日本ヒューレット・パッカード(hP)、見上げた眼力!愛らしいルックスで人気急上昇・有村智恵

今季3勝。愛らしいルックで人気上昇の有村智恵。賞金ランクも3位へ。
今季3勝。愛らしいルックで人気上昇の有村智恵。賞金ランクも3位へ。

さくらでもない、美保でもない、桃子でもない21歳が、国内女子ツアー早くも今季3勝を挙げてまわりをアッといわせています。有村知恵。生まれは火の国・熊本。宮里藍を慕って宮城・東北高へゴルフ留学。06年のプロテストは2位に7打差をつけてトップ合格した4年目の隠れ実力者です。先週軽井沢72で行われたNEC軽井沢72で米国帰りの宮里藍、上田桃子はじめ、賞金ランク1位にいた横峯さくらを抑え、3日間首位を守り通しての完全V。今季はクリスタルガイザー(5月)、スタンレー(7月)に続く3勝(通算4勝目)で獲得賞金は一気に7342万8400円に跳ね上がって賞金女王をさえ狙える位置に登ってきました。159㌢、57㌔の小柄で愛らしい女の子の、どこいそんなパワーが潜んでいるのでしょうか。それを見越して昨年、所属契約を結んだ“世界”のIT企業「日本ヒューレット・パッカード社」の眼力は見上げたものです!

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真夏8月の軽井沢でやる女子ツアーは毎年人気です。今年は米ツアー初勝利を引っさげて凱旋帰国した宮里藍や同じ米国帰りの上田桃子らの登場とあって軽井沢は大フィバー 、初日から6956人のギャラリーが集まりました。そんな中で、有村は初日宮里藍と同組で回り、いきなり”主役”を奪ったのです。6バーディー、ノーボギーで初日から単独トップ。2日目は飛ばし屋の三塚優子に並ばれたりしましたが、最終18番で6メートルのバーディーパットを読みきって入れ、単独トップを守りました。そして優勝が目の前にちらつく最終日も、追い上げてくる三塚や諸見里しのぶを振り切って69とスコアを伸ばして10アンダー。2位には2打差をつけての逃げ切り完全Vはお見事。「気持ちで負けたらスコアで絶対勝てないと、この4年間で学んだ」という有村は、強気なマイゴルフに徹し、実力をみせつけました。強くなったから勝てるのでしょうが、すでに今季2勝している気持ちの余裕も、そここに見えました。

熊本で生まれ育ち、当時九州学院中に在学していた有村が、遠く離れた宮城県の東北高への進学を決めたのは、2年上の宮里藍の活躍を見たからでした。憧れの先輩を慕って東北高に入学したとき(03年)、藍は3年生になっていました。その藍の背中を見ながら練習を重ねました。3年生になって主将に指名され、最後の全国高校選手権の団体戦を逆転優勝に導きました。高校生活では個人タイトルはとれなかった分、まだ知名度は低かったのですが、卒業した06年の7月に受けたプロテストで、史上最多となった2位に7打差をつけてのトップ合格を果たして18歳・有村智恵の名が世に出たといっていいでしょう。

コンパクトなスイングでステディなショットを放つ有村智恵。
コンパクトなスイングでステディなショットを放つ有村智恵。

プロになって4年目ですが、智恵はよく泣きました。プロテストトップ合格で泣き、与えられた11試合のレギュラーツアー出場で、狙ったシード権がとれずに泣きじゃくりました。しかし、秋のQT3位に入って07年の出場権をゲット。2月に右足首じん帯を断裂する大けがで出遅れながらも、7月に初Vのチャンスが訪れたスタンレーレディスでは、最終ラウンドが台風接近で中止となり上田桃子、有村智恵、横峯さくら3人によるプレーオフだけが行われました。その最後で上田桃子より短い2メートルにつけたバーディーパットを決められず、敗れて大粒の涙を流しました。この年、賞金ランクは13位でシード権を獲得。08年は6月末、プロミスレディスで2位に5打差をつけるプロ初勝利を挙げてまた大泣きでしたが、この1勝してからは、有村のゴルフは一段階段を上がったようでした。ショットが安定し、苦しんでも粘り強く踏みこたえるメンタル面での成長も目立ちました。今年は5月にクリスタルガイザーでプロ2勝目を挙げると、そこからは15試合で9試合はトップテンに入る安定感をみせています。2週前には初めてのメジャー、全英女子オープンで予選落ち。帰国後、前週のアクサレデイスはプレーオフで敗れ、その屈辱を、すぐ翌週に晴らすあたりはしぶとい選手になりました。今季はこれまで19試合、フル出場。その間海外3試合もこなすなどタフな21歳。いや、愛らしいルックスで人気も急上昇中の女子プロです。

クラブとボール、シューズはブリヂストン。ウエアは、どこかにハートマークをあしらっているVIVA HEARTとそれぞれ使用契約。加えて08年2月にはパソコン、プリンターのメーカーとして有名なIT企業「日本ヒューレット・パッカード」と所属 契約を結んでいます。06年のプロテストでトップ合格したあたりから所属契約を打診する企業も3社、4社と増え、その中からIBMを抜いて“世界一”ともいわれる“hP”でおなじみの日本ヒューレット・パッカードを選んだあたりは、なかなかの国際派でもあります。 “hP”の所属選手となった昨年に初優勝。そのあとも一気に4勝まで勝ち星を重ねてきたのですから“hP”の喜びもひとしおです。1年ごとの契約でしたが、今年はすんなりと2年目に入っています。多くの面でサポートをしてもらえる「所属契約」は、プロゴルファーにとって貴重なものです。勝てば会社からそれなりのボーナスも用意されるのは常識です。大企業の支援を受けてツアーを戦う有村智恵には、ここにも大きな後ろ盾があるといっていいでしょう。

★・・期待が高まってきた有村。賞金ランキングでも3位に浮上。横峯を抜いて1位の諸見里しのぶに880万6800円と迫っています。女子プロ王国・熊本出身には平瀬真由美、不動裕理、上田桃子、古閑美保と4人の賞金女王がいますが、有村智恵が5人目のクイーンとなれますかどうか。今季3勝を挙げているのは目下有村のほか諸見里、横峯の3人。レースはやっと後半戦に入ったばかり。女王になるには当然賞金1億円を超えなければならないでしょうから、これからは1戦1戦、ビッグでシビアな戦いが展開されるでしょう。