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泣いた”若大将”池田勇太! 耐えて勝った輪厚の陣

大接戦を制して念願の輪厚(ANAオープン)でのV。うれしい優勝カップを掲げる池田勇太(札幌GC輪厚コース=ANAオープン)=写真提供:日本ゴルフツアー機構
大接戦を制して念願の輪厚(ANAオープン)でのV。うれしい優勝カップを掲げる池田勇太(札幌GC輪厚コース=ANAオープン)=写真提供:日本ゴルフツアー機構

 軟派の代表が石川遼なら、硬派の若大将を自認する池田勇太(24)が、人目もはばからず涙のTVインタビューを受けました。ANAオープンの最終日(19日=札幌GC輪厚コース)、韓国の若武者二人(J・チョイ、金度勲)に追い上げられて1打差を守るのに冷や汗ものの大詰め。最終ホール、相手がバーディーパットをミスしてくれたおかげでプレーオフを免れての逃げ切り優勝でした。ジャンボ尾崎を慕う池田勇太ですが、ジャンボが7勝を挙げているANAオープンには”自分も輪厚で勝ちたい”と特別な思い入れがあったのです。接戦をものにした安堵感と、手ごわい輪厚で勝てた感激とが入り混じった男の涙でした。今季、トーシン(7月)に続いて2勝目。通算6勝目で賞金ランキングも5位に引き上げる貴重な1勝でもありました。
 
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 ”札幌GC輪厚コース”-プロゴルファーの誰もが憧れる名門コースの一つです。コース設計の第一人者、井上誠一氏が、北海道で初めて手がけた難コースです。白樺などの木々でセパレートされた林間コースですが、この地は”風の通り道”といわれる厄介な風が、終始吹き抜けています。その強い風と、7000ヤードを超える距離。フェアウェイ、グリーンとも粘っこいベント芝。快速グリーンにも手を焼きます。1973年以来の、ANAオープンの開催コースですが(途中3度だけ、同じ札幌GCの由仁コースで開催)、ジャンボ尾崎は輪厚で7度の優勝を誇っていて”輪厚の帝王”とさえいわれました。
 
 「ジャンボさんが強かった輪厚で勝てた。ここで勝たないとツアープロの仲間入りした気がしなかった。やっと一人前になった気がします」-池田は、輪厚で勝てた1勝には特別な思いがあったことを明かし、TVアナウンサーの問いかけに一瞬言葉を詰まらせ、顔をくしゃくしゃにして涙ぐみました。「オレ、勝って泣いたのは初めてですが、それほど輪厚で勝つのは難しかったし、うれしいんです」
 昨年6月、日本プロゴルフ選手権でプロ初優勝、”プロ日本一”になったときの感激以上のものがある、というのですから、池田のこの試合への思い入れがいかに大きかったかが分かります。
 

今年は体の故障もなく勝負強いショットを随所にみせた池田勇太のショット(ANAオープン=輪厚)=写真提供:日本ゴルフツアー機構
今年は体の故障もなく勝負強いショットを随所にみせた池田勇太のショット(ANAオープン=輪厚)=写真提供:日本ゴルフツアー機構

 最後まで苦しかった試合でもありました。3日目に首位に立ち、最終日は2打差をつけてスタート。12番までにスコアを5つも伸ばしたのに、韓国勢の追撃は急でした。中でもJ・チョイ(韓国生まれの米国籍)のバーディーラッシュで、池田は5つ伸ばしてもリードは1打に減っていました。後半になると、バーディーチャンスのパットが入らなくなりました。”輪厚名物”ともいわれる左曲がりの17番(パー5)。ドライバーを置き、ユーティリティの2番で確実にフェアウェイをキープ。同じユーティリティ2番で林越えにカットしていく戦法をとり、3日目に続いて2オンに成功しました。しかし、ロングパットをショートして3パットのパーに終わり、2位以下を突き放すことができません。1打差のまま最終18番という緊張度もピークに達する大詰でした。
 18番。セカンドショットはピンへ真っ直ぐでしたが、アドレナリンが出たようなショットで3段グリーンの奥、10メートルに2オンです。輪厚の18番グリーンはピンより上の乗せたら地獄、というのは定説です。下りの、とてつもなく速いパットになって寄りません。1打差で追ってくるJ・チョイはピン左、2メートル弱にピタリつけました。もし、池田が3パット(ボギー)でチョイが入れる(バーディー)と、一気に逆転です。
 10メートルの池田の下りのパットは、心臓が止まるような1打だったでしょう。パターフェースでボールにそっと触る程度のタッチでした。それでもスルスルと下ったボールは、右にそれながらもカップ横1メートル弱で止まりました。最高のパットでしょう。バーディー確実と思われたチョイは、2メートル弱のパットをなんと外しました。負けはなくてもプレーオフはほぼ間違いないと思われた場面は一変しました。池田は1メートル弱を慎重に読んで真ん中から入れました。1打差を守り抜いたのです。
 
 この幕切れでは涙も出るでしょう。昨年の池田は石川遼と賞金王争いを演じながら、終盤に手首や腰痛が出て無念の失速でした。今年はその二の舞は厳禁です。契約した福田努トレーナーを全試合に帯同させて体のケアを最重点を置いています。今年の池田は海外遠征も増えて、世界の4大メジャーはじめこれまで11試合の海外遠征をこなしています。国内もANAで11試合となり、すでに計22試合に出場。昨季の計23戦に匹敵する試合数を消化していますが、海外遠征疲れはあったものの、体の故障とは無縁のシーズンを過ごしています。
 
 この1勝(2勝目)で賞金ランキング1位の石川遼追撃の体勢が整いました。石川との差は1194万円です。あと1勝すればひっくり返るところまで接近しました。石川とのマッチレースのような展開で敗れた昨季(賞金ランク2位)のリベンジは、当然頭にあるでしょう。4つ年上の勇太が、遼を超える日はそう遠くはないかも知れません。