またまた10代旋風です。2週前のKKT杯バンテリン・レディスで15歳のアマチュア、勝みなみ(鹿児島高1年)が、最年少優勝で世間をアッといわせたばかりですが、今度はサイバーエージェント・レディス(5月2~4日、千葉・鶴舞西コース)では10代のアマチュア2人が、2日目そろって優勝に王手をかけ、最終日はアマチュア2人が最終組で優勝を争うという史上初の出来事がありました。結果は、一ノ瀬優希(25)が最終18番でチップインイーグルを出して9アンダーで逆転優勝。プロの意地をみせましたが、2打差の単独2位には17歳の森田遥(香川・高松中央高3年)、もう一人の堀琴音(18=兵庫・滝川二高卒)は、4位タイに
入る″大ハプニング〝。6位には永井花奈(かな、16=東京・日出高2年)が続き、10位以内にアマ3人が入ったのは、88年ツアー制度施行後、初めてという異常事態!です。 これにとどまらず、ヤング女子アマはまだまだ後に続いていて、大きな波の襲来に見舞われている日本の女子ゴルフ界は、一大転機を迎えそうな勢いです。
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勝みなみに続いて、今季2人目のマチュア優勝が現実となるのかと、多くの人が身を乗り出すほどでした。2日間ともすべて60台で回った森田遥と堀琴音のアマ2人が、2日目を終わって8アンダーでトップを分けました。最終日は二人が最終組で、韓国の強豪、1打差の申ジエとの大勝負です。その申が7、8番で連続ボギーをたたく予想外の事態で、森田、堀が8番を終わって二人トップで走ります。堀が9番でダブルボギー。10番もボギーにして脱落しますが、森田は前半で一つ落としながらも単独トップで後半へターンしました。11番。花道からの20ヤードのアプローチが、同組、堀のマークに当たってラインが変わり、そのままカップインするラッキーな チップインバーディーもきて、トップの
座を固めたかに見えました。ところが12番パー3で左に曲げてボギーとしたところで、スタート時に2打差をつけていた伏兵・一ノ瀬に通算7アンダーで並ばれました。続くパー5の13番も森田は2㍍のパーパットを外す連続ボギーで、一転して首位から陥落。一組前を回る一ノ瀬が最終18番(パー5)で、残り33ヤードのアプローチを沈める奇跡的なイーグルフィニッシュで、とどめを刺されました。
一組後ろまで達する一ノ瀬への大歓声を聞いた森田は「誰かがイーグルをとったなと思った」と振り返りましたが、一ノ瀬とは3打差となって18番グリーンへ。1㍍強につけた最後のバーディーパットをしっかり沈めて単独2位。森田は最後まで堂々と優勝争いを演じました。3月のヨコハマタイヤPRGRレディスでは、大詰16番で1㍍のバーディーパットを外して1打差3位に泣いた森田です。その時も優勝は一ノ瀬優希。今回も同じ″刺客〝一ノ瀬の逆転イーグルに遭遇したのは、不思議な″縁〝です。
ドライバーの飛距離は240ヤードほどですが、「得意なのはパット」と言い切るいい度胸の持ち主。昨年の日本女子アマでは、中3の松原由美との決勝36ホール。1ダウンで迎えた36ホール目。外せば負けの1・5㍍のバーディーパットを沈めて土壇場で追いつき、延長1ホール目、カラーからの約5㍍をねじ込むバーディーで逆転優勝。前年決勝で比嘉真美子に敗れたリベンジを果たす力強い女子アマチャンプ・森田でした。両親は中国人で卓球選手。遥は香川生まれの香川育ち。体は細めの高校生ですが、話す言葉はズバズバと強気そのもの。
68で回ってトップタイに立った2日目。大勢の報道陣に囲まれて質問攻め。「18番のバーディーパット?(外してパー)1.5㍍。すごい読みにくいラインで難しかった。きのうもきょうも上がりが悪いので、イマイチぱっとしないです」。同じ組で回った飛ばし屋渡辺彩香(あやか)については「渡辺さん、すごく飛びますね。叩かれたら血が出そうな感じ。狙うところが違うので・・」と、独
特の表現でライバルを評したかと思うと、最終日・最終組について聞かれると「特になにもないです。きょうも最終組だったので、日にちが変わるだけ。最終日だと何か雰囲気とか違います?」と、並み居る報道陣を見やる″飛んでる高校生〝です。
最終日、一時は単独トップに立ちながら12、13番の連続ボギーで″逸勝〝した森田遥のコメント
「1日目、2日目とすごくいい位置できてて、最終日スコアを伸ばせなかったのが残念です。オーバーパーで回ってしまって・・。やっぱり最終組ということもあって雰囲気も締まっていて、私も締まっていました・・。2番のボギーでちょっと力んでいるのいが分かったので、そこからは気をつけました。(ガッツポーズもあった?)結構ガッツパーが多かったですね(笑い)。今日はやたらゴルフが長かった。疲れました。11番、いいチップインがあったのに、そのあとのボギー2つはちょっともっ
