選手会長・宮里優作(37)が劇的な逆転賞金王に就きました。今季男子ツアー最終戦、日本シリーズJT杯(東京稲城市・東京よみうりCC)の最終日、ボギーなしの8アンダー62を出し、2位に6打差をつけ通算15アンダーで圧勝。賞金4000万円を獲得、今季の獲得賞金を1億8283万円として約1700万円差でトップを走っていた小平智(28)を逆転、ツアー15年目で初の賞金王に輝きました。賞金ランク2位にいた宮里の″逆転〝は、優勝しかなかったのに、重圧をはねのけてのVはさすが。最終戦での逆転賞金王は、2000年の片山晋呉以来2人目の快挙。優作はこの大会13年に続き2勝目。今季4勝目で通算7勝。迫ってきた外国勢を押しやって日本勢が面目を保ったメークドラマには、青木功会長もご機嫌のシーズン打ち上げ。主役を演じた優作は、最優秀選手賞はじめ賞金ランキング、平均ストローク、平均パット、ゴルフ記者賞と5冠をひとり占め。 ″遅咲き〝優作のブレークには驚きです。 ツアーが終わった翌12月4日には、東京・ANAインターコンチネンタルホテル東京でシーズンの表彰式が行われ、宮里優作以下表彰選手が勢ぞろいして華やかな宴が開催されました。
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年間のツアー最終戦で優作が魅せた圧巻のゴルフでした。首位タイで出た最終日、2番のパー3で約1㍍につけたバーディーチャンスを右に外してイヤなスタートを切ったのですが「パットラインに迷いが出て打てなかった。3番からは思い直して集中したら迷いが取れた」(優作)という。次の3番から4㍍前後のバーディーパットが次々と入り3連続バーディー。パー5の6番では2打目の残り221ヤード。最後はグリーンに向って下って行くホールを4Iであわやアルバトロスかという会心の1打で1㍍に乗せてイーグル。この4ホールでスコアを5つ伸ばす勢い。8番のパー3も5㍍を入れてアウトで29。「きょうは後半のバックナインの戦いが大事だと思っていたのに・・」(優作)前半で2位に7打差をつける横綱相撲で圧倒しました。
4年前、優作が遅咲きのツアー初優勝を飾った13年大会を思い出さずにはいられません。3打差の単独首位で臨んだ18番パー3。最難関とだれもがいう急傾斜の″東京よみうり、魔の18番グリーン〝。第1打をグリーン左に外し、右サイドに立つピンへのチップショットがグリーンを横切って右外のスロープへ。返す10ヤードのアプローチは、急傾斜でカップ近くに止めるのは至難のワザ。ダブルボギーかトリプルも覚悟の絶体絶命の状況で打った優作のロブショットが、何とそのままカップに消える運命のパーセーブになったのです。この1打でプロ初優勝をつかんだ優作のゴルフは、14年から一変しました。
美しいフォームからナイスショットを飛ばすのに、勝負のかかったパットになると手が動かなくなる″2流選手〝に変貌するのです。プロ入り10年間も勝ち星がこなかったその優作が、以後4年間で7つの勝ち星を重ねる″A級選手〝に飛躍したのですから驚きです。勝ったことで精神的な安定度がガラリと変わりました。元々ショットには定評のある選手でしたから、グリーン上でのプレーが変わればスコアアップは明らかです。パットに弱点のあった優作が、今年は平均パット数第1位(1.7420)で部門賞まで取ってしまいました。
後半9ホールに入っても、もう動じることがありませんでした。南アの刺客、ショーン・ノリス、韓国生まれ米国育ちのスンス・ハンらの追い上げも意に介さず、インでも2バーディーを加え、3日目、最終日と決勝ラウンド2日間はノーボギーで回る強さをみせました。4年前の思い出の18番も、今回はピンに真っ直ぐ最も安全なカップ真下6㍍にワンオン。危なげなくパーに収めての快勝。薄氷の優勝だった13年大会のスコアを2打上回る成長をみせての″東京よみうり制覇〝でした。
☆★15年目の賞金王となった宮里優作のコメントは?
「いやあ、目の前のことに一生懸命になっていて・・優勝の実感がないですね。もっと拮抗するかと思っていたけど、前半で予想以上のゴルフができたから・・。でも疲れました。緊張していたのがほどけたという感じですね。(15年目の賞金王は)長かったとは思いませんね。藤田さんや孔明(小田)さんの賞金王も見ていましたから。自分はまだまだかかるなと感じてました。一生に1度できるかできないかですから、逆に早かったと思います。ショットの技術力とかメンタルコントロールとか、細かい精度がまだ薄い感じがしていましたから。いまはちょっとだけ厚みが出た感じですかね。この先40代に向けてさらにショートゲームに磨きをかけないとと思ってます。賞金王は年間で優勝するのと違って、そうそうなれるもんじゃない。それには体力もいるし心技体が求められる。プロに入ってみて、取るのは大変と思っていた。憧れでしたね」
池田勇太から引き継いだ選手会長も今年で2年目。スポンサーとのおつき合いをはじめ、選手育成に関しての意見交換やギャラリーサービス(写真撮影等)の実践。また災害による被災地訪問等々にも追われ、自らの練習不足を余儀なくされることもたびたび。しかし宮里は「(選手会長は)やってよかった。いろいろな人とも会えたし、メンタルトレーニングにもなった。そうしたことの中でゴルフも勝てたのは、自分の成長だったと思う。やってよかった」と、一人二役も人生勉強だったと、プラス思考にとらえている優作らしい″優等生発言〝です。
今年は、妹の藍さん(32)が現役引退して「宮里家の露出が減ったから自分たちが頑張らなくては」ともいう優作。さらに「藍ちゃんを超えるにはメジャーで勝つしかないと思っている」と。今季は日本プロ日清杯、日本シリーズJT杯(2勝目)に勝ち、国内メジャーは7勝中3勝しているので、これからの狙いは海外です。憧れの米マスターズ出場へは世界ランキングが注目。出場権が与えられる年内での世界ランク50位以内をまず目指します。日本ツアーは終了したので、14日からのアジアンツアー「インドネシア・マスターズ」に小平智らとともに出場するのも世界ランクの上昇がターゲット。年明け1月11日からの米ツアー、ソニーオープンinハワイなどにもエントリー、最終の世界ランキング50位以内も狙うなど、世界を見据える優作に、オフシーズンはありません。(了)