大洗を沸かせた58歳中嶋常幸vs21歳松山英樹。井戸木効果かシニアの頑張り!

ダイヤモンドカップ、最終日最終組で21歳松山英樹と渡り合った58歳中嶋常幸(茨城・大洗GC)
ダイヤモンドカップ、最終日最終組で21歳松山英樹と渡り合った58歳中嶋常幸(茨城・大洗GC)

 66歳のジャンボ尾崎が「62」で回った(つるやOP)と思ったら、51歳の井戸木鴻樹が全米プロシニアで優勝する“ハプニング”。負けじとゴルフ界を揺り動かしたのは、やはりシニアの58歳・中嶋常幸でした。名匠・井上誠一氏の手による日本屈指の難コース大洗GCを舞台(ダイヤモンドカップ)
に、飛ぶ鳥落とす勢いの松山英樹(21)と最終日最終組で渡り合ったのですから「中嶋常幸」という男、並みのゴルファーではありません。37歳差対決!最後、優勝こそ若さの松山英樹には勝てませんでしたが、3日目に出した6アンダー「66」は、4日間を通しての大会ベストスコア(賞金100万円)。今週は、今季初めてシニアに顔を出し、次週と2週続けてシニアツアーを戦うというゴルフの鬼・トミー中嶋に、ゴルフの神様は何を用意しているのでしょうか?

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 大洗GCは中嶋の大好きなコースのひとつ。以前からオフだけでなく、シーズン中も時間をつくっては練習に訪れるコースです。過去に日本オープンを含めトーナメントも数多くありましたが、練習ラウンドも数えればもう何十回と回っていて、コースの隅々まで知り尽くしています。

「オレは大洗の主」というほど中嶋常幸は大洗GCを愛し、練習ラウンドにも訪れ、コースの隅々まで知っている。(ダイヤモンドカップ=大洗GC)
「オレは大洗の主」というほど中嶋常幸は大洗GCを愛し、練習ラウンドにも訪れ、コースの隅々まで知っている。(ダイヤモンドカップ=大洗GC)

「オレは大洗の主」(中嶋)とまでいっているのですが、最終日、8番、214ヤードの長いパー3で2メートルにピタリとつけ、中嶋は前半3つめのバーディー。10アンダーと伸ばしました。対する松山がボギーをたたき、中嶋は単独首位に立ちました。「勝てそうな雰囲気があった。トーナメントリーダーだもんね。こういう雰囲気を持てるのはいいね。流れがきたかなと思った。このトシになると、“大丈夫!頑張れ!”という声援ばかりだったけどね」

 その盛り上がりも8番まで。次の9番(パー4)では、行ってはいけない左からせり出している林にぶち込んで2打目はフェアウェイに出すだけ。第3打もグリーン右に外し、絶妙の寄せで1メートル弱につけ、「ボギーで収めたかった」(中嶋)というボギーパットをミスしてダブルボギーの洗礼。井上誠一氏が得意とするS字を描くようなホールレイアウト。この難ホールは百も承知の中嶋が、その罠(ワナ)にはまったのです。痛恨のダブルボギーで58歳トミーの我慢の糸はプツンときれました。インコースはバーディーが取れなくなり「14番あたりからはエンジンの壊れた船。ただ流されるばかり。もういいや・・」(中嶋)。難しい上がり2ホールもボギーとして通算5アンダーまで落とし、優勝した松山とは4打差の6位に終わりました。

 一緒に回った松山英樹について。

ルーキーイヤーの松山英樹は開幕5戦して早くも2勝。賞金レースもトップを独走気配(ダイヤモンドカップ=大洗GC)
ルーキーイヤーの松山英樹は開幕5戦して早くも2勝。賞金レースもトップを独走気配(ダイヤモンドカップ=大洗GC)

「彼のプレーを見て思うのは、“短気は損気”ではなくて全く逆。根気があって短気はない。いい根気と粘り強さがある。ムチャをしない。いまできることをしっかりやっている。技術的にはフェース面の使い方がうまい。回っていて嫌な気持ちはしない選手、フェアプレーというか、いい気持ちだった」と中嶋の英樹評。今季ルーキーイヤーで5戦2勝。トップテンを一度も外していない戦いぶりで、早くも獲得賞金7394万6000円と、2位を3500万円近く引き離して独走態勢の英樹です。今季賞金王をとって来季には早くも米ツアーに挑戦しそうな勢いですが、松山が海外のメジャーにも勝てるか?と聞かれた中嶋の答えは
「井戸木(鴻樹)が勝ったんだぞ。それは愚問だろ。凄いことだけど・・」。

 NHKの夜7時のニュースでも取り上げられた中嶋常幸vs松山英樹の最終組対決。

両サイドから黒松林が迫る大洗では、飛ばし屋の松山英樹だがドライバーを捨てFWウッドやユーティリティクラブで攻めるコースマネジメントが光っていた(大洗GC1番ティーショット)
両サイドから黒松林が迫る大洗では、飛ばし屋の松山英樹だがドライバーを捨てFWウッドやユーティリティクラブで攻めるコースマネジメントが光っていた(大洗GC1番ティーショット)

「(勝てなかったのは)悔しいよ。でもレギュラーツアーで最終日、最終組で回れる。まだやれる。オレはレギュラーツアーの選手なんだ。楽しみをツアーにもっていける。そう認識したよ。シニアもちゃんとやらないと、試合がなくなったんじゃ困るからシニアにも行くけど、レギュラーでもまだ頑張る。自分の21歳のころは昔過ぎて覚えていない。遼や英樹を見ていると若い選手は魅力がある。こういう選手が出てくると嬉しくなる。だからこそオレ達先輩が頑張らないとね」(中嶋)

 グリーンを離れれば、孫4人のおじいちゃん。2010年1月、トレーニング先の青森の宿舎前でクルマにぶつけられた右膝の古傷。気温が低かったり、疲労が重なると痛みが出るため月に2度は膝にヒアルロン酸注射を欠かさず打って治療を続けています。今季も試合を選びながら両ツアーに出る予定ですが、これまでレギュラーツアーは中日クラウンズが51位タイ。日本プロゴルフ日清杯が予選落ち。そして3試合目のダイヤモンド杯が6位で、賞金ランクは51位に上がってきました。今週はKYORAKUモア サプライズカップ(7~9日、三重・涼仙GC)、次週はスターツシニア(14~16日、茨城・スターツ笠間GC)のシニア2試合で今季初登場します。まだまだ衰えを知らないトミー中嶋の燃えるハートに注目です。