たいなかったです。13番(パー5でボギー)のサードショットは、右サイドのフェアウェイから55ヤード。フォローだったので、止まりにくいと思いながら打ったらショートして、グリーンにも届かなくて・・。最後の方にいくにつれて、勝ちたい気持ちがなくはなかったので、悔しいです。2日目まではセカンドショットもいいイメージが出ていたのにきょうは力む傾向がすごく多かった。それでアプローチが寄らず、パーオンが少なかった。(高校生がプロの中で力を発揮できているのは?)ゴルフを続けてきた経験と、身近に支えてくれる方々がいて、自分のしたい練習ができる環境を作ってくれているから・・。私は世界で戦えるトッププレーヤーになりたいです。次週(ワールドレディス)は2週連続は初めてで、4日間なので体はシンドイと思うけど、メジャーなので海外からくる選手の姿もみて吸収できるところは吸収して、自分なりにいいゴルフができたらいいです」
最終組でアマ2人と回った申ジエは73と伸びずに3打差の3位に終わりましたが「少し緊張してしまった。(アマ2人の)怖いもの知らずのプレーは、見ていて、いい刺激になった。日本の未来を担っていく若い子たちで楽しみ」と、話していますが、確かに賞金はもらえないアマチュアのゴルフは、ある意味で″ノープレッシャー〝 で攻めていけるところはあるでしょう。それが若者の魅力でもあるのですが、それなりの実力がなければここまでは戦えません。
宮里藍や石川遼が10代のアマチュアでプロツアーを制し、カッコよく戦績を残していったのが、今のジュニアのゴルフ熱に火をつけたといっていいでしょう。特に頑張り屋の多い女子に顕著なものがあります。アマチュアを統括する日本ゴルフ協会(JGA)が育成してきたナショナルチームの訓練も大きな成果が表れています。昨今、プロと渡り合って負けていないゴルフを披露するジュニアたちは、ほとんどがナショナルチームを通ってきた連中です。さまざまな経験、合同合宿、海外遠征などでの訓練を経て、グングンと腕を上げてきます。もちろんクラブやボールの進化も見逃せませんが、スイングの精度も素晴らしいものがあります。
2週前のKKT杯バンテリンで15歳で優勝した勝みなみは、今回は大変な騒々しさの中で1打差で予選通過がなりませんでしたが、
いま女子プロツアーを脅かしている若手女子軍団は多士済々です。
ざっと挙げても、
今回最終日最終組で回った堀琴音(18)。13年の日本ジュニア(15~17歳の部)優勝。13年全国高校選手権(春季)2位。昨季ツアー2勝を挙げて名を売った堀奈津佳の妹。姉妹プロを目指しています。
松原由美(15)。大阪学院大高1年。13年の日本女子アマ2位。13年日本ジュニア(12~14歳の部)2連覇。
柏原明日架(18)。宮崎・日章学園高卒。13年全国高校選手権・春夏連覇。14年アクサレディス4位。
藤田光里(19)。北海道・飛鳥未来高13年卒。北海道女子アマ5連覇。13年プロテスト合格。新人戦加賀電子カップ優勝。最終予選会1位通過。14年、ヤマハレディス17位タイ。スタジオアリス5位タイ。KKT杯バンテリン18位タイ。フジサンケイ18位タイ。
保坂真由(18)。埼玉・栄高卒。12年日本女子アマベスト8。13年フジサンケイレディス、14年ヤマハレディス、ローアマ。
永井花奈(かな、16)東京・日出高2年 。13年関東女子アマ優勝。日本女子アマ8位。勝みなみとはJGAのナショナルチーム仲間。14年フジサンケイでは初日68で2位発進しながら、2日目81を叩いて予選落ち。
10代は終わっても、まだまだピチピチした女子プロが数多く控えています。3月のアクサレディス、最終日最終18番。ピンまで20ヤードを前日に続く2日連続で直接入れた″逆転サヨナラチップインイーグル〝で初優勝を飾ったプロ3年目の渡辺彩香(あやか)20歳。172㌢の長身を生かし、男子プロ顔負けの飛距離を出すプロ3年生。森田遥が「渡辺さん、飛びますね。叩かれたら血が出そう!」と、表現した″飛ばし屋〝です。今回のサイバーエージェントでも7位タイに入って早くも賞金ランク4位。「あの飛距離は大きな武器。またすぐ勝ちますよ」(LPGA・小林浩美会長)とのお墨付きももらっている不気味な20歳です。
賞金ランク14位にいる福田真未。福岡・沖学園高出身の21歳。今季8戦中、4戦でトップ10に入っている注目株。シード経験はなく、今季もQT26位の資格で出場。開幕2、3戦目で連続初日首位発進して一躍脚光を浴びました。バンテリンでは最終日、最終組を初体験。勝みなみに優勝はさらわれましたが、通算5アンダーで6位タイでした。2010年にJGAナショナルチームのメンバーとして世界アマに出場。チームメートだった比嘉真美子、堀奈津佳は、昨季ともに2勝を挙げてブレーク。一人取り残された福田は、このオフはタイガー・ウッズらの映像を参考にして、課題だったアプローチを猛特訓。ウェッジに自信がついてきたことでショットの精度も上がったそうです。
いま、ニッポンの女子プロゴルフ界はまさに″王国〝です。総試合数も昨季より1試合増えて37試合。賞金総額も32億5000万円。史上最高額です。この魅力あるツアーを狙って、プロを目指す金の卵たちは、多く、またどんどん若返っています。すでに実績を挙げている中堅どころも、もうおちおちしていられません。2016年からゴルフが正式種目になるオリンピックも夢見るジュニアたち。目標意識も高く、まさに「恐るべしアマチュア」(小林浩美会長)ですー。