ジャンボ尾崎と練習ラウンドした今平周吾が果たした悲願の″今季初V〝。「優勝しないで賞金王はないだろう!」

待望の今季初Vを挙げ、婚約者の若松菜々恵さん(22)と優勝カップを支える今平周吾(左)=ブリヂストンOP(千葉・袖ヶ浦CC=提供・いずれもJGTO)

賞金ランクトップを走る今平周吾(26)が6試合を残すシーズン大詰でようやく今季初勝利を挙げました。ブリヂストン・オープン(千葉・袖ヶ浦CC)の水曜日、夢がかなって練習ラウンドを一緒したジャンボ尾崎に「優勝しないで賞金王はないだろう」とキツイ一言をもらったのが、大きな刺激になったという26歳。2ホールだけのジャンボとの練習ラウンドでしたが、通算112勝の″神様〝と回って授かったいくつかのアドバイスが、昨年5月の関西オープン以来の待望のプロ2勝目をもたらしました。今季はこれまでトップテン8回(2位2回、3位3回、マッチプレー決勝戦負け)と抜群の安定感で賞金ランク1位を走ってきた今平は、これで賞金1億973万円余とし、2位以下に約3347万円差。名実ともに初の賞金王へ急接近です。

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最終日、前半の足踏みもバックナインで切れ味鋭いショットを連発。逆転Vにつなげた今平周吾。(ブリヂストンOP)=千葉・袖ヶ浦CC

水曜日の練習日のことでした。横田真一と練習ラウンドをこなしていた今平が、16番をプレーしていたジャンボ尾崎に追いつきました。挨拶を交わすと、「来るなら早く来い!」とジャンボに声をかけられ、今平と横田は急きょ17番(パー3)18番(パー5)の2ホールを″神様〝と一緒できる幸運に恵まれたのでした。
ジャンボと今平とは師弟関係もなく、横田が改めて今平をジャンボに紹介。「賞金ランク1位なのに今季優勝がないんです」と告げると、ジャンボは不思議そうに「優勝しないで賞金王はないだろう」と、一言。そして2ホールを回る間に、アプローチとパットなどのアドバイスを今平に与えたのです。今平にとって2ホールとはいえ、ジャンボと一緒できてアドバイスをもらった練習ラウンドは、またとない貴重な時間でした。イン9ホールだけで、さっさと引き揚げていったジャンボに最敬礼で見送った今平周吾。

翌日からの実戦では川村昌弘を追った最終日。大詰での逆転劇は、ジャンボと回った17番、18番だったのは、何かの縁でつながったともいえるものでした。前半もたついた今平は、7番のボギーで川村に4打差をつけられていました。いかしインに入ってからの今平のゴルフが変わってきました。11番、13番で2~3㍍を1パットで沈めるバーディーでじりじりと追い上げます。15番左曲がりのパー4は、U3で打ちながら左の林に打ち込む大ピンチ。フェアウェイに出すだけで3オンは3㍍。これをねじ込むパーセーブは貴重でした。圧巻はさらに16番からの上がり3ホールでした。

今平周吾を奮い立たせる″貴重な〝アドバイスを送った通算112勝の尾崎将司。

16番(パー5)は3オン2㍍を沈めます。ジャンボと回った17番(231ヤード、パー3)は、すばらしいショットで3㍍につけてこれも沈めます。このホール、川村はグリーン左ラフに外し、アプローチも3㍍オーバーさせてボギーとします。″バーディー・ボギー〝で一気に首位が入れ替わりました。
ポーカーフェースの今平の表情に、珍しく緊張の色が走りました。逆に1打リードで迎えた最終18番(パー5)。フェアウェイ真ん中から2オンを狙った今平のショットは、グリーン右のバンカーに落ちました。右ラフから強引に2オン狙いの川村のセカンドは、グリーン左奥のエッジ。1打差を巡っての厳しい攻防でした。今平のバンカーショットは、カップをかすめて1㍍強。川村のチップも
1.2㍍に寄ってともにバーディーフィニッシュとなりましたが、3連続バーディーで上がった今平の″1打リード〝は崩れませんでした。練習日、ジャンボと回った同じ2ホールでの勝負というのは、不思議でした。今平のバックナインは、12番以外は全部1パットの計10パット。シャイで静かな今平の顔が、紅潮したままのホールアウトでした。

昨年5月関西オープンでプロ初優勝した時にキャディーを務めた若松菜々恵さん(22)。岐阜・中部学院大のゴルフ部出身で、この5月には今平と婚約した美人の応援を得て、待望のプロ2勝目です。「彼女が見に来ているときに優勝できてうれしいですね」と今平がいえば、菜々恵さんは「カッコよかった。これからもずっとそばで支えたい。賞金王になってほしいです」と、婚約後の初Vに目を輝かせていました。

☆ジャンボに背中を押され、待望の″1勝〝を挙げた今平周吾のコメント。

今平周吾のショット。

「前半で結構離されたので、自分からいかないと優勝はできないとイメージを変えた。コンパクトに振っていたのを、8番くらいから思い切って振るようにしたらイメージが合ってきた。パットも後半、イメージがよくなってきた。15番のパーパットが入ったのがデカかった。1打に集中して、外れたら後がないという感じでやっていたのが上手くいった。17番のティーショットは完ぺきでした。(距離があるのに)うまくピンに飛んで行ってくれました。これまで勝てそうで勝てなかったけど、最後まで諦めなければいいこともあるんだなと、きょう思いました。(練習日に)ジャンボさんと回れていろいろと言葉をもらったのでいい刺激になった。2ホールしか回ってないけど、頑張らなければいけないという気持ちにもなってうまくいき、嬉しいです。ジャンボさんに″優勝しないで賞金王はないだろう〝といわれ、そうだなと思いました。賞金王は、残り6戦あって、高額賞金が続くので、あと1勝できれば近づいてくるんじゃないかと思う。きょうの1勝は自信になった。世界ランクも50位以内に入ればマスターズにも出られるので目標にしています」

最後まで優勝争いをしながら今平周吾に逆転された川村昌弘(ブリヂストンOP=千葉・袖ヶ浦CC)

埼玉・入間市生まれ。06年、中学時代に「関東ジュニア」で石川遼を抑えて優勝。埼玉栄高1年の時「日本ジュニア」で松山英樹と″最終組対決〝を制して優勝でした。翌09年高校を2年で中退して渡米。フロリダのIMGゴルフアカデミーで2年間修業。「全米ジュニア」のベスト8にも入りました。帰国後11年にプロ転向。14年はチャレンジ(現AbemaTVツアー)賞金王。15年からはツアーシード権をキープ。16年は賞金10位。17年には関西OPでツアー初Vなどで賞金6位と年々上昇。小柄ですが、パットもうまく、パワーも兼ね備える飛ばし屋です。

口下手でポーカーフェース。喜怒哀楽をあまり表面には出さない静かな男です。しかし内に秘めた闘志は人後に落ちません。休みの日でもクラブを握っているゴルフ好き。昨年は五輪強化指定選手にも選出され、東京五輪への夢ももち続ける若武者です。このオフ にはフィアンセとの結婚も控えてますます充実のプロ生活が待っているようです。谷口徹にもかわいがられている周吾ですが、今回見えない糸で結ばれたジャンボ尾崎との縁も、気になるところです。

(了)