勝みなみの次の主役は、やはり「みなみ」だった。日本女子アマを制した16歳・蛭田みな美が目標にするのはグレグ・ノーマン!

10代旋風を象徴するように、今年の日本女子アマ選手権を制した16歳・蛭田みな美(茨城・大洗GC)
10代旋風を象徴するように、今年の日本女子アマ選手権を制した16歳・蛭田みな美(茨城・大洗GC)

今年の女子アマゴルフNo1に輝いたのは、16歳の蛭田(ひるた)みな美(福島・学法石川高2年)でした。日本女子アマチュア選手権は、6月25日(雨で1日順延)から5日間、茨城・大洗ゴルフ倶楽部(パー72)で行われ、福島県出身の蛭田が36ホールマッチプレーで争われた決勝で、JGAナショナルチーム候補選手の18歳・佐藤耀穂(あきほ)=埼玉・栄高3年=を終盤の逆転で破り、3&2で初優勝しました。2010年大会で優勝している同じ福島出身の酒井美紀(23)が同じ日、プロ5年目でツアー初優勝(アース・モンダミン・カップ)し、福島県勢のダブル優勝で盛り上がりました。15歳で女子ツアーを勝った勝みなみ(鹿児島高1年)も出場しましたが、準々決勝で敗れベスト8どまりでした。

☆     ★     ☆

今季の女子ツアーを賑わしているのは10代のアマチュアたちです。4月のKKT杯バンテリンレディスで女子ツアー史上最年少、15歳で勝った勝みなみを頂点に、森田遥、堀琴音、柏原明日架(女子アマ不出場)らのヤング勢です。まだまだいます。アマ頂点に立った蛭田や準優勝の佐藤。3位決定戦を戦った橋本千里(愛知・ルネサンス豊田高)と三浦桃香(宮崎・日章学園高)は高1対決。圧勝して3位に入った橋本は、全米女子オープンで決勝ラウンド進出を果たし、大会前日に帰国したばかり。2日間の予選ラウンドで1位通過(メダリスト)した権藤可恋(佐賀)も18歳です。

前回優勝の森田遥(高松中央高3年)は、5月の女子ツアー、サイバーエージェント・レディスで堀琴音とともに最終日最終組で回って惜しくも優勝を逃がした2位でした。大会2連覇に期待が集まった日本女子アマでは、予選ラウンドは27位で、11人によるプレーオフで辛うじて決勝ラウンドに進出。その1回戦で敗退する不振でした。勝負は時の運。連覇はなかなか難しいですが、一人が去ればまた次の新鋭が・・と、女子ゴルフ界は人材豊富です。前夜半から降り始めた雨の中、勝ち進んだ蛭田は全国区では実績のないダークホースです。しかも決勝では22ホールを終えて3ダウン。このまま佐藤が″女王〝の座に突っ走るかと思われましたが、ここから蛭田が粘りをみせました。

「前半、球を出したい方向にパットを打てなかった。後半休憩(30分間)でパッティング練習してて考えていました。出したい方向に出すことだけを考えるようにしたら、後半入りだした。よくラウンド中に修正できたと思う」(蛭田)。

24ホール目(6番パー4)で4㍍を沈め、続く25ホール目(7番パー5)は3㍍をを決める連続バーディーで流れをつかむと、最後の9ホールに入った10番のバーディーでオールスケア。11番(29ホール目)も連続バーディーで1アップと佐藤をリード。勢いに乗った蛭田に対して佐藤はボギーを連発。蛭田は3連続でポイントを奪って一気に3アップ。2ホールを残した34ホール目(16番)、1㍍のパーパットを沈めて大逆転Vを勝ち取りました。

★優勝を逃がした佐藤のコメント

「大事な場面(28ホール目=最後の10番)でショットを右に曲げた。このコースでティーショットを曲げたら終わりです。ミスは力みからでした。でも、将来に向けていい経験ができたのかな。目標はベスト4でしたから・・」

ドライバーの平均飛距離は240ヤード。3ダウンから後半粘りの逆転劇をみせた蛭田のショット(日本女子アマ=茨城・大洗GC)
ドライバーの平均飛距離は240ヤード。3ダウンから後半粘りの逆転劇をみせた蛭田のショット(日本女子アマ=茨城・大洗GC)

大魚を仕留めた蛭田は、3歳のころから家族の影響でクラブを握り始め、いまドライバーの平均飛距離は230~240ヤード。中嶋常幸主宰のトミーアカデミー に1年前に入門。初日、観戦にきた中嶋常幸から「パットで肩がラインの方向を向いていないと指摘されました。初日はノーバーディーだったんですけど、蛭田のノーバーディーはないな、つらいなぁ・・って言われました」(蛭田)。
目標とする人は、往年の名手、グレグ・ノーマン(豪)。「メジャーで2位が多かったと聞いて・・。それでも凄いなと思って。考え方とか、名言集とか・・。″勢いがいいときは怖がらずに乗っていけ〝みたいな言葉があったんです。流れに逆らわないようにと」(蛭田)。決勝戦の後半は、そのノーマンの言葉そのままの、勢いに乗せた攻めのゴルフでした。

4月にプロツアーで優勝した人気の勝みなみは準々決勝で敗れましたが、大会の″主役〝になったのはやはり「みなみ」ちゃん。勝よりは1学年上の16歳。「みな美」の名前は「夢で観音さまに告げられた」(獣医の父親・宏さん)とか。一躍、全国区のヒロインになりましたが「(これからは追いかけられる立場?)まだ、全然ショットが曲がる要素があると思うので、ドライバーをまず曲がらないようにしていきたい。体力的にもきつかった部分があったので、しっかりトレーニングをして、レベルアップしていきたい。将来は海外で活躍できるプロになりたい」と、謙虚さの中にも大きな夢を見ている福島のみな美ちゃんです。同じ日にツアー初優勝した酒井美紀は、4年前の日本女子アマチャンピオン。酒井とは父親はじめ福島出身で親交がある両家ですが、、それ以来の日本一になった16歳には、どんなゴルフ人生が開けてくるのでしょうか。これまで3試合に国内ツアーに出ていますが、今度はアマ女王として今週の日医工女子オープン(7月4~6日、富山・八尾CC)に出場します。注目しましょう。