仲良しのアン・ソンジュ(韓国)の両ほほを両手で包んで笑顔で祝福した仕草は、勝負師らしくない”やさしさ”さえ感じさせました。人気上昇の有村ですが、持ち前の負けん気が薄れているのでしょうか?もっと戦う姿勢をみせて欲しいという声も聞こえてきます・・。23日からはまた4日間大会の全米女子プロ選手権(ニューヨーク州ローカストヒルCC)に挑戦する有村智恵に注目です。
 
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ティーグラウンドでスタートの準備をする有村智恵(左)。右は横峯さくら。
ティーグラウンドでスタートの準備をする有村智恵(左)。右は横峯さくら。

 激しい優勝争いでした。2R、3Rと連続67でアン・ソンジュと並んでトップに立った有村は、久々最終日、最終組での”勝負”でした。1番で1.5メートルのパーパットを外してボギースタート。しかし、4、5番で連続バーディーで取り返し9番もバーディー。前半で2つ伸ばし、12番でアン・ソンジュがボギーとした時点で2打差をつけて単独首位でした。ところが、勝負どころの後半は有村にさっぱりバーディーがきません。逆に13番をバーディーとしたアン・ソンジュは続く14番も6メートルをずばり決めて連続バーディー。足踏みが続いた有村の「2打リード」は一瞬にして消え、14アンダーで二人は首位に並びました。
 

今期2勝目、共に4日間大会を制したアン・ソンジュ(23)。
今期2勝目、共に4日間大会を制したアン・ソンジュ(23)。

 残り4ホール。有村は17番(パー3)で4メートルにつけるチャンスがきましたが、入りません。グリーンを外していたアン・ソンジュはチップショットでOKにつけるパーと粘ります。14アンダーで並んだまま距離のある最終ホール(416ヤード、パー4)です。有村は右のラフ。アン・ソンジュは左に曲げてラフ。有村は200ヤード近く残った第2打を、ユーティリティで狙いましたがグリーン右手前のバンカー。アン・ソンジュは6Iで2オンさせるしぶとさで明暗を分けました。
 「30ヤードはあった」有村のバンカーショットは、グリーン奥のカラーまで転がります。ここからの9メートルのパーパットは決まりません。確実にパーセーブしたアン・ソンジュが1打差をつけて優勝。有村の今季初優勝は、土壇場痛恨のボギーで夢と消えました。
 
 最後まで争いながら敗れた有村は、なぜかすがすがしい表情でした。もちろん涙もなくアン・ソンジュに駆け寄ると、アンの両ほほに両手を添えて笑顔の祝福をくれました。熾烈な戦いも、終われば”ノーサイド”。優勝者を称えるのはいいのですが、勝気な有村にしては、なんともやさしい試合直後の表情でした。
 「最後はティーショットもセカンドもミス。でもいい戦いでした。バックナインであと3つ4つは伸ばしたいと思っていたけど、とれなかったのが敗因ですね。終盤、最後まで粘る韓国選手はさすがだと思います。でもこの緊張感を忘れないようにこれからも戦っていきたいです」と有村。勝負どころのバックナインに入って「どっちかが勝った方がご飯をご馳走しようなんて話してました」(有村)というアンとの会話が気になります。同い年の二人は日頃から仲がよく、こうした会話も弾んだのでしょうが、有村にはもう少し”戦う姿勢”もみせてほしかった気もします。 「有村さんがいなかったら、いいプレーができなかった」と相手を称えたアン・ソンジュでしたが、やはり昨年の賞金女王は一枚上でした。
 

この春は米・フロリダの著名なコーチ、デビッド・レッドベター氏の練習施設で3週間の合宿を張った有村智恵。ショットは安定してきたのだが・・。
この春は米・フロリダの著名なコーチ、デビッド・レッドベター氏の練習施設で3週間の合宿を張った有村智恵。ショットは安定してきたのだが・・。

 火の国・熊本の出身。2年上の宮里藍を慕って遠く宮城県の東北高へ進学。3年生になって主将に指名され、卒業した06年7月のプロテストでは、史上最多となった2位に7打差をつけてトップ合格して話題を集めました。09年にはフジサンケイレディス初日に史上9人目のアルバトロスを達成するなどの活躍で名前を上げ、シーズン5勝を挙げて年間獲得賞金1億円を突破、最終戦まで賞金女王を争いました(3位)。コンピューター大手の日本ヒューレット・パッカード社と所属契約を結ぶなど愛らしいルックスで人気も急上昇。女子ゴルフ界を盛り上げる選手になりましたが、昨年は1勝どまり(賞金ランク6位)で有村自身、韓国人パワーに危機感さえ抱いていました。
 
 今季国内開幕前の米女子HSBCチャンピオンズ(シンガポール)では、初日からトップに立ち4日間大会での優勝争いを演じましたが、最終日、カリー・ウェブ(豪州)に逆転されて1打差の2位に泣きました。4月に米国遠征したクラフト・ナビスコ選手権(4日間)では7位。国内最初のメジャー、ワールドサロンパスカップ(4日間)は、3日目5位にいながら、最終日78をたたいて22位に沈みました。過去7勝のうち、4日間大会での優勝はまだありません。今大会終了時点での賞金ランク上位5人に与えられた全英女子オープン(7月・カーヌスティGC)の出場権も、2年連続出場中でしたが逃がしました。
 次週のニチレイレディスに出場したあと、全米女子プロにのぞみますが、春のHSBCチャンピオンズでの悔しさを、同じ海外のメジャーで晴らせられれば、最高なのですが・・。