遼を抜き去ったロリー・マキロイ。“ポスト・タイガー”の一番手に! 全米OP、4日間独走の完全ゴルフ

全米オープン、予選は通過したが"好敵手"ロリー・マキロイには完敗した石川遼
全米オープン、予選は通過したが"好敵手"ロリー・マキロイには完敗した石川遼

 石川遼の好敵手といわれたロリー・マキロイ(北アイルランド)に18ストローク差をつけられて遼は敗れました。世界の目が集まった今年の全米オープンゴルフ。ワシントン郊外のコングレッショナルCC(7574ヤード、パー71)で開催されましたが、初日から首位に立ったマキロイが、断然の強さをみせて通算16アンダー、268で完全優勝。メジャー初制覇で“ポスト・タイガー”の筆頭に名乗りをあげました。戦う前から「いまマキロイと比較されるのは辛い」と、その実力の差を認めていた遼ですが、その言葉通りの敗戦。遼にとっては、昨年に続く2度目の全米オープンを、2年連続で予選クリアしたのがせめてもの収穫。通算2オーバーの30位でした。
 
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メジャーになると3日目の"落とし穴"にはまる石川遼。その克服が課題。
メジャーになると3日目の"落とし穴"にはまる石川遼。その克服が課題。

 石川遼今年の全米オープンのスタートは、池ポチャのダブルボギーでした。クラブハウスをバックに大勢のギャラリーが見守る前で打つ10番は、218ヤードと距離のあるパー3。14年前に行われた全米オープンでは最終18番だったこのホール。大幅な改造でティーグラウンドの位置も逆にして以前の面影もないショートホールに変貌していました。距離がある上、横長のグリーンの手前ギリギリまで池。後方にはバンカーが口をあけている難ホールです。重圧の中で打った遼の第1打は、ジャストミートできずに右へ押し出すような球で力なく池に落ちました。
 

ドライバーも左方向への曲がりが多かった石川遼の全米OP。精度のアップが急務。
ドライバーも左方向への曲がりが多かった石川遼の全米OP。精度のアップが急務。

 朝一番のショットがダブルボギーというのはきつい。「緊張して体をコントロールできなかった」と頭を垂れた遼クン。これを最後まで引きずった「第1打」になりました。初日、バーディーは3つとりましたが、とってもすぐボギーがくるなど、ボギー先行の一日。3つのバーディーに対して4つのボギー、ダブルボギーが1つの3オーバー。初日62位と出遅れたゴルフは、2日目、何とか5つのバーディーをとって立て直しました。初日池ポチャの10番も、安全に奥目に乗せてパーで乗り切りました。1アンダーの70で回り、通算2オーバーとして33位で予選は通過です。渡米前、国内ツアーで2週連続で予選落ちをしていた悪夢も、約1ヵ月ぶりにメジャーの舞台で晴らしたのはホッとしたことでしょう。
 
 石川遼は今年の全米オープンが9度目のメジャー出場です。そのうち予選を突破して決勝ラウンドに進んだのは、今回を含めて5回。そのすべてで「3日目」は鬼門なのです。昨年の全米オープンでは75と崩れて順位を下げましたが、今年4月のマスターズでも、73と4日間で最悪のスコアで20位から30位に後退でした。今年の全米オープンでも“3日目の厚い壁”は生きていました。9番(パー5)で3番アイアンの第2打を大きく左に曲げ、林を突き抜けてグリーンへ向かう橋の上に落とすミスショット。競技委員の指示で橋の下でドロップ。橋げたの間を縫って打つトラブルとなり、何とかボギーですみましたが、パー5でのボギーは想定外でした。 これでリズムを崩した石川は、後半は4ボギー。17番は2メートルのパーパットを外し、18番はバンカーから寄せられずに連続ボギーで上がるなど、74をたたいて33位から48位に落ちました。予選をクリアしてホッとするのでしょうか。体力的な疲れが出るのでしょうか。いざ決勝ラウンドへ、という“攻めのゴルフ”がいつも裏目と出て痛い目にあっています。
 プレッシャーから抜け出したような最終日は、一転してのびのびとしたゴルフで6バーディー(3ボギー)で68。初めての60台をマークし、順位も30位に戻して今年の全米オープンを終えました。
「最後に初めて60台が出せてリベンジができました」と、やっと笑顔がこぼれましたが、
“ムービングサタデー”といわれ上位へのチャージをかけなければいけない3ラウンド目の問題解消は、石川遼にとって大きな課題として残ったようです。
 

4日間60台。断然の強さでメジャー初制覇したロリー・マキロイ。″ポスト。タイガー〝の
4日間60台。断然の強さでメジャー初制覇したロリー・マキロイ。”ポスト。タイガー”の一番手だ。

 ロリー・マキロイのゴルフは、確かに石川遼との比較にはならない安定度をみせていました。初日、ノーボギーの6バーディー(65)で飛び出したあとは連日の60台。2日目、パー4で唯一300ヤード台(354ヤード)の短い8番では、残り114ヤードをウェッジでピン上8メートルに落とし、バックスピンで直接カップインさせるイーグルでギャラリーの大歓声を受けました。抜群のフェアウェイキープを続け、構えたら素振りなしでサッと打つパターの距離感やグリーンの読みもすばらしいものがありました。3日目を終わって大会ベスト(54ホール)の通算14アンダー。2位のY・E・ヤン(韓国)に8打差をつけて最終日を迎える独走です。
 
 昨年7月の全英オープンで初日63を出して飛び出しながら、最終日に失速して3位でした。今年4月のマスターズでも、3日間首位で走りながら最終日80で15位に転落した苦い経験があります。“今度も・・”とのカゲの声は、いまのマキロイには全く通じませんでした。最終18番では、グリーン手前エッジからスロープを下っていく15メール超もあるロングパットを、30センチに寄せる見事な距離感でパーセーブ。69で回って2位に8打差をつける通算16アンダーのメジャー初制覇でした。
 22歳の優勝は、1924年以降では00年のタイガー・ウッズの24歳などを超えた最年少の快挙。昨年優勝のマクダウエルに続く、英国人の連覇は86年ぶりです。その他記録ずくめの独走優勝。ロリー・マキロイ、リッキー・ファウラー(米)に石川遼。一昨年来、頭をもたげてきた同世代のヤングパワーを「トリプルR」と称されました。
 「トリプルRなどといわれるのは光栄ですが、いま僕がマキロイと比較されるのは辛いです。実力が違います。10年後に世界で争いたい」-遼は3つ年上のマキロイをこう評していましたが、その通りマキロイは石川遼を抜き去って「ポスト・タイガー」の一番手に名乗りをあげたようです。
 約1ヵ月後の7月14日から始まる今季3つ目のメジャー「全英オープン」(ロイヤル・セント・ジョージスGC)が見ものになってきました。