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★ドライバーを捨て「3W」に託したコースマネージメント!「第2の故郷」三島で勝てたショットメーカー・堀川未来夢(29)

2つの優勝カップを前にガッツポーズの堀川未来夢。ツアー3勝中2勝がメジャーVだ(日本プロ=グランフィールズCC)=写真提供:PGA

堀川未来夢(みくむ=29)「日本プロゴルフ選手権」のビッグタイトルを制覇!ツアー3勝目でメジャー2勝の快挙! 国内男子ツアーは5週間の“夏の空白”が明け、8月4日から「日本プロ」で再開。堀川が静岡・三島の丘陵コース「グランフィールズCC」を制しました。このコース近くには日大ゴルフ部の合宿所があり、部員は練習ラウンドやキャディーなどで世話になっており、日大出身の堀川も4年間を過ごした熟知したコースでした。2日目にトップに立ったあとは、曲がると危険なホールではドライバーを“封印”して3番ウッド(3W)を多用。徹底したコースマネージメントを展開して勝ち取った通算15アンダーでした。ボールを崖下のラフに落としたホール(最終日3番)では、応援観戦に来ていた日大ゴルフ部員たち総出の“捜索”でロストボールを免れる一幕もあり、堀川は「第2の故郷」で追ってきた片岡尚之、吉田泰基、嘉数光倫らを振り切り2位に3打差をつけて逃げ切る“劇的”なメジャー制覇でした。

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日大時代から知り尽くした三島・グランフィールズCC。3Wのスリークォータースイングで難コースを制覇した(日本プロ)

日大カラー、お揃いのピンクのTシャツ姿の後輩たち十数人が必死になって崖下のラフに沈んだボールを探しました。最終日、2位に3打差をつけてトップを走る堀川がスタートして3ホール目のパー4。嘉数の1、2番連続バーディーであっという間に1打差に迫られていた状況。3Wでティショットした堀川のボールは大きく右に曲がって林の崖下へ。深いラフの中でロストボールの危険もあったとき、いったんは発見したボールが違うもので“誤球”寸前で大慌て。さらに捜索したゴルフ部後輩たちが「ありました」と見つけたのは、堀川が使用する「ブリヂストン製」のボールでした。しかし、グリーン方向へは狙えず、いったん崖上のラフに出し、そこからの第3打(105ヤード)をカップ1㍍につけて奇跡のようなパーセーブを果たしました。

大ピンチを凌いだこのホールを境に、流れが一変しました。堀川は5番、7番でバーディーで再び2位に5打差をつけます。14番のパー3でグリーン奥からの寄せに失敗、ダブルボギーもありましたが、16番ではグリーンエッジラフから5~6㍍の下りスライスラインを読み切って決定的なバーディーを奪いました。終盤に入ってからは池や林でフェアウェイが狭められたホールは徹底して第1打に3Wを選びました。しかもフルショットはせず、スリークォーターのフォローで止める安全度の高いショットでフェアウェイキープに徹しました。

バンザイの堀川未来夢を真ん中に、熱烈応援で先輩を支えた日大ゴルフ部の学生たち(静岡・グランフィールズCC)

堀川はスプーン(3W)の打ち方を2種類持っているそうです。フルショットでドローボール系が出るのは270ヤード飛びますが危険度も高いという。もう一つは、アイアンに近い打ち方でラインを出し、フェードボール系で250ヤードほどの飛距離という。この日は、スタート直後の3番ホールで強い打ち方の3Wで“逆球”が出て失敗したため、「この打ち方は封印した」(堀川)という。2日目には打ち下ろしで右に池があるパー4でも、ドライバーを右に曲げて池に入れた失敗があり、3日目からはこのホールも3W。「緊張した場面でも安心な機械的な方のスイングで通した」堀川の素早い決断が、奏功したのです。

「グランフィールズは隅から隅まで知っているコース。ティーショットが結構難しい。距離はそう長くないけど、フェアウェイを外すと深いラフや林、崖がある。OBもあるのでティーショットがキーになる。少しでも危険な匂いを感じたらレイアップです」(堀川)。最終日、ドライバーを使ったのは6ホールだけ。緊張が高まるバックナインに入ってからは「10番は5番ウッド。12番、15番も3Wでした」。さらに大詰めの17番は長いパー5(650ヤード)ですが、ここでも3W、UTのスリークォータースイングで攻め、最終18番(パー4、397ヤード)も3Wを握り、徹底してドライバーは使わないゴルフで締めくくりました。

ギャラリーに囲まれた静岡三島・グランフィールズCC 18番ホール(提供:PGA)

「昔から使っている(スプーンの)2つのスイング」を着実に実践した堀川のコースマネージメントが、光彩を放ちました。飛ばすだけに頼らず、頭脳的なゴルフをよしとするショットメーカー・みくむ(未来夢)の勝利でした。

神奈川県出身。プロ9年目。厚木北高から日大。「関東アマ」などに優勝。プロでは2019年、「日本ゴルフツアー選手権」で初日から首位を譲らずプロ初優勝。昨21年秋には「カシオワールドOP」でプロ2勝目を挙げ、20~21年の賞金ランクは7位。今季はこの優勝で賞金ランクは44位から7位にジャンプアップしました。5年間のシードを獲得「海外にも行きたい。アジアンツアーにも出てQT(予選会)にもトライしたい」と、30歳を目前(12月16日)にして花開いたゴルフ人生の夢を膨らませています。男子ゴルフに新しいタイプのスター登場です。

(了)