18番グリーンサイドから“シャンク”して勝った室田淳。日本シニアOP初制覇。

シニア7年目。ようやく日本シニアOPのメジャータイトルをとった室田淳(右)。JGA安西孝之会長(左)から優勝カップを受けた(広島CC八本松コース)
シニア7年目。ようやく日本シニアOPのメジャータイトルをとった室田淳(右)。JGA安西孝之会長(左)から優勝カップを受けた(広島CC八本松コース)

 日本シニアゴルフの最高峰に室田淳(56)が初めて立ちました。シニアツアーに05年参加して以来7年目。通算6勝は挙げていましたが、最高メジャー、日本シニアオープンには過去4回の2位がありながら勝てず、夢にまでみた初タイトル(広島CC・八本松コース)でした。2打差があったものの、最終18番のグリーンエッジからの“寄せ”をシャンクさせる「鳥肌がたった」(2位の芹澤信雄)ハプニングを演じ、1打差で辛うじて逃げ切る冷や汗ものの大会初制覇でした。一度は手袋をはめ直した1打差の2位には、シニア2年目の芹澤信雄(51)。「ゴルフって凄いスポーツだね」ーポツリもらした室田は、賞金1600万円を獲得、低迷していた賞金ランク28位から一気に2位に上がり、1位の金鍾徳(キム・ジョンドク)とは1209万7000円差。11月3日からのシニアツアー最終戦、富士フィルムシニアでの逆転を狙えるところまで迫っていますが・・。
 
    ☆★         ☆★
 

最終日は雨の中、ショットコントロールに苦しんだが、最後は勝負強さを発揮した室田淳(広島CC八本松コース)
最終日は雨の中、ショットコントロールに苦しんだが、最後は勝負強さを発揮した室田淳(広島CC八本松コース)

 セカンドショットがグリーン左エッジに止まりました。ピンへは約15メートル。逆目の芝の中にボールががあったため、室田はちょっとためらいましたが、SWのチップショットは、ボールが右約30度に飛び出して驚かせました。痛恨のシャンクです。グリーン右向こう側に転がる球をぼう然と見つめる室田。再びグリーン脇のラフです。ピンへは約10メートル。ダブルボギーなら芹澤信雄とのプレーオフです。ここで冷静さを取り戻したのはさすが56歳のベテランです。同じクラブで第4打は丁寧にチップ。1.2メートルはショートしましたが「あれはもう何も考えなかった。打てば入るパットだと信じて打った」(室田)。ボールは真ん中からカップに沈みました。ボギーの「5」。芹澤との1打差が残りました。
 両手に持っていたパットを放り出すように手放し、両手で頭を抱える室田。終日降っていた雨でびしょぬれになったキャップとレインウエアーが光ってみえました。「勝った瞬間? 恥ずかしかったのと、うれしさ2割、ホッとした気持が8割かな」ー。
 
 2打リードして優勝を目前にしたプロが、最終ホールのグリーンエッジまできてシャンクを出すなんて、あまり見たこともありません。芹澤じゃあないですが、ホントに“鳥肌が立つ”出来事です。室田によれば「逆目だったので、上げようかとも思ったが、距離もないので普通にポンと打った。手元が前に出てシャンクになった。あれは自分はよくやるんだよ。“あっ、またやった!。仕方ないな”と動揺はしなかった。次も上りだったし、ポンといけばいいと思ったから・・」。
 
☆★「シャンク」=原因はいくかあるが、手元が先行し過ぎてフェースが開き、フェースでなくシャフトのネック部分などにボールが当たるミス等。ボールは目標より右方向に飛び出す★☆
 

シニア2年目の“若さ”の芹澤信雄は、最後まで室田淳に食い下がったが1打差でプレーオフならず力尽きた(広島CC八本松コース)
シニア2年目の“若さ”の芹澤信雄は、最後まで室田淳に食い下がったが1打差でプレーオフならず力尽きた(広島CC八本松コース)

 一度シャンクが出ると、続けて出るともいわれる怖い“病気”ですが、ここで冷静に次のチップを真っ直ぐ打てたのが、勝利を逃がさない要因でした。それにしても、初日から首位を走っていた室田は、56歳にして緊張の連続でした。安定したゴルフと勝負強さでシニア賞金王には2度輝いている(06年、07年)のです。が、ショットが曲がって調子はあまりよくなく、3日目終了時のインタビューでは「もうオレの目はないよ」と話し、夜はアイアンクラブを1本、ホテルに持ち帰って素振り。就寝時は枕元にこのクラブを置いて寝たそうです。このあたりにも室田の日本シニアオープンにかける執念がうかがえました。
 
 日体大を卒業してからは練習場に勤めるなどしてアマチュアとしての戦績はなく、82年、5度目の挑戦で27歳でプロテストに合格。初優勝はプロ入り10年目の遅咲きでした。
「だから自分はアマの試合には出たこともないし、JGA(日本ゴルフ協会)の試合に勝ったのは初めて。やっと(JGAに)恩返しができた気持」という。一時はシード権を失いながらもいまだにレギュラーツアーと掛け持ちしている数少ないプレーヤー。昨10年にはレギュラーでのシード権を失い、今年は「生涯獲得賞金ランク25位以内の選手」に与えられる特別シードでレギュラーツアーに挑戦しています。まさに背水の陣なのですが、レギュラーでは現在賞金ランキング87位と苦戦。残り4試合のレギュラーのうち、室田が出場できそうなのは2試合(三井住友VISA太平洋とカシオワールド)。約1300万円にはしないと、賞金ランク70位のシードには入れません。苦しい終盤戦です。 
 

NHKの優勝インタビューに答える室田淳(広島CC八本松18番グリーンサイド)
NHKの優勝インタビューに答える室田淳(広島CC八本松18番グリーンサイド)

 レギュラー、シニア両方で今季は成績が芳しくなかった室田には、大きなこの1勝でした。今年は5月、全米プロシニアで優勝争いの末、3位に入る健闘で健在ぶりもみせましたが、シニア世代はレギュラー時代と違って1年1年が勝負です。中嶋常幸から「天敵」「鬼」と煙たがられた室田も、持病の腰痛やひじ痛とも戦いながら、年々、衰えもかくせません。
 今週11月3日からはシニアツアーの最終戦「富士フィルムシニア」(千葉・ザ・カントリークラブ・ジャパン)で、金鍾徳との最後の勝負をかけることになる室田ですが、ご本人は「シニアには出るけど、今週は気楽にやります。次の週(レギュラーの三井住友太平洋)の練習です」といっています。やはりレギュラーツアーのシード権の確保が第一のようです。
 
 1戦1戦身を削る戦いを続けているハスラーたちにも、さまざまな思惑があるのです。念願の日本シニアOPを取った室田ですが、今シーズンはどんな幕引きとなるのでしょうか?