サンデーバックナイン、2OBで勝ったアラフォー・藤田寛之! 石川遼を抜いて世界ランク日本人最上位(64位)

今季6戦中、早くも2勝を挙げ賞金ランクトップに躍り出た42歳・藤田寛之(ダイヤモンド・カップ=千葉、ザ・カントリークラブ・ジャパン)
今季6戦中、早くも2勝を挙げ賞金ランクトップに躍り出た42歳・藤田寛之(ダイヤモンド・カップ=千葉、ザ・カントリークラブ・ジャパン)

 “アラフォーの星”藤田寛之(42)がまたやりました。開幕第2戦、4月のつるやオープンに続いて5月最終週の第6戦、ダイヤモンドカップ(千葉、ザ・カントリークラブ・ジャパン)でも断然の強さをみせ、終盤2OBを出しながら14アンダーで勝利しました。6試合で2勝した藤田は、28日発表された世界ランキングで石川遼を抜き64位とランクアップ、日本人トップの位置に上がってきました。国内賞金ランクでも首位に浮上。週はじめに行われた全米オープン予選通過に続き、全英オープンの切符もほぼ手中。通算13勝のうち、40歳を過ぎてから7勝を挙げているツワモノは、いまや“日本の星”になりそうな勢いです。

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 首位を走り続けた藤田が15番ではさすがに顔色をなくしました。残り135ヤードのアプローチ。9番アイアンのショットが、何と右45度の方向へすっ飛び、OBゾーンを越えてしまったのです。この日の藤田は、11番でもドライバーを右に曲げてOB。何とインに入って2つ目のOBが飛び出したのです。最終日、バックナインに入って2つもダブルボギーをたたいて勝った人は、そういません。そのときの心境をこう話しています。

サンデーバックナインで2OBを出しながら3打差でVの藤田寛之。安定度の高いゴルフは早くも今季2勝目。全米OPが見もの(ダイヤモンド・カップ=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)
サンデーバックナインで2OBを出しながら3打差でVの藤田寛之。安定度の高いゴルフは早くも今季2勝目。全米OPが見もの(ダイヤモンド・カップ=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)

 「一瞬、頭が真っ白になった。逆転されるかも・・。左がいやだったので、ピンの右サイドを狙っていたのですが、クラブが大き過ぎるんじゃないかと思って、開いてしまった。左サイドをいやがって、恐がった。ここ最近は(シャンクは)減っていたのに・・」

 追撃してくるパワーがあれば、こんなミスを犯した藤田は大逆転を食ったでしょう。しかし、ラッキーなことに、追いかけるタイ出身のアフィバーンラト(22)が、14番から3連続ボギーをたたいてくれる大ブレーキです。17番もボギーとした藤田は、ようやく最終18番(パー5)で第3打を30センチにつけるバーディーで締めくくり、3打差をつけての楽勝になったのです。2010年の日本ツアー選手権で、最終日3つのダブルボギーをたたいて優勝した宮本勝昌の例がありますが、珍しい藤田の“ごっつあん優勝”でした。

昨年は世界4大メジャーに出場したが、4つとも予選落ちの苦汁を飲んだ。今年はそれを良薬とするか、42歳・藤田寛之。
昨年は世界4大メジャーに出場したが、4つとも予選落ちの苦汁を飲んだ。今年はそれを良薬とするか、42歳・藤田寛之。

 石川遼が米ツアー転戦で今週から不在でした。池田勇太が依然として復調の兆しがみえず、今週も片山晋呉とともに4アンダー、17位タイに沈んだままでした。前週、優勝争いをした若者・藤本佳則も初日につまずき、後半追い上げても6位どまりでした。今年の男子ツアーはまだ6試合を終えたところですが、ホントに強烈なヒーローがいません。3人の外国人にやられましたが、44歳の谷口徹(日本プロ優勝)とともに“アラフォー”が稼げるいい?市場です。今季2勝目を挙げたのはもちろん藤田が初めてですが、この藤田、週はじめの月曜日には36ホール競技の全米オープン日本地区最終予選にトライ、37ホール(プレーオフ1ホール)を戦って本戦出場権をゲットしたばかり。2日置いてまた72ホールのダイヤモンドカップに出て優勝ですから、大変な42歳です。

 「(試合を)やってる最中は疲れも感じませんね。結果も出てるから・・。結果が出てるときは動けるんです。動かされてるっていうか・・。終わったらヘロヘロですよ」と、藤田はいっていますが、同じ40歳台の谷口徹も全米オープン予選を通過、ダイヤモンドでは13位タイに入る健闘でした。藤田の健康管理は太田敦トレーナー(35)にまかせっきりだそうですが、疲れを知らぬ不死鳥・寛之です。

今年のダイヤモンド・カップは石川遼も不在で最終日もちょっぴり寂しい2527人のギャラリー。来季は茨城・大洗GCの予定。(千葉 ザ・カントリークラブ・ジャパン9番ティー)
今年のダイヤモンド・カップは石川遼も不在で最終日もちょっぴり寂しい2527人のギャラリー。来季は茨城・大洗GCの予定。(千葉 ザ・カントリークラブ・ジャパン9番ティー)

 しかし、プロはいくらつらくとも、試合に出てお金を稼いでナンボ、の世界です。藤田は準メジャーといわれるダイヤモンド・カップを制して、2400万円のビッグマネーを手中にしました。確かに疲れも吹っ飛ぶでしょう! 今季はこれで2勝。他にトップテンも2度ありますから獲得賞金は5,211万9,857円となってトップに浮上しました。 
いまの日本ツアーはアラフォーの稼ぎ場です。
 藤田は40歳を過ぎてからこれで13勝中7勝目。30代までの優勝回数を上回りました。1973年の男子ツアー施行後では、40歳からの勝利は尾崎将司の94勝中63勝がダントツですが、21勝の杉原輝雄、18勝の青木功、10勝の尾崎直道、9勝の金井清一に続き、藤田は6位に入る頑張りです。若い勢いのあるパワーも強いですが、体調さえ維持していれば、ベテランになっての経験と、豊富な技で勝てるのがゴルフです。藤田も年齢を重ねるごとに成績が向上。40歳になった09年に自身初の年間2勝を挙げるなど、年々安定ゴルフに磨きがかかってきました。

 藤田は昨年は世界ランキング48位の資格でマスターズに初出場。惜しくも予選落ちでしたが今年も今回の優勝で、76位だった世界ランキングが64位にランクアップしました。不振の続く石川遼がジリジリと順位を下げ、今週も59位から65位と順位を落としていますから、藤田が“日本の代表”としての顔になってきました。昨年の初体験でマスターズの感激も忘れられないでしょう。国内での初の賞金王も夢ではありませんが、マスターズへの再度の挑戦も頭をもたげているでしょう。国内では2週後のミズノオープン終了時での賞金上位2人には全英オープンの切符も与えられます。藤田は最有力なところへ上がってきました。まずは、6月14日から始まる世界2つ目のメジャー、全米オープンの大舞台(サンフランシスコ・ザ・オリンピッククラブ)での小兵・藤田の暴れっぷりを拝見しましょう。