石川遼より5年遅れたプロ転向。デビュー戦10位の松山英樹。遼をどこまで追い詰められるか?!

真っ赤なセーターがよく似合う、最終日ベストスコアの66で40位から10位でフィニッシュしたプロデビューの松山英樹
真っ赤なセーターがよく似合う、最終日ベストスコアの66で40位から10位でフィニッシュしたプロデビューの松山英樹

 話題の松山英樹(21)がついにプロゴルファーとしてお目見えしました。国内開幕戦の東建ホームメイト杯(三重・東建多度CC名古屋)のデビュー戦は、苦戦しながら最終日にベストスコアの66を出して10位タイ。さすが超大物の片りんを見せでプロ第1戦を終えました。優勝はプロ20年目の塚田好宣43歳がツアー史上4番目の初優勝年長者で初優勝を飾りました。
 この春、東北福祉大4年生になった松山は、4月2日、退学せずあと一年在学のまま“学生プロ”で卒業を目指すプロ転向を宣言しました。5年早くプロに転向した同い年のライバル石川遼は、今季米ツアーに去って不在です。英樹が低迷する国内の男子ツアーの救世主となれるかどうか、注目が集まります。高いポテンシャルを秘め1年目から賞金王を争う可能性を秘めた怪物ルーキーの誕生です。

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 フェアウェイの両側を大勢のギャラリーが取り囲んだ出だしの10番。英樹はプロ第1打を左に大きく曲げました。茂みの中に沈んだボールを何とか出し、パーをセーブするきわどいスタート。12番では左側のホールに打ち込み、14番では右の崖下に曲げてともにボギー。「緊張していないつもりだったけど、していたのかな」と、振り返るほどボールを曲げましたが、それで沈没するような男ではありません。16番のパー3では80センチにつけ、続く17番(パー5)では第2打をグリーンそばまで運んで、楽々連続バーディーで立て直しました。ピンチでは難しいパットを次々と決め、荒れたショットをパットと小技でカバーして6バーディー、2ボギー。首位と1打差4アンダー(4位タイ)のプロ初日でした。

いよいよプロデビューした松山英樹。1年目から賞金王を争う可能性を秘めた怪物ルーキーの誕生です。
いよいよプロデビューした松山英樹。1年目から賞金王を争う可能性を秘めた怪物ルーキーの誕生です。

 強風の舞った2日目には17番で池ポチャするなど上がり3ホールで2ボギー。ノーバーディーで75とスコアを落とします。3日目も悪い流れを断ち切れず、12番(パー5)ではドライバーを右に曲げてOB。3Wでの打ち直しも右OB。「取り返しのつかないことをした」と悔やんだOB2連発のこのホール「8」。18番もダブルボギーにするなど74をたたいてトップと11打差、40位までの急降下でした。

 しかし、したたかな心臓の強さが英樹の身上です。「最後、トップ10を目指してやります」と目標を切り替えるや、まさに有言実行の最終日。10番からの“裏街道”、しかもボギーでスタートしながら、前日2OBでトリプルをたたいた12番、逆風の中3メートルにつけてバーディーパットを沈めるや、13番(パー3)は10メートルの長いパットを決め、14番もとって3連続バーディーで火がつきました。16番からは再びのバーディーラッシュ。18番はフェアウェイ右のバンカーから、2打目を1メートル弱につけて2度目の3連続バーディー。前半(イン)31で折り返す猛攻でした。アウトに回って3番でボギーにしましたが最後9番では3メートルのバーディーチャンスをしっかりものにして66。5つスコアを縮めて通算2アンダー。40位から10位タイに戻す底知れぬ可能性をみせた第1戦でした。

昨季ツアー、ドライビングディスタンス293.13をほこる松山英樹のドライバーショット
昨季ツアー、ドライビングディスタンス293.13をほこる松山英樹のドライバーショット

 すでに2011年11月の三井住友VISA太平洋マスターズでは史上3人目のアマチュアのツアー優勝を果たし、同年4月のマスターズではベストアマ(27位)に輝くなど大きな実績を携えてのプロ転向です。プロ第1戦の賞金は約315万円でしたが、アマチュア時代、賞金はもらえませんが換算すれば年間約1億円を稼いだツアー実績もあります。同じ21歳のライバル、石川遼は5年早くプロに転向、すでに6億円を超える賞金を手にし、今季は米ツアーにまで進出しています。5年遅れでプロになった英樹が、今後どこまで遼を追いかけ追い越すか。これもみどころの一つです。
 
松山英樹のコメント

 「(最終日は)まず、オーバーは打たないようにと思ったのに初っ端からボギーでどうしようと・・。でもすぐバーディーがきてうまく流れをつかむことができた。きのうトリプル打ったホール(12番)でバーディーがとれたのは、うまく気持ちを切り替える流れになった。風があったので、フルショットだとどこえ行くかわからないのでパンチショットしかないと思って多用した。スコア的には満足ですけど、ショットの内容がよろしくないですから・・。ティーショットをもうちょっと練習していきたいです。デビュー戦の10位?あんまりデビュー戦とかは考えてないので・・。朝、トップ10目指して頑張ろうと思ったので、まあいい感じでは終われたと思います」

開幕戦優勝は43歳、プロ20年目のうれしい初優勝・塚田好宣
開幕戦優勝は43歳、プロ20年目のうれしい初優勝・塚田好宣

 最終日は7888人のギャラリーが集まりました。観客動員を気にしていた英樹は「最終日は楽しかったです。ああいうたくさんの人がいる中でプレーするのは、変なショットは恥ずかしいけど、楽しいです。これからはもっとプロみたいなショットを打ちたいです」と、笑顔も。強風が吹き荒れたこの大会、風に逆らって打つパンチショットも数多く見せ、飛ばすだけでなくなかなかのテクニックも持っているのは非凡です。

 昨季はツアー出場6戦で2度の2位を含むトップ10入りは4度。平均ストロークは69・85で、昨年賞金王で同部門1位の藤田寛之(70・03)を上回る1位相当の数字を残しています。ドライビングディスタンス293.13は8位相当の数字。パーオン率(70.14)も3位相当。やや悪いのはフェアウェイキープ率(48.21)で91位相当=いずれも参考記録=となっていますが、この記録をみても、1年目から賞金王を争える“資格”は十分に備えているといっていいでしょう。

 現在英樹の世界ランキングは163位。マスターズ出場権はじめ、世界のメジャークラスの試合に招かれる基準になるのが「世界ランク50位以内」です。プロになった英樹の大きな目標のひとつがこれです。米ツアーやメジャーでの成績は、世界ランクへ高い評価を受けます。日本国内での優勝はそれなりにポイントが稼げます。アマチュアでなくなった松山英樹は、もうひと試合なりともおろそかにはできません。開幕戦を終えたあとは今週のつるやオープンから中日クラウンズ、日本プロ日清杯・・と息つくひまもなく連戦が続きます。今季は出場可能な国内ツアーは全戦出場の意向ですし、すでに今季の出場を決めているメジャー、全英オープンも当然大きなターゲットです。全米オープンの国内最終予選(5月)にもトライするなど、早くも海外メジャーへの夢は膨らんでいます。

 “松山プロ!!”との声にも「気にしません。優勝したい気持ちはアマでもプロでも変わらない。アマでもプロでもない、自分のゴルフをいままで通り1打1打を大切にしながらやっていくだけ」と、英樹の目は大きく将来を見据えています。