エージシュートのジャンボ尾崎に肩を抱かれた松山英樹! プロ転向2試合目の初優勝は・・

プロ転向2試合目で劇的な逆転優勝を果たした松山英樹(つるやオープン・兵庫山の原)=提供:日本ゴルフツアー機構
プロ転向2試合目で劇的な逆転優勝を果たした松山英樹(つるやオープン・兵庫山の原)=提供:日本ゴルフツアー機構

 「ナイスプレーだったな!」ー日本ツアー最多、94勝のジャンボ尾崎から、表彰式で肩を抱かれ称賛の言葉をかけられた男・・東北福祉大4年の松山英樹・21歳。プロ転向2戦目、つるやオープンは、終盤4ホールで4連続バーディーを奪う離れ業を演じた松山が、大激戦の末、デービッド・オー(米)に競り勝ち、通算18アンダーで劇的な逆転優勝。アマチュア時代に制した三井住友VISA太平洋マスターズ(11年)以来の通算2勝目ですが、プロ転向後2戦目での優勝は、1999年に日本ゴルフツアー機構が発足して以降で最速。大会初日には66歳のジャンボ尾崎が「62」で回ってレギュラーツアー初のエージシュートを達成。話題をまきましたが、石川遼が米ツアーで不在の中、日本ツアーをけん引する“松山時代”の到来を思わせる快挙でした。

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 “サンデー・バックナイン”ー優勝を前にしたものにとっては緊張に震える残り9ホール。そして勝負を決する正念場でもあります。
激しい争いの中、15番からの4ホールを4連続バーディーで決めた英樹の勝負強さは、何といえばいいのでしょう。同組のオーに英樹は前半を終えて2打差をつけられていました。ショットは乱れ、パットも「ラインが読めず苦しかった」という中で、ここまで優勝争いに加われる英樹は大したものですが、逆転優勝まではムリと思えるゴルフでした。その流れが変わったのは16番(パー3)で長いバーディーパットが入ってからです。15番(パー5)でバンカーから寄せてバーディーとしたあと、「16番は2日目も下からバーディーをとれたので、あそこだけはラインを読めた。結構いいイメージで打てて入ってくれたので、自信がわいてきた」(英樹)という16番。8メートルのパットを先に決めてガッツポーズ。すぐに追いついてきたオーが、17番(パー5)では先にバーディー確実なところに寄せます。しかし英樹はカラーからの3メートルを負けじと沈める強さでした。

 二人同じ17アンダーで迎えた最終18番(パー4)。「キャディー(進藤大典さん、32歳)に怒られた」という持ちかけていたドライバーを置き、英樹はユーティリティの2番でフェアウェイをキープ。残り175ヤードを6Iでピン右下2メートル弱につけるチャンスを作りました。先に打った7メートルのバーディーパットを外したオー。入れれば勝ちの2メートル弱を真ん中から決めた英樹は、右こぶしを1度2度と力強く振り下ろしました。

 粘りに粘ってくるオーとの一騎打ち。「最後、外したらどうしよう、プレーオフだな・・とか、いろいろ自分の中で駆け巡ってました。真っ直ぐじゃなくちょっと切れるラインだったので逆によかったですね。あの距離が微妙だったので、余計ドキドキしちゃって・・」とはいうものの、少しもひるまずカップ真ん中からウイニングパットを決めた度胸は、英樹ならではのものでしょう。

初日、66歳で「62」のエージシュートを出したジャンボ尾崎(左)から、肩を抱くように祝福されるプロ初Vの松山英樹(右)=兵庫山の原GC山の原コース(提供:日本ゴルフツアー機構)
初日、66歳で「62」のエージシュートを出したジャンボ尾崎(左)から、肩を抱くように祝福されるプロ初Vの松山英樹(右)=兵庫山の原GC山の原コース(提供:日本ゴルフツアー機構)

 エージシュートのジャンボはいいました。「ナイス優勝だった。これがプロのゲームなんだ。見てる人にアピールした。遼がいないんだし、彼が引っ張ってくれないと日本ツアーは面白くない。期待された通り順当に勝った。松山は強いよ。オレが弱くなってきてからだけどね。それだけが残念・・」と、エールを送りました。日本の男子ツアーが低調な時期に入っているだけに、若きヒーローの出現はうれしかったのでしょう。

 「62」のエージシュートで初日飛び出したジャンボは、持病の腰痛に日ごとに苦しめられて足をひきずるなど、最終日も5つスコアを落として51位(通算2アンダー)。4日間をアンダーパーで終えるのは2009年11月以来3年半ぶり。昨季は22試合に出場したが、1試合も予選を通過できずプロ43年目で初めて1銭も稼げませんでした。座骨神経痛の痛みに耐え「ひそかにベッドの中で泣いてるんだよ。それをはね返さないと現役続行とは言えないだろう」と歯を食いしばる昨今でした。シニアツアーは見向きもせずレギュラーツアーにこだわってきたジャンボは、最終18番では万来の拍手に迎えられました。「うれしかったね。ここにいてよかった。いい1週間だった。たくさん応援してもらって、オレも毎週話題を提供するからさ。もうちょっといいゴルフをできれば、いろんな楽しみも増えてくる」と、レギュラーツアーにこだわったゴルフ人生に納得するようにつぶやきました。
 今季は米国のゴルフメーカー、テーラーメイド・アダムス社と用具契約。特に「ハイブリッド」と呼んでいるユーティリティクラブは「打ちやすくて、楽に飛ばせる」と、絶賛。さらにアイアンも「180ヤードに落ちていたオレの5番アイアンの飛距離を、若いころの200ヤードに戻してくれた」と、全幅の信頼をおいて愛用しています。「まだシャフトの硬さとかの調整が必要」とはいっていますが、11年10月のブリヂストン以来の4日間完走には得るものがあったようです。
今季のジャンボはまた何かをやってくれそうです。

 ★松山英樹の優勝コメント

「こんなに早く勝てるとは思ってなかったのですごく嬉しいですね。バーディー合戦でしたが、楽しくはなかったです。先にパーをとっちゃうと負け、みたいな感じだったんで・・。(オーと並んできた最終18番は)粘り強くパットを入れてくるオー選手だったですけど、最後はセカンドで先にプレッシャーをかけられたのがよかったかなと思います。ジャンボさんからエールをもらってすごく嬉しいですけど、まだこれだけではダメだと思うんで、またあしたからしっかりときょうのことを忘れずに調整して、調子に乗らないように頑張りたいです。これだけショットとアプローチがうまくいかないで勝てたのは自分の中ですごく自信になります。(次の目標は?)ないですね。1戦1戦、1打、1打を一生懸命にやっていけば、自然と結果もつながってくるのかなと思ったりしています」

 あくまでも足を地につけたコメントを出すのもしっかりもののルーキーらしい。コースを離れれば、東北福祉大に通う大学4年生。
プロになっても大学の寮生活を続ける英樹に、この“初心”がある限り、ゴルフの上達も末恐ろしいものがあります。勝負の世界はシビアですが、それだけに1年目から賞金王を争う英樹がいても、不思議ではありません。5年早くプロに転向した同い年の石川遼は、すでに6億円超の賞金を稼いで米ツアーに挑戦しています。ジャンボから肩を抱かれ、後継者としてのバトンを渡された!?松山英樹のこれからに注目が集まります。