″ニクラウスの庭”準メジャーのメモリアルで米ツアー初優勝の夢を果たした松山英樹! あとは英語力?!

劇的なPO勝利で米ツアー初V。18番グリーンサイドで喜びのインタビューを受ける松山英樹(メモリアル)=NHKBS1より
劇的なPO勝利で米ツアー初V。18番グリーンサイドで喜びのインタビューを受ける松山英樹(メモリアル)=NHKBS1より

われらが英樹が、ついにルーキーイヤーにして米ツアー「ザ・メモリアル・トーナメントメント」で米ツアー初優勝の快挙です。松山英樹(22)はメモリアル最終日、2打差の3位から出て15番で単独首位に立ちましたが、17番のボギーで1打ビハインドの2位に後退。土壇場の18番でピン下1・5㍍につけるスーパーショットをみせてバーディーとし、通算8バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの69。粘りの通算13アンダーでケビン・ナ(米)と並びプレーオフに。本戦18番のティーショットのあと、ヘッドで地面を叩いた時ドライバーのシャフトを折るアクシデントで、プレーオフではドライバーが使えず、3Wを使用しながら1ホール目(18番、パー4)で3㍍強のパーパットを沈め、4オンしていたケビン・ナを降す劇的な米ツアー初優勝でした。アマ時代から米ツアー通算26試合目での夢達成。日本人男子では青木功、丸山茂樹、今田竜二に続く3人目、最年少での米ツアー制覇です。優勝賞金、111万6000㌦(約1億1350円)のビッグマネーを手にし、来年から2年間のシード権もゲット。来週のメジャー、全米オープン(6月12~15日、ノースカロライナ州パインハーストNO2)への期待もグンと高まりました。石川遼(22)は、通算1オーバー、57位。

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PO1ホール目、18番グリーン左ラフからピンへロブショットする松山英樹(ミュアフィールドビレッジ18番脇)=NHKBS1より
PO1ホール目、18番グリーン左ラフからピンへロブショットする松山英樹(ミュアフィールドビレッジ18番脇)=NHKBS1より

メモリアル・トーナメントは帝王・ジャック・ニクラウスが故郷のオハイオに造ったチャンピオンコース、ミュアーフィールドビレッジGCで自らがホストとなり、毎年全米オープン前の6月に開催されます。この難コースには多くのトッププレーヤーが集まり、準メジャーともいうべき大会。晴れの舞台に立った松山は、前週のクラウンプラザ招待で最終日、最終組で回る(10位)好調を引っ提げての登場でした。初日は2アンダー、70で21位の発進。2日目67で4位。3日目69で3位と順位を上げ、トップを行くバッバ・ワトソンを2打差で追う最終日でした。3日目は一度も第1打でフェアウェイを外さなかったショットの安定度は抜群。「課題はショートパット」(松山)とコメントし「目指すところはいつも一緒」と、明らかに優勝を意識した充実した心の盛り上がりを披露していました。

最終日、1番では1㍍につけるショットでバーディー発進。2番はグリーン脇のバンカーから直接カップインすする連続バーディーと最高のスタートです。3番をボギーとしますが、すぐ4番で4㍍を沈め、7番では1㍍、8番では6㍍を入れてバーディー量産の気配を感じさせました。しかし、後半にターンするとムードは一変。出入りの激しいゴルフに変わります。14番で落とし、15番でピンそばにつけるショットで6つ目のバーディーを奪うと、単独首位に躍り出ました。次の16番(パー3)ではグリーン左の池に落としてダブルボギーの洗礼。さらに17番でもラフからのアプローチを寄せきれずにボギー。この日64で通算13アンダーですでにホールアウトしていたK・ナに1打差で首位を奪われ、最終18番ではバーディーをとらなければプレーオフに進めない絶体絶命のピンチに追い込まれます。
コース最難関といわれる18番(パー4)。しかし松山は3日間連続でバーディーを奪っている相性のいいホールです。その第2打、だらだら上りの165ヤードをピン下1.5㍍にピタリとつけるスーパーショット。これも決めて4日連続のバーディーホールとしてナに並び、プレー・オフ進出を決めました。

PO1ホール目、18番右のクロスBKからセカンドを打つ松山英樹(ミュアーフィールドビレッジ18番)=NHKBS1より
PO1ホール目、18番右のクロスBKからセカンドを打つ松山英樹(ミュアーフィールドビレッジ18番)=NHKBS1より

