男子ゴルフの日本ゴルフツアー機構(JGTO)は、このほどメルセデス・ベンツ日本とオフィシャルパートナー契約を結び、3月15日に都内で両者共同記者会見を行いました。年間表彰の対象であるトータルポイントランキングに今季から「メルセデス・ベンツ」の名を冠した「メルセデス・ベンツ トータルポイントランキング」として年間表彰が行われます。賞金ランキングとは別に、ツアー9部門別データのランキングをポイント化し、最優秀選手を選出。1位となった選手には時価1000万円超のメルセデス・ベンツSクラス(3リッター)と賞金100万円が贈られます。メルセデスは2012年から国内女子ツアーのオフィシャルパートナーとして活動しており、今回の男子ツアーへの参入によって国内プロゴルフへ包括的なスポンサーとなりました。男子ツアー国内開幕を1ヵ月後に控え、明るいニュースに選手のモチベーションも急上昇です。
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東京・六本木にあるメルセデス・ミー東京1階ギャラリー。青木功JGTO会長を挟んで上野金太郎メルセデス・ベンツ日本社長と佐藤信人JGTO理事(プロ)の3人。その横には最優秀選手に贈られるベンツSクラスがデンと飾られていました。すでに女子ツアーではここ7年、最優秀選手に贈られてきたベンツ車両ですが、今年からは男子ツアーにも贈呈されるビッグプライズです。このベンツを見ながら青木功会長が思わずつぶやきました。「私自身も賞金王になったことはあるけど、ポイントランキングはまだ始まってなかったからなぁ」ー。同席したJGTO理事でツアー9勝の佐藤信人プロも「いまの若い選手が羨ましいかぎりです」と、二人そろって羨望の声をもらしました。
トータルポイントランキングは、1999年JGTO設立以来設定され、年間表彰の対象とされていますが、これほどの大きな賞がついたのはもちろん初めてのことです。ちなみに18年度のトータルポイント1位は池田勇太で賞金は100万円。賞金王の今平周吾はポイントランキング7位でした。
トータルポイントランキングは、9つの部門別データのランキングをそのままポイント化し、トータルポイントランキングが確定されます。ポイントを算出するのは、次の9部門です。
①パーキープ率(パーかそれよりいいスコアを獲得する率)=昨年1位・稲森佑貴
②パーオン率(パーオンする率)=昨年カン・キョン・ナム
③バーディー率(1ラウンド当たりのバーディー獲得率)=昨年今平周吾
④イーグル率(1イーグルを獲得するために要するラウンド数)=昨年W・J・リー
⑤ドライビングディスタンス(18ホール中2ホールで計測)=昨年額賀辰徳
⑥フェアウェイキープ率(パー3を除く全ホールで計測)=昨年稲森佑貴
⑦サンドセーブ率(グリーンサイドのバンカーから2打かそれより少ない打数でカップインする率)=昨年野仲茂
⑧平均パット率(パーオンしたホールでの平均パット数)=昨年今平周吾
⑨平均ストローク(1ラウンド当たりの平均ストローク数)=昨年今平周吾
獲得した賞金だけを加算する「賞金ランキング」とはまた違ったランキングです。1年間を通じて、安定して精度の高いプレーをキープすることと、微差の勝負にも勝ち抜くことを両立するのがいかに難しいかということになります。過去10年、賞金ランキング1位とトータルポイントランキング1位を同年度に両方獲得した選手は、09年の石川遼、12年の藤田寛之、13年の松山英樹の3人だけです。
ベンツは、世界各国のスポーツ界のスポンサーを務めていますが、ゴルフ界ではマスターズや全英オープンのメジャー競技はじめ各国の協会やツアーにも手を差し伸べています。日本国内男子では数々のトーナメントの協賛、日本女子プロゴルフ協会とはすでに8年にわたるオフィシャルパートナーを務めています。男子ツアーの青木功会長とは親交も厚い上野金太郎社長。青木会長からの強い要望を受けての今回の男子ツアー参入といわれています。上野社長は「メルセデス・ベンツはスポーツ支援を社会的責任の一つととらえ、ゴルフはじめ様々なジャンルのスポーツをサポートしています。特にゴルフはベンツのお客様にも人気が高く、メルセデス・ベンツを身近に感じていただく非常にいい機会と考えています。JGTOとのパートナーシップ活動では選手のモチベーション向上やファンの方々に喜んでいただける取組を通じ、日本のゴルフのさらなる振興とスポーツ文化の発展に寄与することを願っています」と話しています。
青木功JGTO会長も東京五輪前年、また今秋には米ツアー初の日本開催を控えて「このような年にベンツとパートナーシップを結ばせていただいたことは、日本男子プロのステイタスを上げ、選手たちには世界的なブランドのパートナーである自覚を生むと思う。一流のスポーツマンシップを一層育んでくれるモチベーションにもなると信じています」と、世界トップ級の企業をパートナーにした喜びを語っています。
初のマスターズ出場(4月11~14日、米ジョージア・オーガスタ)を目前にしている昨年の賞金王、今平周吾も発表に同席。「9部門全てで上位に入らないとポイントが上がらない賞。去年は僕はこの賞は7位でしたが、今年この賞を狙えるようなら2年連続賞金王も見えてくる。ホントに励みになる賞です」と、選手にとってモチベーションの上がるスポンサーの登場に顔を紅潮させていました。 男子ツアー参入を機にベンツが近い将来新しいトーナメントを持つのではないかとの観測について上野社長は「トーナメントに関してはいまのところはない。ただ今回のパートナー契約は短期契約ではない」と、腰を据えた男子ツアー参画であることを明言していました。まずは、このメルセデス・ランキングが、賞金王と並んで世間の認知度を高めて男子ツアーを代表する権威あるタイトルに育つことが先決なのでしょうか・・。
(了)