資格のある全米、全英両女子オープンを捨てて日本ツアー一筋で・・。国内賞金女王へ、よそ見しない申ジエ(韓国)

安定したショットを放つ申ジエ。
安定したショットを放つ申ジエ。

日本の賞金女王を狙うと公言してる申ジエ(27=韓国)が、圧倒的な強さで今季2勝目を挙げました。最終日ノーボギーの67で3打差逆転の通算11アンダー。5月のサイバーエージェント・レディス以来の今季2勝目です。14年に米ツアーから日本ツアーに舞い戻ってからもう6勝目。国内通算11勝目で、並み居る韓国勢の中でもNO1の強さをみせ始めました。出場権のある全米女子オープン(7月)、過去2回優勝の全英リコー女子オープン(7~8月)ともに欠場して日本ツアーの賞金クイーン獲得に専念するという一途さも申ジエの魅力。韓国ツアーでは3年連続賞金女王で永久シード選手、米ツアーで賞金女王(09年)。世界ランキング1位(10年)・・と世界を制覇し、日本ツアーに戻ってきた申ジエへの注目度は、ますます高まります。

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コンパクトながら鋭い打球を飛ばす申ジエ。
コンパクトながら鋭い打球を飛ばす申ジエ。

世界ランク1位に登ったこともある選手の底力でした。最終日3打差3位からジワジワ追い上げ、15番で3㍍を沈めてトップの李知姫に追いつくと、17番、残り180ヤードを1.5㍍につけて5個目のバーディー。大詰で圧倒的なゴルフをみせて2位以下を突き離しました。同組には通算18勝の李と昨季の賞金女王、アン・ソンジュの韓国勢。「ミスしたら負けると思っていた。ノーボギーで回れたのが勝因」(申)と、見事にボギーなしのゴルフを守りぬきました。この大会は昨年に続き2連覇です。米ツアー時代から約3年間コンビを組んだフランス人のキャディー、フロリアン・ロドリゲスさん(25)が元の金融関係の仕事に戻るため、バッグを担ぐのは今回が最後。「最初に組んだキングスミル選手権(12年)でも優勝したし、最後の試合もどうしても勝ちたかった。本当にいろりろ助けてもらいましたから」(申)と、記念の試合を勝ち取って、18番グリーン上で固く抱擁を交わしました。

賞金ランク1位を走る″最強〝のイ・ボミ。成田美寿々の今後も、イ・ボミとの戦いに勝てるかどうかだ。
賞金ランク1位を走る最強のイ・ボミ。韓国勢の”王者”だが、今季は申ジエの追撃が見もの。

安定したショットとパット。メンタル的にもタフさを兼ね備えた申のゴルフは、ブレません。5月の1勝から早くも2勝目をあげ、記者会見では、シーズ初めから宣言していた「日本で賞金女王をとりたい」という胸中を、改めて宣言しました。09年から米ツアーに参戦していた申が、13年の米ツアー開幕戦のISPSハンダ豪州女子オープンで優勝したあと、突然「温かい人間関係を感じる日本でこれからはやっていきたい」と、一大決心を明かし、5年間戦った米ツアーカードを返上。14年から母国に近い日本ツアーにカムバックしたのです。その昨年は、いきなり4勝して国内賞金ランク4位に登場。韓国勢にまた一人強力なパワーが加わったばかりです。

そして次の目標は日本ツアーでの賞金クイーン。「世界で戦うのはもう経験してきたからいい」という申は、その言葉通り、今年の全米、全英両女子オープンも資格がありながら辞退し、日本ツアー一本にかけるという。
「日本でのプレーに集中したいんです。日本の公式戦にも勝ちたい。途中で他の試合に行くと、気が散るから・・」と、明確です。10年、米国で世界ランキングトップに立った年の12月には、視力矯正手術を受け、トレードマークだったメガネを外してイメージチェンジ。12年5月には左手首の内視鏡手術にも踏み切りました。やろうと心に決めれば、一途にその目標に突き進む強い意志の持ち主です。プロデビューした06年の韓国ツアーで、年間平均ストローク60台をマークしていますが、現在も年間ストローク60台を出すことも申のターゲットのひとつです。「いつもそれを意識し、忘れないために、私の携帯電話の番号に69を入れている」ともおっしゃるジエさんです。ニチレイが終わって申の今季の平均ストロークは71.0714でイ・ボミ(韓国)、テレサ・ルー(台湾)、上田桃子に続く4位。賞金ランキングは、5269万4000円で3位に上がってきました。賞金トップのイ・ボミの7798万66円とはまだ2000万円余の差がありますが、平均ストロークの69台が達成できれば、それは即女王獲りにもつながるでしょう。

最終日、首位で出ながら申ジエのノーボギーゴルフで逆転され、今季2勝目を逃がした李知姫。
最終日、首位で出ながら申ジエのノーボギーゴルフで逆転され、今季2勝目を逃がした李知姫。

ゴルフでの集中力は、驚くほどに鋭い申ジエですが、ファンサービスには常に心を割き、チャリティー活動にも力を入れています。気は優しくてゴルフは強いスーパーウーマン。日本人の若手選手にも優しく接して慕われている韓国選手です。「成績だけでなく、模範になるような選手にもなりたい」といい、今年からはメインスポンサー(所属)に「スリーボンドホールディングス」がつき、「私はボンドガールです」と、冗談を交えて所属先をPRする心遣いもみせるジエさんです。日本に本腰を据えて戦う2年目。ターゲットの女王獲りには、これからの夏の陣。拍車がかかりそうです。