本戦18番のティーショットを放ったあと、ドライバーシャフトが先端部分から折れるアクシデントで松山はドライバー抜きのプレーオフにのぞみます。しかし相性のいい18番は最後まで松山に味方でした。3Wでのティーショットは右のクロスバンカーにつかまりましたが、ナも左に曲げて林の奥を流れるクリークに打ち込み、1ペナを加えた3打目もグリーン右の深いラフ。またも優位に立った松山のバンカーからの2打目(5I)は、左に曲がり、グリーン左サイドで観戦中の婦人の足に当たってラフの奥まで入らず、″ラッキー〝がつきまといます。高いロブショットでピン上3㍍強に3オン。この難しい下りパットを見事に沈めるナイスパー。3㍍に4オンしていたナのホールアウトを待たずに栄冠をつかみ、右手こぶしを小さく振り下すガッツポーズをみせました。

「いやぁ、うれしいですね。今日は午前中からショットがあまりよくなくて・・。その中で、アイアンでバーディーチャンスにつけられた。パットでも足、引っ張っていたんですが、最後の18番で入ってくれた。よかったです!」

アマチュア時代から米ツアーにトライしている松山は、通算26試合目での快挙。米ツアーのライセンスをとった今季は、15試合目の晴れ舞台。ホストのジャック・ニクラウスから祝福された英樹は、英語が流ちょうにしゃべれないもどかしさで顔をゆがめながらも、大ギャラリーからの大喝采を気持ちよさそうに受けていました。

青木功、40歳。83年2月、ハワイアンオープンで逆転イーグルV。
丸山茂樹、31歳。01年7月、ミルウォーキー・オープン、プレー・オフVなど3勝。
今田竜二、31歳。08年5月、AT&Tクラシック。プレー・オフV

に続く日本勢4人目のPGAツアーチャンピオン。しかも準メジャーと位置ずけられるビッグトーナメント、メモリアルでの優勝は燦然と輝いています。マスターズチャンピオン、B・ワトソン始め、松山と同組で回った前週優勝で世界ランク1位のアダム・スコット(豪)、米国期待の20歳ジョーダン・スピース、ロリー・マキロイ(英)、フィル・ミケルソン・・らそうそうたる世界のトッププロを退けて頂点に立った松山英樹です。

全日空とスポンサー契約を済ませ、米ツアーへ出発した松山英樹(今年1月、羽田空港)
全日空とスポンサー契約を済ませ、米ツアーへ出発した松山英樹(今年1月、羽田空港)

弱冠22歳にして、一人米ツアー挑戦に旅立った英樹には、早くも数々の試練が襲い掛かっています。今年3月の世界選手権シリーズ、キャデラック選手権では、2日目13番グリーンで2㍍のパーパットを外したときパターヘッドでグリーンを叩いて傷つけ、気づかずにそのまま立ち去ったことから、後続のイアン・ポールター(英)に批判されました。ツィッターでは「こんなひどい行為をした松山と同組だ」とこっぴどくたたかれ、翌朝コースで同組になったポールターや前日の後続選手に謝りにいきました。そんなハプニングにあいながらも、3日日は1アンダーで回り、25位から21位に順位を上げました。
スロープレーは再三、注意され、昨年7月の全英オープンではスロープレーをとられながら、逆境をはね返して6位に入るなど、技術もさることながら、その精神力の強さは人並み外れたものを持っています。ミケルソンやウッズと初めて同組で回った昨年も動じませんでしたし、この

日のミュアーフィールドビレッジに集まった大ギャラリーの中で見事に「自分のゴルフ」をやり通せたのは、青木功は「あの鈍感さがいい」と評していますが、まさに″世界基準〝のゴルフを身につけた英樹といえるでしょう。昨年来、痛めている左手親指つけ根の炎症には悩まされ続けてきました。まだテーピングは外せませんが、「もうほとんど気にならない」(松山)と話しています。

この1勝は、日が経つにつれてその重みをズシリと感じることでしょう。日本ではあり得ない1億円超の優勝賞金も凄いですが、そして得た自信は、メンタル的にも強い松山をまた一段と強くするに違いありません。来週12日からは全米オープンのメジャーが待っています。また何かのハプニングを起こしてくれそうな英樹。それにつけても、英語力を早く身につけてほしいものです。「うれしいです」「頑張ります」だけのコメントも、世界の一流にはふさわしくありません。さらに言えば、多少なりとも受け答えできて自分の気持ちを表現できる英語力がほしい。この日も祝福に近づいたニクラウスが、何も話せない松山の前で話のやり場に戸惑っているシーンが大写しになりました。
「ゴルフの技術もあるし、体格も外国選手に負けていない。あとは″〝コメント力〝だけだな 」と、いみじくもいったのは、全米プロ3位、マスターズ8位、全英オープン8位、全米オープン9位と、世界の4大メジャーのすべてにトップ10に入ったことのある中嶋常幸の言葉でした。