タイからのもう一人の″刺客〝、タワン・ウィラチャン(52)が日本シニアツアーで大暴れです。国内シニアツアーも大詰め、富士フィルムシニア選手権(茨城・江戸崎CC)で3日間とも60台で回ったウィラチャンが、2位を6打引き離す通算16アンダーの大会記録で圧勝。9月のコマツ・オープンで僚友・マークセン(53)をプレーオフで破ったのに続き今季2勝目。日本シニアツアー参戦2年目で早くも通算3勝目。4年連続シニア賞金王に挑んでいる″鬼〝のマークセンを49万3953円差に追い詰め、初のシニア賞金王へ大きく前進です。シニアツアーは残り2試合。レギュラーツアーを優先するマークセンはシニア残り2試合には出場しない予定で、ウィラチャンの逆転初キングが有力になってきました。(この試合、マークセンは4位)
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今季のシニア賞金王争いはマークセン、ウィラチャンのタイ勢2人に絞られました。シニア、レギュラー両ツアーをかけもち出場しているマークセンは、このあと賞金の高い三井住友VISA太平洋とダンロップフェニックスのレギュラーに出場するため、重複するシニアの残り2試合は欠場します。従ってマークセンの今季のシニア出場は富士フィルムで終了。マークセンの今季のシニアは12試合に出場して優勝2回、トップテンは10回という圧倒的な強さで、獲得賞金は4697万8478円。4年連続の賞金王も確定かと思われました。
そこへシーズン後半からグングン迫ってきたのが、同じタイの仲間ウィラチャン。9月のコマツをPOでマークセンに勝ってから日本シニアOP2位、セヴンヒルズ5位、日本プロシニア2位・・と毎試合のように優勝争いを続けてマークセンを急追。ついに賞金レースでも約50万円差の2位に追い詰めてきました。
富士フィルムシニアは初日を68で2位発進。2日目にはボギーなしの64で回り、2位に4打差をつけて首位に浮上。長身を生かした独特の縦振りスイング。距離は出るし大きな曲がりはみせません。それにも増して巧みなのがアプローチとパット。スキをみせない安定度の高いゴルフを身につけています。今回の試合では、ドライバーをルール適合の検査に出したため、急きょコース近くの中古ゴルフ店で購入した1万4000円のドライバーで次々とナイスショットを連発していました。あまり神経は使わないタイプなのかもしれません。この試合、日本勢では6打差の2位に鈴木亨が入りました。
☆逆転シニア賞金王が見えてきたウィラチャンの優勝コメント
「今週はいいプレーができてうれしい。特に目標を立てずに1ショット、1ショットに集中した。ドライバーは今週初めて使うものでシャフトもチェンジしたりした。練習場で10球だけ打った。パターも替えたのにそれらがかみ合ったのは運がよかった。下と差があったので、フェアウェイに置くこととグリーンに乗せることだけを意識してやった。マークセンさんは尊敬してるけど、トシは変わらないし友達って感じ。いいライバルでもあり、いい友人でもあります。日本ではいろいろ教えてもらって大先輩です。(獲得賞金が約50万円差になって)結果をみてマークセンさん、あと2試合出てくるんじゃないかな(笑)」
タイ・バンコク出身で12歳からゴルフを始め87年にプロ転向。主にアジアツアーで戦いアジアンツアー18勝。2度の賞金王に輝いています。欧州ツアーにも顔を出し1勝。18年から日本シニアツアーに参戦。昨季はKBCシニアOPで日本初V。今季は日本PGAのプロテストも受験して合格。来季からは日本のツアー選手として戦いますが「将来もずっと日本でプレーしたい」(ウィラチャン)という。マークセンとは15歳のころから知り合いだそうですが、いまや日本シニアでその先輩を追い越しそうな勢いです。
ウィラチャンの日本での活躍はタイでも大きく報道されて″有名人〝になっているそうですが、日本での次戦はエリートグリップシニアOP(15日から兵庫・鳴尾GC)。最終戦はISPSハンダカップ・フィランスロピーシニア(19日から埼玉・鳩山)。この2試合で10位以内に入れば逆転賞金王が確定的となります。鉄人・マークセンさえ脅かすタイ勢力の台頭に、日本のシニアゴルフ界は戦々恐々ー。
(了)