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練習はウソをつかない!パットの名手を支えた練習の虫・鈴木愛(23)

柔らかい体でフルショットする鈴木愛。

愛ちゃん、会心の笑顔がはじけました。宮里藍が引退した年に、もう一人の「アイ」が日本勢4年ぶりの賞金女王とメルセデス最優秀選手賞(3年シード)2冠を勝ちとりました。女子ツアー最終戦のツアー選手権リコー杯(宮崎CC)で鈴木愛(23)が通算5アンダーの7位となり、今季獲得賞金を1億4012万円として自身初の賞金女王です。日本人の女王は、2013年の森田理香子以来のこと。韓国などの外国勢に圧倒され続けた国内ツアーに久々のクサビを打ち込みました。大会はテレサ・ルー(30、台湾)が2バーディー、ノーボギーの70で回り、15アンダーで今季ツアー4勝目の通算16勝。賞金2500万円を獲得。国内メジャー4勝目の強さをみせました。

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最終戦まで分からなかった女王争い。鈴木愛が賞金レーストップに立ってはいましたが、キム・ハヌル、イ・ミニョン、申ジエの韓国勢3人が逆転女王の可能性を残しての最終戦。
愛ちゃんには大きなプレッシャーがかかってくる″宮崎の決戦〝でした。バーディーがゼロだった2日目の夜には不眠に襲われ、3日目の夜にはスマホで″集中力がアップする食べ物〝を検索、「チョコ、コーヒー、豆類」であることを知り「最終日はチョコをしっかり食べて、エネルギー不足にもならなかったし、集中力も1日保てた」(愛)と、これで最終日を乗り越えました。食事面ではサラダなどの生野菜が苦手で、バランスよく摂らないといけないと、好きな鍋料理で野菜をたっぷり入れて栄養を補給しているそうです。

ショットのキレは抜群。初の賞金女王に輝いた鈴木愛。
ショットのキレは抜群。初の賞金女王に輝いた鈴木愛。

そんなプレッシャーで迎えた最終日。5、6番で連続バーディー。パー5の13番でもバーディーがきてボギーなしのゴルフを続けました。相手の順位に関係なく、6位以内に自分が入れば無条件で女王に手が届く計算は分かっていました。日頃なれない高麗グリーンの上、距離もたっぷりの難コースです。冷たい雨も降り始めて、シビアな最終戦でした。3日目まで、得意なはずのパターが思うように入らず、最終日を迎えて通算2アンダーの13位。イライラが募ってはいましたが、よく耐えました。順位をひとケタにまで上げて最終18番を迎えます。追ってくる韓国勢に勢いがなく、最終ホールダブルボギーでも女王を逃がすことはありませんでしたが、セカンドは、傾斜の中腹にあるグリーンに向かって打ち上げていくタフなホールです。鈴木は3打目でカップの下5㍍。受けグリーンのこの18番。傾斜と強い芝目で選手を悩ませました。真下からのラインは助かりました。5㍍を強気に打ったボールは、カップの向こう側に当たってから沈むほどの強さでした。鈴木らしいナイスパーフィニッシュ。

「賞金女王はもちろん気にしていましたけど、実はメルセデスランキング(最優秀選手賞)の方も狙っていて、ここをパーで終われば、ハヌルさんを抜いて、もしかしたらチャンスがあるかも知れないと思ったんです。やっぱり最後はボギーじゃなくて、パーで上がりたかった。逆目だったので、とにかくカップをオーバーしないといけないと思って打ったら、少し強かったのでちょっとびっくりしました。でも最後のパーパットの1打がすごく大きかったですね」

練習の虫はパットだけでなく安定したショットにも表れる鈴木愛。
練習の虫はパットだけでなく安定したショットにも表れる鈴木愛。

このパーパットを入れたことで、鈴木のメルセデスポイントが500.5。ハヌルが499.5で僅か1ポイント差で鈴木が上回り、3年シードに賞金500万円、ベンツ車両などのメルセデス最優秀選手賞を手にしたのですから、貴重で執念のパーパットでした。

鈴木愛といえば、パットの名手で知られています。この3年間、3位(15年)、1位(16年)、2位(17年)と平均パット数はとップ3を外していません。今季は申ジエに微差で逆転されましたが、1.7582での2位(申ジエ 1.7537)。「今年は申ジエさんに抜かれて悔しいですけど、賞金女王とメルセデス賞をとったので・・。来年は1位だけじゃなくて1.75台だったので目標は1.73~1.72をまで上げたいと思ってます」。練習量の多さ、練習グリーンにいる長さでは、鈴木の右に出るものはいないといわれる練習の虫。昔は練習はあまり好きじゃなかった人で、目の前に試合がないとやらないというタイプだったとか。「練習する時間と携帯で動画を見てる時間が同じくらいだった。さすがにもっと練習しなさいと言われて最近は練習をするようになった。強くなるには、やっぱり練習量。勝つには運なんかもあるけど、とにかく練習して勝てなかったときはしょうがないと思う。こうやって練習してきたら、年間で賞金女王とかがくることにもなったので、練習量だけは韓国選手に負けないようにと思っています」

平均ストロークも70.7447で日本人最高の4位にランクされている鈴木愛。
平均ストロークも70.7447で日本人最高の4位にランクされている鈴木愛。

まさに練習の鬼・鈴木愛。日本勢としては4年ぶりの賞金女王ですが「韓国勢ばかりが勝つので、日本ツアーなのにこれじゃいけないと思う。ギャラリーからも″日本人、頑張れ〝と言われることがあるので、とにかくやれることをやることですね」と。今年5月ごろ左ひざを痛め、練習量を減らしましたが、「練習しないと自分の力を引き出せない」と、また練習の虫を復活させたら調子が上がってきたそうです。1回の練習で300球は打ちますが、オフシーズンなどは、もっと球数も多く打ち「最後は10球打って5回、いいショットが出るまで練習は終わらないようにしている」とか。

毎年、オフは米アリゾナで自主キャンプを張り、米男子ツアーのフェニックスオープンを観戦するという。今年もこの試合で松山英樹の優勝を見ました。「松山選手は、すごく上手なストレート系のフェードを打つ。私が思い描いている球なので、それを真似したいと参考にしています。ゆっくりしたスイングリズムも参考にしてからパーオン率がよくなった」と、旺盛な研究意欲もみせる愛ちゃんです。

1億4012万2631円を稼いで賞金女王に輝いた23歳・鈴木愛。
1億4012万2631円を稼いで賞金女王に輝いた23歳・鈴木愛。

来年は追われる立場。「プレッシャーを感じる中で成績を残せれば本物」と自覚しています。今季は優勝こそ2回だですが、トップ10には16回入っている抜群の安定感が鈴木愛の強さです。徳島出身ですが、ゴルフ部を新設した鳥取の倉吉北高に進学。家族も徳島から引っ越し、父は同高のゴルフ部コーチに就任。母は同高の食堂で働くなど一家を挙げて愛をサポートしました。13年8月のプロテストに合格。14年には日本女子プロ選手権のメジャーで初優勝して一躍名を挙げました。いまでは母が運転する自家用車でトーナメントを追っかける熱の入れよう。愛も「母や姉の励ましはパワーになる」と、家族との絆も愛を支える大きな力です。通算5勝。23歳で賞金女王となった来季からのゴルフに注目が集まります。

(了)