レギュラー時代は未勝利の男が50歳からのシニアツアーで突然の開花。シニア4年目の今季も、KYORAKUシニア、スターツシニアで2試合連続で最終日最終18番で派手な逆転劇。賞金レースも早くもトップ独走の気配です。13年の開幕戦、金秀シニアで逆転の初Vで強烈なシニアデビュー。2年目は優勝こそ逃がしたものの賞金ランク9位。3年目の15年はシニア4勝をマークして賞金ランク2位と階段をかけのぼってきました。昨年暮れには一気に米シニアツアーのQTにまで手を伸ばして(出場権は得られず)、いまや日本シニア界のトッププレヤーにのし上がった崎山武志、53歳。愛媛県八幡浜市の中学を出てからゴルフに取りつかれ、92年にプロテスト合格。雌伏20数年、世にも珍しい出世物語りです。
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シニアツアー、今季4戦目のスターツシニア(茨城・笠間市、スターツ笠間GC)。名匠・井上誠一氏設計の戦略性豊かな18ホール。最終日は3打差5位から出た崎山のすばらしいバックナインで大会は盛り上がりました。前半をイーブンで折り返し、10番でバーディーを奪うと13番からバーディー連発の猛チャージ。右曲りで林の上をカットしていく難関ホール16番パー4。ピン7㍍に乗せたロングパットを、ズバリ決めて4連続バーディー。5人トップの大混戦が続いていた終盤、一人12アンダーへ抜け出す強烈パンチでした。17番はグリーン右に外しながら絶妙の寄せ(70㌢)でパーセーブ。田村尚之、汪徳昌、秋葉真一らが追ってくる最終18番(パー5)。3打目40ヤードのアプローチを1.5㍍につけ、スネークラインを読み切ってバーディーフィニッシュ。会心のガッツポーズがよく似合ったバックナインは4バーディー、ノーボギーの32。計7バーディー、1ボギーの「66」。13アンダーまで伸ばして混戦を突き破る強さをみせつけました。
5月の前戦に続くツアー2連勝。その5月のKYORAKUもマークセン、尾崎直道に1打リードされて最終18番(パー5)にきた崎山は、15㍍の超ロングパットを鮮やかに決める″逆転サヨナラ・イーグル〝で劇的な幕切れを演出したばかり。1ヵ月後のスターツでも、最終日バックナインでの4連続バーディーで単独トップを奪い、再び追ってきた田村尚之、汪徳昌を突き放す18番のバーディーフィッシュでした。
″何か〝を秘めている崎山の勝負強さ。この人がどうしてレギュラー時代に勝てなかったのか、目を疑うようなシニアでの勝ち運です。
シニア4年目でもう通算7勝目。昨年12月には米シニアツアーの最終予選会(QT)に挑戦、米国行きまで狙いましたが、これは46位で失敗(上位5人が制限なしの出場権を得る)。貴重な体験をしてきました。今年5月には全米プロシニアに室田淳、井戸木鴻樹らとともにトライしましたが、予選は通過したものの通算1オーバーの51位でまた米国の壁にぶち当たりました。
「海外に行くととんでみなく飛ぶ選手もいるし、ショットにしてもみんなアグレッシブにピンサイドを狙ってくる。自分もたとえ調子が悪くても自信をもって自分のスタイルを通せば、アメリカでもそこそこ通用するじゃないかと思いましたね。アメリカではいろんなことを勉強しました。去年のQTではショートパットが入らない原因が分かって、今年はそれを通してやれていることがパッティングの好調につながっています。パッティングがいいのでショットも自信をもって打てています。全部、パッティングからきているじゃないかと思いますね」(崎山)。
崎山のパッティングは、打つ前にフォワードプレスをしロフトを立てた状態にして打っていたのですが、昨年の米国でのQTのときに「ロフトがある程度ある方がラインが出やすい」と教わり、フォワードプレスをやめ、ロフトが見えるように構えてそのまま打つスタイルに変えたのが、好結果を呼んでいるようです。
厳しいトレーニングを積んで体幹を鍛え、体を絞り、普段はシニアでは″王者〝の室田淳らと行動を共にして「プロとしての在り方」を勉強しているようです。今年からシニア入りしたマークセン(タイ)が今大会2日目にトップに立ち「コースが簡単」といった発言にカツンときたそうです。「いつ勝ってもおかしくない選手ですが、いろんな意味でシニアツアーを甘くみるなよ、という感じです。アメリカのQTをファイナルから行くといってるようですが、彼には(ファイナルじゃなくて)予選から行ってくれといいたいですね」と、シニアに参入しこの2試合とも食い下がってきたライバルに厳しいワンパンチをかましたのも、苦労人の崎山らしい一面でした。
飛ばし屋でグリーン周りのショートゲームとパットがうまいとなると、鬼に金棒!4戦で早くも2勝した崎山の今後の大きな目標は、7月の全英シニアオープンと8月の全米シニアオープンへの挑戦。
「メジャーで結果を残したい。全英、全米で頑張りたい。日本のタイトルもいい精神状態を維持できればチャンスはあると思う。僕が勝つことで先輩たちもシャカリキになってくるでしょうから、もっともっと練習して先輩たちに負けないように頑張りたい。″あいつにはかなわない〝っていわれたいですね」
今回も中嶋常幸から「またか!」っていわれたのがうれしかったという。「そういう言葉は励みになります。まだ7勝ですけど、先輩たちにちょっと近づけたかなと思います」(崎山)
シニアでは常勝だった室田淳、中嶋常幸、尾崎直道らのビッグネームも、この″異色の若手〝にはシャッポを脱ぎかけています。日本のシニアツアーは今季、全17試合に増えています。4戦2勝の崎山の賞金は、すでに2559万5000円。2位(秋葉真一)に1568万余の大差をつけてトップ独走?。初の賞金王へも大きなアドバンテージをつけ走る″53歳の飛ばし屋〝にご注目を!!
(了)