プロ8年目、遅咲きのヒーロー・出水田(いずみだ)大二郎(25)が悲願達成です!男子ツアーは約1ヵ月間の″夏休み〝あけ、RIZAP・KBCオーガスタ(福岡・芥屋GC)が炎暑のなかで行われ、今季初めて賞金シード権を獲得してツアーに臨んでいた出水田が、最終日、チェ・ホソン(崔虎星=韓国)に並ばれながら、17番(202ヤード、パー3)で高麗グリーン5㍍のフックラインを沈めるバーディーで決着をつけました。今季はミズノOPの34位が最高成績だった遊び人が、とてつもない大魚を射止め、ゲットした優勝賞金は2000万円。賞金ランク18位に急上昇しましたが、これで一気にトッププレーヤーの仲間入りができるかどうか!?
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ベントグリーンの拡散で年々減ってきた高麗グリーンをいまだに保持している芥屋GC。玄界灘をまじかに臨むこの老舗コースは、ベントに慣れきったプロたちを悩ませます。強い芝目の高麗芝は、ある程度しっかり打たないと思ったところに球が転がってくれません。183㌢、83㌔の立派な体格をもった出水田。プロの間でも飛ばし屋で鳴らしていますが、意外や意外?パット部門でも上位に名を連ねる男です。平均パットは現在6位(1.7506)にランクされるパットの名手でもあります。2日目首位に立ち、トップをキープして迎えた最終日。初体験の最終組で一時は2位に3打差をつけて折り返しました。しかし、初体験の優勝争い。やはり試練はやってきました。14番で左の林に入れ、16番ではラフからラフを渡り歩き相次いでボギーの洗礼。ここで崔虎星(チェ・ホソン)に並ばれました。残りは2ホール。いつもは弱気の虫が頭をもたげて勝ちにいけない「人のいい」出水田クン。今回のチャンスには「まだ2ホールある。最終18番はパー5もある」と、前向きな志向になれたという。
そのとたん17番のパー3。5㍍のバーディーパットを見事に沈めたのです。TV解説をしていた青木功会長も「逆目のフックライン。高麗だし難しいあの場面で、ホントによく入れた」と絶賛でした。この大事なところで見せたパッティングは、まさに「平均パット6位」お見事なウィニング・パットでした。この1打リードを守り、最終18番(パー5)ではセカンドをレイアップ。手堅くパーに収めたマネジメントで堂々たる初優勝でした。
鹿児島・樟南高出身。高校の2年先輩に今季プロ10年目で初優勝した秋吉翔太がいます。優勝の瞬間、18番グリーンに飛び出して出水田に抱きつき、本人より先に歓喜の涙を流した秋吉先輩。自分は10年目、ルームメイトだった出水田が8年目の開花。出水田が「先輩が先に泣いているから、泣けませんでした」と、苦笑いだった出水田大二郎。苦労の末に2人で咲かせた大輪の輪。微笑ましいシーンでした。
飛ばし屋でパットも上手いのに、大二郎はどうして8年もかかったのでしょう。その原因は、彼の人の良さ、気の弱さにあったとみる人は多いです。「大二郎は飛ぶし、ショットもいいのに、ハートがちょっと・・。ボギーをうったらガクッとマイナス思考になる」というのは先輩の秋吉。父親・勇光さんは「優し過ぎる性格。本当にプロゴルファに向くのかと思っていた」と息子を評しています。出水田自身も「僕はメンタル面が結構弱い。考え方の問題と思うけど、頑張ろうと意気込み過ぎて空回りして体が動かなくなっていた。今回はキャディーと話して、リラックスして回れてこの結果になった。余裕をもって回るのがよかったです」と、振り返ります。
★出水田大二郎の初優勝コメントをもう少し聞きましょう。
「優勝した気分は信じられない気持ちです。17番のバーディーがデカかったです。ワンカップフックと読めていました。狙い通りでした。あれで18番はムリする必要がなくなったので。今週はパットがよかった。長いのも入ってくれた。本当にパットに助けられました。去年の関西オープンのとき、I・J・ジャンさん(韓国)にパター練習器具をもらったんです。それがスキルアップにとても効果があったですね。黄色いヤツです。8年目の優勝は、自分にはそう長くはなかった。僕はコツコツいくタイプなので、そう遅くはなかったかなと。優勝できたので、来週からは自信をもってプレーできると思う。シードも危ない状況だったので、ここで残り試合と来年が大丈夫になり、少しは余裕をもってやれるかなと思います。今シーズ始まるときに、今年はJT日本シリーズに出ることが目標でした。これがかなえられたので、1勝目はまぐれといわれたりするので2勝目を狙っていきたいです。2年後の東京五輪には日本代表として日の丸を背負って出たいですね」
ここまで歩んできた道のりは長かった。鮮魚店を営む父親は、学生時代競泳で全国レベルでした。が、「僕はゴルフがいい」と、大二郎は小4からクラブを本格的に握り、横峯さくらの父・良郎さんが鹿児島で開いた「めだかクラブ」に入塾。07年から九州ジュニアに4連覇。樟南高卒業後の11年に19歳でプロ転向。翌12年、チャレンジツアー参加2試合目にプロ初優勝。その後2年間、宮崎でひとり暮らし。フェニックスゴルフアカデミーで修業をつみましたが、本人いわく「調子に乗ったというか、親のすねをかじってだらけた生活をしてしまった。4年くらい前に鹿児島の実家に戻った」という。出直しを誓った昨年の東海クラシック(9月)ごろから、地元九州一派の「チーム(小田)孔明」のメンバー入り。切磋琢磨した効果が出て、昨季の賞金ランク66位で初めてのシード選手となったのです。
歩んだ道は8年目。ようやくここでれっきとしたプロになったといっていいでしょう。ツアー選手にはなったものの、今季も不振にあえいで迎えた後半戦でした。この大きな星を、ビッグゲームの残る秋の陣で、もう一度輝かせられるかどうか。遊び人・大二郎がホンモノになれるかどうかの、スタートでしょう。
(了)