史上初、初勝利も2勝目も日本最高峰の「日本オープン」制覇という幸運児がいます。男子ゴルフの稲森佑貴(いなもり・ゆうき)26歳。そのラッキーボーイを見逃さなかったのはISPS(国際スポーツ振興協会)の半田晴久会長です。先の日本オープン優勝から間髪を置かずに「所属契約をしたい」とオファーを出し、目下フリーだった稲森も二つ返事で「OK」。このほど契約は完了しました。日本オープン優勝から1週間も経たないうちに行動した半田晴久会長の早業でした。10月中旬の日本オープンは、ベテラン谷原秀人とのし烈な優勝争いを演じた稲森が、最終日17番で追いつき、18番で劇的な逆転勝利をつかむ大一番でした。プロ2勝がともに日本オープンという快挙。稲森はこの2月には同郷(鹿児島)の中学の後輩、美穂夫人と結婚式も挙げたばかり。ゴルフでは「日本一ショットを曲げないプロ」といわれる男に、相次いで舞い込んだ幸運。生涯最高の年に「残り試合であと1勝を!」と、留まるところを知らない稲森佑貴です。
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日本オープンが終わって10日目、稲森佑貴は福島・五浦庭園CCでプレーしていました。ISPSとJGTO共催のツアー外大会「ISPS HANDA コロナに喝!!チャリティ―レギュラー・トーナメント」。これに出場した稲森のウエアには、ISPSの真新しいワッペンがつけられ「ISPS所属の稲森佑貴」お披露目の感がありました。ISPSは内外に多くのプレーヤーと所属やアンバサダー契約を交わしています。日本ではゴルフの契約プロに谷原秀人、尾崎直道、藤本佳則、井戸木鴻樹、酒井美紀(女子)ら。アンバサダー契約には尾崎将司、尾崎健夫、大山志保(女子)らと多士済々です。今回はそうそうたる契約プロの仲間に稲森佑貴が加わりました。プロにとって「所属契約」は貴重なものです。年間の契約金はじめ、ツアーを転戦する費用を支給されたり、獲得賞金の何パーセントかのボーナスが出たり、さまざまなオプション契約が存在します。所属企業のイベントに駆り出される″仕事〝は大小ありますが、海外の試合出場への推薦などもありますから、フリーの選手とは大きな差がある恵まれた環境にいられるのです。
今回の日本オープンに勝利したあと、間髪をおかずにISPSから稲森へ電話連絡がありました。びっくりしたのは稲森です。その辺りの状況を稲森は話しました。
「日本オープン明けの週に、いろいろ表敬訪問が続き出向いていました。それが終わったあと家に帰ろうとしたらISPSの事務局長から電話が入り『所属契約はどうでしょうか?』とお話しをもらいました。全然考えてもいなかったことなので、びっくりでした。『所属かアンバサダー契約かどちらかで』といわれました。僕も地元のスポンサーさんとのこともあるので、各社と連絡をとり了解をもらうまで少し時間をもらいました。で、お世話になっているところからの快諾をもらえたので、改めてISPSに連絡を入れて『所属』でお願いをしたいと返答しました。半田(晴久)会長とは今回のプロアマの表彰式のあとに少し話をし、よろしくお願いします、と挨拶だけはしました。海外へいけるチャンスももらえたら行きたいと思いますね」
突然のオファーに天にも昇る気持ちでした。 貴重なサポーターを得た稲森のツアー生活には、これからどれほど大きな支えになることか。″日本オープン2勝〝の重みは、ずしりとした付加価値を早々につけてくれたのです。
ところでISPSのワッペンを背負って戦ったこの試合。ツアー外大会なのでいろいろスイングチェックもしながらプレーしたようです。日本オープン以来、スタンス幅が知らず知らずのうちに狭くなっていたのに気がつき、その修正などに時間をかけたそうです。稲森の特徴は「日本一曲がらない男」といわれるように、飛ばすことよりもフェアウェイキープ率は常に1、2を争う安定ゴルフが売り物です。
ISPSが「コロナに喝!!」と設定してくれたこの大会。ホスト選手となった稲森は3日間のうち2日は60台で回りましたが、通算9アンダーで優勝した比嘉一貴には6打差の7位タイに終わりました。男子ツアーの方は新型コロナ禍の大波を受けて今季は試合が少なく、残り試合も多くてあと3大会。賞金王は来季と2シーズン統合した形で算出するので長い1シーズンになりますが、目下の賞金ランクは1位。今季の残り試合は賞金額の大きいものばかり。その中でもう1勝できれば、稲森にとっては「生涯最高」におまけまでつける1年となります。男子ツアートップグループにのし上がってきた幸運児の締めくくりに注目です。
(了)