鈴木愛(24)が見せた賞金女王の意地でした。ニチレイレディス(千葉、袖ヶ浦・新袖コース)。韓国・申ジエ(30)、台湾・テレサ・ルー(30)の実力者3人で臨んだプレーオフ。まず1ホール目にテレサを下し、2ホール目には申をねじ伏せ、左膝痛をおしての優勝。「日本、韓国、台湾のアジアの選手と戦い、日本が一番強かったというのを見せられてうれしい」と、日本を背負った鈴木愛、会心の1勝でした。これで今季前半戦10試合に出て早くも4勝。獲得賞金も9000万円を超え1億が目前。女王になった昨季の勝利数2勝を、前半戦で倍増させる愛の気迫と強さ。2年連続賞金女王へも力強く前進しました。プロ6年目でツアー通算9勝を挙げる快調な足取りです。
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日本を背負う強い意思をこれほどに表に出す選手もそうはいません。「ゴルフも韓国の選手は強いです。でも日本へきてすぐに勝たせるのはどうかと思います。差があるのは事実ですけど、日本にもいい選手がいっぱいいるのですから、もっと韓国人に対抗できる選手が出てきてもいいと思います」と、愛はいつも語っています。その典型のような試合でした。左膝痛を抱え万全ではない今シーズン。しかし賞金女王のメンツをかけて全米女子オープン(5月31日~6月3日)に挑戦しましたが、2日間6オーバー(79位)で予選落ちでした。帰国してサントリーを1週休み、国内ツアーに復帰したらすぐに優勝です。最終日は李知姫、申ジエの韓国勢を追って2打差3位からのスタート。終盤で首位をキープしていたのはやはり外国勢のテレサ・ルー。2打差で迎えた17番から愛のチャージが始まります。このホール、5番ユーテリティのセカンドショットがピン1㍍につくスーパーショットでした。これを見た同じ組のテレサが、よもやの3パットボギー。バーディーを決めた鈴木はここで一気に首位に並びます。18番(パー5)は「残り203ヤード。7番ウッドでした」(鈴木)と、これを2オン。逆転イーグルは成りませんでしたが、着実にバーディーを奪って(テレサ、申ともにバーディー)3人のプレーオフへ持ち込んだのです。
これまでPOは1勝4敗。決して得意ではないプレーオフ決戦で鈴木は負けませんでした。「みなさんに″やっぱり日本の選手、負けたか〝といわれたくなかった。日本、台湾、韓国とアジアの選手と戦い、日本が負けなかった。″日本は強いぞ〝と皆さんに見せられたのでホットしてます。今回は特に緊張することもなく、すごく落ち着いてやれましたね」(愛)
5月初めのワールド。サロンパスカップでは、申ジエ、イ・ジョン・ウンの韓国勢と争い、申ジエの逆転優勝を許した痛恨の試合にも触れ「絶対サロンパスと同じように負けたくないと思い、絶対倒してやるよ思ってました」と、ここでも意地をあらわにした鈴木。決戦となった3人POは、1ホール目は鈴木、申ともにバーディー。テレサがパーで脱落。申と一騎打ちとなった2ホール目は、申がダブルボギーの大ミス。鈴木は着実にパーに収め、申にもサロンパスのリベンジを果たしました。
★日・韓・台の決戦に勝った鈴木愛のコメント
「やっぱり膝の調子もまだあまりよくなくて70%ぐらいですかね。このところゴルフもあまりやってなかったので、自分にあまり期待をかけなかった。一緒に回ったテレサさんぼ調子がよかったので、私にはチャンスは少ないかと思っていました。2打差だった17番でピンを狙っていき、すごくいいショットが打てたのでチャンスがあるかなと思いました。プレーオフに食い込めたので、負けても悔いはないかなと思っていました。難しいコースなので最後まで何があるか分からないという気持ちで最後までできた。結果がよくて満足してます。海外に行ってもまれて日本に帰ってくると、勉強することがたくさんある。日本では成績残せてるので成長してる部分もあるのでしょうけど、やっぱり海外で勝てない、予選通らないというところで反省点も多いです。その辺をしっかりやって次の全英女子オープンに臨めたらいいです」
4月のANAインスピレ―ションに米国遠征した時も、帰国直後のスタジオアリスに優勝。今回も全米女子OP帰りのニチレイで勝ちました。これは愛にとって大きな自信になるでしょう。今週のアース・モンダミンカップ(千葉・カメリアヒルズ)はディフェンディング・チャンピオン。優勝賞金も3240万円と高額で、1000万円弱に迫っている1億円の大台突破も可能性大です。「前半戦最後の試合ですし、バーディー合戦のコースなので負けないようにしたい」と気合が入ります。練習好きでパットの名手(昨季平均パット数1.7582で2位。今季1.7204で1位=6月17日現在)。日本へ日本へと押し寄せてくる外国勢。中でも近隣のゴルフ大国・韓国パワーへの対抗心を誰よりも強く燃やす鈴木愛。その闘争心こそが、彼女の強さの秘密なのかもしれません。昨季の獲得賞金1億4000万超。今季はシーズン半ばにして早くも1億円に手が届きそう。(了)