1ヵ月前まではまるで″無名〝だった男が、一気に男子ツアーのトッププレヤーの仲間入りです!秋吉翔太(27)。ダンロップ・スリクソン福島OP(グランディ那須白河GC)で、最終日2打差の5位から「64」を出して通算20アンダーで逆転優勝です。5月のミズノOP以来となる僅か28日目でのツアー2勝目。日本ゴルフツアー機構史上3番目の短期間での2勝を挙げた秋吉は、ミズノOPの直前には全米OP国内最終予選をトップ通過し、ミズノ優勝では全英OPの出場権も獲得したラッキーボーイ。全米OP(シネコックヒルズ)では通算19オーバー、148位で予選落ちするショックを味わって帰国したばかり。しかし、何かをしでかす男の予感を秘めた、秋吉翔太。獲得賞金は3837.7万円で賞金ランクも2位に上がってきました。
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夢舞台全米オープンの初挑戦は、散々な目の合い、尻尾をまいて帰国したのが火曜日(19日)。まだ時差ぼけも取れ切らないこの週に、どえらい逆転劇を演じました。スリクソンは用具契約をしているスポンサー。そのホスト大会での快挙です。難コースとタフな設定に泣いたシネコックヒルズ。「あんなに楽しくないゴルフは、人生で初めてだった」と過酷な経験を振り返る秋吉。世界最高峰の試合に出られたのはいいけれど、打ちのめされて「自分の実力はこんなものか」と、自らと向き合えたのは収穫は収穫でした。
その地獄のシネコックヒルズからまだ1週間。国内に帰ってきた初戦にリベンジを果たすのだから秋吉翔太もただ者ではありません。初日9位からスタートして徐々に順位を上げ、3日目「66」でトップ石川遼へは2打差の5位。秘かに逆転Vを狙った最終日。前半13パットで4つのバーディー。後半に入っても15番までバーディーラッシュを続けて8個目。16番で初ボギーを喫しましたが最終18番では計9個目のバーディーで締めくくりました。32、32「64」のスコア。後半は11パットで計24パット。バーディー合戦となったこのコースでの戦いを制したのもうなずける秋吉のパットの冴えでした。
★ツアー1勝から28日で2勝目を挙げた幸運児・秋吉翔太のコメント。
「17番ではボールが池ギリギリで止まってくれたり、18番もバンカーに入りかけた球が転がってフェアウェイに戻るなど、最後の3ホールは特に運が味方してくれた。全米で海外選手のアプローチなどをじっくりみて研究したのが生きました。この大会は、思い入れも強くて優勝争いがしたかった。最終日もその気持ちが、攻めのゴルフにつながりました。こんなに早く2勝目が出来るとは本当に思っていなかった。正直うれしいですね」
全米帰りの秋吉が、屈辱の予選落ちをバネに、不死鳥のような立ち直りです。全米予選トップ通過といい、その週に8000ヤード超の国内最長コース(茨城、ザ・ロイヤルGC)で09年プロ転向から10年目のツアー初V。そして契約プロとしての責任を果たす「ダンロップ」主催の大会で恩返し・・。
飛ばし屋で鳴らした高校時代(熊本出身)。課題はパットでしたが、昨夏、山本己紗雄プロ(63=福岡県出身)に指導を受けてパットのストロークを矯正。昨季の初シード獲得に大きな力となったいう。さらに今季は、渡辺研太トレーナーについて筋肉を強化、体の動きを改善して飛んで曲がらないショットに磨きをかけたという。今季の爆発的な活躍もこうした基本からの鍛錬でもたらされました。今回、僅か24パットでの優勝もそのたまものでしょう。
秋吉翔太のゴルフ人生をガラリと一変させた劇的なこの1ヵ月。その″翔太劇場〝の締めくくりは、7月19日からの全英オープン(カーヌスティ=スコットランド)です。叩きのめされた全米のうっぷんを、本当に晴らすのはこの全英でしょう。最終日の7月22日は翔太の28歳の誕生日に当たります。「何としても(予選を通って)4日間戦わないと」ーお祭り男の誓いは、天に通じるでしょうか。
(了)