予選会通過ラインに1打足りずに迎えた最終18番。泣くも笑うも、もうこの1打しかない崖っぷちでした。カップまで約8㍍。外せば敗退だった馬場咲希が強気に打ったバーディーパットは、スライスラインに乗って奇跡のようにカップに消えました。176㌢、長身の馬場が小さくこぶしを握りしめてガッツポーズでした。瞬間、涙がこぼれ落ちたという。これで当確圏内の通算6アンダー「24位タイ」。悲願の米ツアーカードを滑り込みでつかみとったのです。19年「全米女子アマ選手権」で日本人2人目の優勝。高校3年で昨秋国内プロテスト一発合格。挑戦した米ツアーQスクール(予選会)は62位。今季は主戦場となった米下部ツアでー年間ポイント18位で2度目の予選会出場でした。今年の最終予選会は米アラバマ州マグノリアグローブで12月5~9日の5日間行われ、悪天候続きの中、3R65位までが5日目の最終Rに進み、「24位タイ」までが来季出場権をゲット。7人が出場した日本勢は山下美夢有(23)がトップ合格したのに続き、馬場咲希まで計5人が来季の米ツアー出場権を獲得しました。
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山下美夢有を筆頭に岩井千怜(ちさと)、岩井明愛(あきえ)、吉田優利に加え馬場咲希と5人が米ツアーへの新たなスタートラインに立ちましたが、すでにライセンスを持っている古江彩佳、畑岡奈紗、勝みなみ、渋野日向子、笹生優花、西村優菜、西郷真央に新鋭・竹田麗央、と史上最多の総勢13人が海を渡ります。
中でも劇的な合格を果たした馬場咲希。長い苦労の末の切符でした。この1年。振りかえっても楽しかったことは殆どないという。日本のプロテストに一発合格しながら国内のゴルフツアーを蹴って米国にこだわったのです。国内でのツアーで実績を残してから米ツアーに出ていく人が多い中で、馬場は違いました。いきなり米ツアー挑戦を全面に出しての行動でした、スポンサーの「サントリー」の幹部らからは「どんどんおやりなさい。やってみなはれ」と、止めるどころか背中を押してもらった経緯があります。「許してくれている方々には本当に感謝しています。コーチを含めサポートしてくれている周囲には頭が下がるという。
下部ツアーは大会があってもギャラリーはまずいない。コースのメンテナンスも上のツアーに比べれば雲泥の差があるし、選手に対するサービスにも大差があるのが常といわれています。1部のLPGAに昇格できる道幅はごく狭いもの。そうしたさまざまなハンデも乗り越えていかなくてはならないのが下部ツアー。今季下部ツアーを本拠とした馬場も2位で優勝を逃がした惜しい試合がありましたが、ポイントで及ばず、レギュラーツアー昇格は成りませんでした。
今回の大会最終日。悪天候による順延で最終ラウンドは9番の2打目から再開という状況でした。21位で出た馬場はいきなり2㍍につけたが、カップにけられてバーディーならず。10番でも2㍍が入らず。11番パー3は1.5㍍をミスし、返しの80㌢もカップに蹴られるという悪循環。それでも13番パー5でやっとバーディーで取返したのに15番をまた落とし、ボーダーランに1打足りない苦しい状況で迎えた最終18番でした。
「打ってはいけないボギーを打つ。しんどくて辛かった。今年はそんなのが多かった」(馬場)。2年連続の予選会(昨年62位。今季24位)。「今年は辛いことばかりだった。」一つのボギーで気持ちが揺らいでしまう。立て直せず次の試合に引きずってしまた。厳しい1年でしたけど、LPGAに行きたいという気持ちを持ち続けてたことが、最後まで諦めずにプレーできたのだと思う。何回も心が折れかけたけど、最後まで諦めずに最後にいいバーディーをとれてよかった。今回のQTは、ホントにいい経験を与えてくれました」
今回、90ホールの過酷な戦いを終えた馬場咲希。来季は米女子ツアーが戦場です。素晴らしいショット力。勝負の8㍍をねじ込んだパット力。誰にも勝るスターの雰囲気。米ツアーにこだわった馬場咲希の本領を、来季こそは見たいものでです。
(了)