藍ちゃん復活!米ツアー4年目の初優勝。全英リコー女子OPは”堂々たる敗戦”

青木功プロ(中央)の紫綬褒章受章を祝う会で石川遼(左)とともに花束を贈呈した宮里藍(右)=08年12月、東京・帝国ホテル
青木功プロ(中央)の紫綬褒章受章を祝う会で石川遼(左)とともに花束を贈呈した宮里藍(右)=08年12月、東京・帝国ホテル

われらが藍ちゃん・宮里藍が、久しぶりにゴルフファンの目を一身に浴びる2週間でした。長いスランプから脱した藍ちゃんは、24歳という年齢と ともに一味も二味も違ったゴルフを展開するようになりました。米女子ツアーに組み込まれているフランスでのエビアン・マスターズで米ツアー参戦4年目で初 優勝(最終日7月26日)、翌週は英国に渡っての全英リコー女子オープン(同8月2日)では2週連続で最後まで優勝を争うハイレベルな戦いをみせてくれま した。1977年全米女子プロを制した樋口久子以来、日本人2人目のメジャー制覇は成りませんでしたが、首位に4打差の3位タイは、″藍復活!〝をゴルフ ファンに強烈に印象づけるものでした。

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エビアンマスターズ優勝の勢いをそのままに全英リコーオープンのロイヤルリザム&セント・アンズGCに乗り込んだ宮里は、最終日前半で一つスコ アを伸ばし、一時は首位に並びました。インに入っても12番まで通算1アンダーで首位マシュー(英国、39歳)と肩を並べてゴールへ向かいます。日本の ファンの興奮はいやが上にも高まる展開でした。最終日のバックナインを優勝を争いながら歩く宮里藍。大詰の勝負は、しかし、マシューは強かったですね。 13番から3連続バーディーの猛チャージをみせたのです。一気に離された宮里は、17番(パー4)、攻めのゴルフに徹しましたが、ドライバーをフェアウェ イバンカーに落とし、そこから狙った第2打が深いラフにつかまる不運で痛恨のダブルボギー。ゴールがそこに見えながら藍は力尽きました。

「でもいいんです。17番もパーをとろうと攻めた結果ですから仕方ない。最後までいい緊張の中で自分を見失わなかった。課題だった1打1打に集中するゴルフができた。パッティングもずっとよかったから次につながる」
宮里は悪びれず″堂々たる敗戦〝に満足感さえ漂わせていました。宮里のメジャー挑戦はこれが19度目でした。そして3位フィニッシュは06年の 全米女子プロと並ぶメジャー自己ベスト。米ツアー参戦から4年目の開花ですが、ここまでの道のりは苦しみの年月でした。07年にはドライバーからパターま で思うようなショットができなくなる極端なスランプに落ち込みました。″小柄で飛ばない宮里藍では米ツアーはやはりダメか!?〝そんな声も米ツアーのそこ ここで聞かれたものでした。精神的にも落ち込んだ宮里は、08年、米アリゾナ州に拠点を置くメンタルコーチ、ピア・ニールソンさんに指導を仰ぎました。

今回の全英リコー女子オープンでもニールソンコーチは宮里に付き添っていました。2日目、14番でポットバンカーに入れて1回で出ず、あげくは グリーンまわりのヒース芝につかまってアイアンが振り切れず、空振り。トリプルボギーをたたいたとき、宮里は次の15番で自分がどう見えたかをニールソン コーチに聞きました。「怒っているようには見えなかったよ。すごく自信のある歩き方で、しぐさにも自信があふれてすごくよかった」と、ニールソンさんにい われたそうです。宮里はこの言葉に、自分が以前よりは気持ちの切り替えが早くできるようになったことを確信したといっています。

地獄ともいえる大スランプでは「原点を見直し、しっかりしたスイングをすることだけに集中した」という藍。そして精神面での強化につとめ、徐々 にはい上がってきたたくましさが、この2週の試合でもはっきりと読み取れました。技術的にも、ドライバーをプロ入り以来初めて替えた効果も歴然で「今年 15ヤードは伸びた」そうです。まさに米ツアー4年目にして変身したニュー宮里藍の誕生といっていいでしょう。

6年前の03年、東北高3年生だった宮里藍はアマチュアとしてプロツアーで優勝。大センセーションを巻き起こしました。いま全盛を誇っている女 子ツアーブームの先駆者となったのです。米ツアー本格参戦は06年。初年度は全米女子プロ3位などベストテン入りもたびたびでしたが、スランプが大きかっ た分だけいま復活した喜びは大きいはずです。米女子ツアー、欧州女子ツアーの共催大会であるエビアン・マスターズに勝った宮里は、規定により米女子ツアー で3年、欧州女子ツアーで10年間のシード権を獲得しました。来季は米女子ツアーのほか、欧州女子ツアーにも自由に参戦することができます。戦いの場もグ ツと広がるチャンスです。今年は7月に行われた全米女子オープンでも宮里は6位の大健闘で、米ツアー賞金ランキングも4位に浮上、1,030,900ドル を獲得しています。
まだまだ若い24歳。苦難を乗り越えた″天才少女〝藍ちゃんの、脂の乗り切ったこれからはまたまた見逃せなくなりました。8月14日開幕の日本ツアー、NEC軽井沢72出場のため、一時凱旋帰国します。