中嶋常幸や室田淳のシニアの先輩から「金さん、早くアメリカに行ってよ!」とやんわりと追い出し?をかけられていた韓国の金鍾徳(キム・ジョンドク)がまた勝ちました!国内シニアツアーの第6戦、皇潤カップ日本プロシニア(兵庫・ジャパンメモリアルGC)のメジャーで、圧倒的な強さをみせて日本勢を寄せつけませんでした。今年50歳を迎えてシニア入り。8月、2試合目のファンケルで早々とシニア1勝目を挙げたと思うと、6試合目にもう2勝目。6戦中5試合はトップテンという安定したゴルフで“韓流の強さ”を見せつけています。賞金王レースでも2886万円を稼いで独走態勢ー。11月の米シニアのチャンピオンズツアー最終予選会挑戦が決まり、ホッとしているのは日本勢?!
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同じ週、女子ツアーではまたアン・ソンジュ(韓国)が今季4勝目を挙げて2年連続賞金女王への足場を固めました。男子では、昨年の金庚泰(キム・キョンテ)に続き裵相文(ベ・サン・ムン=韓国)が、石川遼らを抑えて賞金レースをリードしています。LPGAレジェンズ選手権があった女子シニアでは高又順(コー・ウスン=韓国)が逆転優勝です。どちらを向いても韓流ばかり。その韓流パワー、今度は国内シニアにも勢力を伸ばしてきました。ファンケルクラシックでは16アンダーの大会新記録で完全優勝した金鍾徳(キム・ジョンドク)が、日本プロシニアで追いすがる三好隆らを突き放し、14番でもう2位以下に5打差をつける圧勝でした。
賞金がそう高くないシニアツアーでは高額賞金のファンケル(1,500万円)と日本プロシニア(1,000万円)をとって賞金ランキングは悠々のトップ独走。シニアツアーはあと2試合なので、シニア1年目の金鍾徳が韓国人としては初のシニアの王者になりそうです。
175センチ、64キロの小柄で細身の金が飛ばすのです。レギュラー時代、一緒に回ったジャンボ尾崎を金がアウトドライブし、ジャンボを慌てさせたエピソードも残っています。そのレギュラーでは4勝の実績があります。シニアになったいまも、金の飛距離は衰えを知りません。「平均で285ヤードくらい」(金)という長打力は、国内シニアではトップクラス。日本プロシニアでも最終日、551ヤードのパー5(14番)でドライバー、3Wで楽に2オンさせ決定的なバーディーを奪いました。飛べばバーディーチャンスも増えます。日本プロシニアでも4日間で21バーディーを奪い、今季の通算バーディー数も「82」で、ダントツの1位を走っています。
細身の金がどうしてこうも飛ぶのでしょう? 金に直接聞いてみたら言われました!!
「練習してるからね。日本人も1日仕事で8時間は働くでしょ。僕もゴルフが仕事だから、8時間は毎日練習してるよ」ーさらりと言ってのけた一言は、日本のシニアにはズシリと効いたのではないでしょうか。
これほど飛べばたまには曲がりもします。最終日、一緒に回って優勝争いをした三好隆は「とにかくよく飛ばすね。でも、ときどきドライバーが曲がるのでそこがつけ込むスキなんだけどね。飛ばすだけでなく、アプローチもパターもうまい。(金と)戦える感じはあるんだけど、自分がミスして走らせてしまう。あの試合も勝たせちゃいかんかった!」
悔しさを滲ませながらも、結局は金にハットオフでした。
前週、韓国のシニアツアーに勝って再来日した金は、2週連続での優勝。2週後には韓国のシニアオープンがありますが、10月27日からは日本シニアオープンが広島CC八本松コースで開催されます。本命視される金が勝って2大メジャーをとるようなことになったら、日本選手の顔は丸つぶれです。日本プロシニアに勝って、来年の全英シニアオープンの出場権も得た金は、11月14日から米シニア、チャンピオンズツアーの最終予選会(QT)=に挑戦します。多分上位で通過するでしょうから、来年は米国中心に海外を主戦場として戦うことになるでしょう。
金は韓国で化粧品会社を友人と共同で経営していますが、2人の息子がいて長男(25)は昨年日本の賞金王になった金庚泰(キム・キョンテ)と大学で同期生。次男(22)はプロゴルフを目指して研修生をしています。
金プロは2人の息子についてこんなことをいっていました。
「男の子というのは、この年になるとダメですね! 父親のいうことは、横を向いて聞きません。同じことを他人が言えば“そうですか”と耳を傾けるのに、父親の言葉は聞こうとしない。もうほっておくんです」と。
これほどゴルフでは強い父親も、息子にはお手上げ?というのは傑作です。
「日本のメジャーに勝てて本当にうれしい。今年はドライバーからアイアンとパットもいい。レギュラー時代と感覚は違うけど、ゴルフをするのが楽しい。日本のシニアの人、今年は調子が悪いですね。倉本(昌弘)さんも肩と背中を痛めて苦しんでいるようですし・・」ー。
そんなことをいわれた日本のシニア選手もふがいないですが、“鬼の金鍾徳”が来年は米国に行くのに本音でホッとしているのは、やはり日本のシニア連でしょう。