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久常涼、“サンデー・バックナイン”の5バーディーで「欧州ツアー」制覇!海外志向の怪物が早くも覚醒!優勝賞金ビッグな8100万円超!

「欧州ツアー」本格参戦1年目で早くも初勝利。はじける笑顔で優勝カップを抱く久常涼。(フランス・オープン)

今季から欧州ゴルフツアー(DPワールド)を主戦場にしている21歳、プロ3年目の久常涼(ひさつね・りょう)が、どえらいことをやりました。欧州ツアー「フランス・オープン」(9.21~24=仏サンカンタンアンイブリーヌのル・ゴルフナショナル、パー71)で、最終日4打差5位から出て「66」をマーク。後続に2打差をつける大逆転劇を演じました。日本人が欧州ツアーで勝ったのは青木功、松山英樹に次いで3人目で優勝賞金8144万円(51万8780ユーロ)のビッグマネーを獲得。世界ランクも166位から101位へ急上昇。来年のパリ五輪会場が決まっているコースで見せた久常らしい派手なパフォーマンスでしたが、来週10月12日開幕の「日本オープン」(茨木CC・西コース)で国内凱旋出場の予定です。

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久常涼のショット。

最終日、サンデー・バックナインを文字通り“勝負の9ホール”とした久常のゴルフはカッコよすぎました。まず9番のパー5を着実にとったのが始まりで、10番に折り返して7.5mを沈めます。12、13番は1mにつく得意のアイアンが冴えて連続バーディー。15番(パー4)も3mを沈め、単独トップに躍り出ます。16番でグリーン奥に外してピンチを招きますが、ここもしぶとくパーをキープ。17番(パー4)はまたピン2mを入れ、最後10mの長いパットを残した18番の窮地も着実に2パットのパーでフィニッシュしました。完ぺきなゴルフをしたバックナイン、9ホールだけで5つ伸ばす大チャージ。逆に2位に2打差をつける優勝ゴルフで、日本パワーを世界にみせつけました。

スコア提出所で後続組のテレビを見ながら「プレーオフの準備もー」と、落ち着かない久常でしたが、その必要もありませんでした。オフィシャルから優勝を告げられ、インタビューにのぞんだ久常は英語で応じたのもいい度胸でした。
「現実とは思えない。勝てるとは思っていなかった。だけど、いま私は勝った!バディーをとろうと結果は気にせず、リーダーボードは見ないで、ゴー、ゴーとアグレッシブにいった。難関もあったが、自信をもって打つことを心がけた。たくさんの幸運があって、パットが入ってくれた。ベリーパッピ―!」
堂々とした優勝スピーチは、さすが久常でした。欧州やアジアンツアーにはたびたび出向いている25歳の金谷拓実も、21歳久常の欧州ツアー1勝には驚きを隠せませんでした。自分も今年2月にはアジアンツアー「インタナショナルシリーズ・オマーン」で勝っているだけに、その苦労はよく理解できるのでしょう。「本当に素晴らしい。これからがまた楽しみ」と賞賛しきりでした。

300ヤード超の飛距離とアイアンのうまさが武器の久常涼(提供:JGTO)

渋野日向子と同じ岡山・作陽高の出身で、しぶこの4つ下の久常涼。岡山県津山市出身。津山東中3で日本ジュニア12~14歳の部で圧勝。作陽高では1年時に全国高校選手権で優勝。ナショナルチーム入り。高校3年の20年12ロ転向。21年からプロとして本格活動。その21年は日本の下部ツアー(ABEMA)で3勝。3勝目の最終日は、1打差の2位で最終18番(パー4)へ。その土壇場でバンカーを挟んだピンまで20ヤード余りを直接放り込む奇跡の逆転イーグルを演じた爆弾男。高校時代から300ヤード超の飛ばし屋で「思い切りのいいショットが武器。度胸もいい若者」と、当時から評判をとっていた涼です。22年の国内ツアーは未勝利ながら、出場7試合すべて予選を通過。初シード(賞金ランク24位)を獲得しています。22年11月に欧州ツアーを志し、トライした欧州QT(出場予選会)を7位で通過、今季からの欧州ツアー本格参戦を果した1年目でした。

 

「フランスオ-プン」に快勝。笑顔が明るい21歳・久常涼。

 

久常の今季は、日本ツアー、春先の2試合に出場し、23位(東建ホームメイト)と予選落ち(ISPS欧州・日本どっちが勝つかトーナメント)でしたが、プロ転向当初から海外志向で「いずれは米ツアーでプレーしたい。その思いが、すべてにいい結果へと集中させてくれる」(久常)と、早々と海外へ飛び出した男です。昨秋、11月に行われた欧州ツアー開幕戦、豪州ツアー共催の「豪州PGA選手権」で2位に入る大健闘。その後は南ア、UAE、ケニア、イタリア、英国、アイルランドなど世界各国で20数試合を転戦。トップ10入りも数回記録する好成績で、ついに今回の「フランス・オープン」優勝につなげました。

 

 

 

 

 

久常涼が「欧州ツアー」を転戦して一番頼れるのは、世界を飛び歩いている川村昌弘プロだとか。もう5年も「欧州ツアー」のシード選手の川村。今回の久常の優勝も「川村先輩のおかげ」(久常)という。

『欧州ツアー』は、世界最高峰の米ツアーに次ぐ規模で、欧州を中心にアジアやアフリカ、米国でも開催。2022年からUAEの港湾管理会社「DPワールド」が命名権を取得。「DPワールドツアー」と名称を変えています。今季は26ヵ国で36大会以上を予定し、賞金の世界ランク加算ポイントは米ツアーの次にランクされます。年間ポイント10位以内には来季の米ツアー出場資格が与えられます。久常は今回の勝利でポイント11位に浮上しましたが、上位10人には米ツアーの権利をすでに持つ選手が4人いるため、事実上7番手に繰り上がって“圏内”です。従って来季の久常涼は、米ツアーにも登場ということになるでしょう。「欧州ツアー」には今季、出場権を持つ川村昌弘はじめ、昨季の日本ツアー賞金ランク1~3位の資格で比嘉一貴、星野陸也、岩崎亜久竜が参戦しています。

いま日本ツアーでは中島啓太が獲得賞金1億円超で賞金ランク1位を走り、蝉川泰果、平田憲聖らが初勝利を挙げるなど、2002年生まれの新世代が男子ツアーを引っ張っていますが、久常はさらに2年下の2002年生まれの超新世代。24年パリ五輪のゴルフ開催コースでの今回の快挙は、久常の来年のオリンピック出場への夢実現にもつながりそうです。

(了)