日本のゴルフシーズンの先陣を切って、女子プロツアーが開幕しました。南国・沖縄、琉球GCで行われた「ダイキン・オーキッドレディス」。強かったのは、相変わらずの外国勢、中でも韓国パワーの手ごわさでした。昨季も慢性的な首痛に悩まされながらも2勝したアン・ソンジュ(29=韓国)が、上がり3ホールで2バーディーを奪う勝負強さでトップを走っていたツアー参戦1年目の川岸史果(ふみか、22)を押しつぶし、通算6アンダーで開幕戦V。ツアー通算23勝目を飾りました。2打差の3位には昨季の賞金女王、イ・ボミが食い込み、5位李知姫、8位にキム・ハヌルとO・サタヤ(タイ)とトップ10に4人の韓国パワーが居座り、今季も打倒韓国勢が大きなテーマになりそうな女子ツアーです。
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オーキッド(らん)の花に埋めつくされた琉球GCは、まさに春爛漫の女子ツアーの開幕戦。昨年から4日間大会に格上げされ、賞金総額も1億2000万円。優勝は2160万円にアップされて選手のモチベーションも高まる開幕戦になりました。試合をリードしたのは地元沖縄・糸満出身の大城さつきと、男子ツアー6勝の″怪物〝川岸良兼の次女、昨年7月、4度目のプロテストにやっと合格してプロの道を歩み始めたばかりの川岸史果。特に2日目、65をマークして首位タイに浮上した川岸への期待はたかまるばかりでした。3日目も68で回り、単独首位をキープした史果の初優勝成るか?に注目は集まりました。父親譲りの恵まれた体躯からの長打力が売り物で、270ヤードも飛ばすドライバーは、女子プロ界でもトップクラスに入ります。
最終日、最終組はもちろん初体験。2打のリードはつけていましたが、大城と、連日じわじわと順位を上げてきたアン・ソンジュとの最終組は、否応なしにプレッシャーがかかります。ショットが乱れるほどの強風が吹き荒れたのも沖縄らしい天候。アウトは39をたたきアンに並ばれた史果は、バックナインなんとかパーで凌ぎます。大城も落ち、アンは12番でボギーとし、再びトップに浮上した史果に″残り6ホール”の強烈な重圧がかかります。あと3つ、となった16番パー3。グリーン右スロープから1㍍に寄せた史果に対して、10㍍弱のバーディーパットを沈めたアン。史果は残るショートパットを外して″バーディー・ボギー”。一瞬にして首位が逆転です。17番でアンが1㍍弱を外す思わぬボギーで再び史果、アンは並んで最終18番(パー5)を迎える見せ場となりました。
風次第では2オンも狙える最終ホール。長打力を生かして2オンを狙った史果の球は風に押されてグリーン右外。アンは手堅くフェアウェイに刻み、ピン手前6㍍に3オン。30ヤードの寄せが見ものとなった史果のチップショットは「地面が硬くてバンス(ウェッジの裏側の出っぱり)が跳ねて飛んでしまった(史果)。低く強く出た球は、グリーンオーバーしてエッジへ。返す10㍍のバーディーパットも入らず天を仰ぎました。それを見たアンは、これぞ賞金王3度の底力を見せつけるようにスライスラインを見事に読み切ってバーディーフィニッシュ。若い川岸史果は、開幕戦Vが目前の大健闘でしたが、最後は自分に勝てず、実力者のアンに足元をすくわれた1戦でした。
★最終日、最終ホールで勝ちを逃がした川岸史果のコメント
「自分で首を絞めたラウンドになって悔しいです。風が舞っていて後半ドライバーが崩れてきた。ラフからの対応や、風の読みがうまくいかなかった。守りに行って守れるタイプではないので、攻めてはいったのですが、風で距離が合わなかった。アンさんの残り5ホールくらいからの気持ちの入り方は凄かった。16番とか18番の最後のパットとか。でも最終日、最終組で回れて、自分も飛距離とセカンドショットは自信になったので、これからもそれを生かしてまた優勝争いをしたいです」
3月、新たにPGMホールディングスとスポンサー契約を締結した川岸史果です。全国130ヵ所以上のゴルフ場を運営するPGMとの契約は、今後史果の練習環境の大幅改善につながるグッドニュースになりました。
3年連続賞金女王を狙うイ・ボミは1番のスタートでドライバーを曲げダブルボギー発進しながら、後半はアンダーパーの34。強風の中で2つスコアを伸ばしました。首位へ2打差の4アンダー3位はさすがというところ。昨季2勝組の李知姫(38)、全美貞(34)、キム・ハヌル(28)。このは欠場しましたが申ジエ(昨季3勝、賞金2位)も強敵です。賞金14位のペ・ヒギョン(24)、同33位のイ・ナリ(28)、今季から日本ツアーに参入してきたユン・チェヨン・・と多士済々の韓国勢。さらに今週は予選落ちでしたが、結婚してミセスとなったテレサー・ルー(昨季3勝、賞金6位=台湾)ら外国勢の厚い層に挑む日本勢の頑張りはどこまで通じるのでしょうか。
昨季1億円プレーヤーになった笠りつ子や鈴木愛。クラブの契約を一新した大山志保や昨季未勝利に終わった渡辺彩香、成田美寿々、原江里菜。1勝にとどまった菊地絵理香。日本女子オープン2位と健闘した堀琴音や柏原明日架、比嘉真美子、森田遥ら若手の中からブレークする選手にも期待したいものです。外国パワーは強力ですが、日本にも女子は期待できる新顔が次々と登場してきます。果たして4年ぶりの日本人女王が実現するか。話題は尽きない女子ツアーの展開になりそうです。