フランス・パリでの第33回オリンピックが始まりました。各国の選手団が街中を流れるセーヌ川をそれぞれの船に乗って進んだ開会式は壮観。全32競技329種目が8月11日まで17日間の日程で展開されますが、ゴルフ競技は8月1日(木)から男子、7日(水)から女子がそれぞれ4日間の日程。予選カットなしの72ホールストロークプレーでメダルを争います。出場選手は世界ランキングが基準となり、国際ゴルフ連盟が7月8日付で各国の出場選手を発表しました。日本代表は東京五輪から2大会連続となる松山英樹と初出場の中島啓太。女子は笹生優花と山下美夢有。各国の出場人数は、世界ランク15位以内なら最大4人。16位以下の場合は最大2人。笹生は東京五輪にフィリピン代表として出場したあと日本国籍を取得。重国籍者は22歳になるまでに国籍の選択をする必要がある日本の国籍法に対応。今回は日本からの出場となったものです。6月の「全米女子オ―プン」で大会2勝目を飾っての出場で、彼女のメダル獲得への期待が高まっています。
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五輪ゴルフの出場選手は男女それぞれ60人。男女とも4日間72ホールの個人戦ストロークプレーで予選カットはありません。1位、2位、3位に金、銀、銅のメダルが授与されます(複数の選手が並んだ場合はプレーオフ)。今回の日本女子は笹生優花と山下美夢有に決まりましたが、代表選手への“選考レース”は最後まで激烈でした。締め切り間際の「全米女子プロ選手権」(6月23日最終日)で2位に食い込んだ山下美夢有(22)が、世界ランク22位から19位にランクアップ。20位のままだった古江彩佳(24)と、やや調子を落としていた畑岡奈紗(25)を逆転で抜いて笹生との“2人代表”を勝ちとったのです。その後、7月中旬になって古江彩佳がメジャー第4戦の「エビアン選手権」に優勝する快挙。世界ランキングは前週21位から日本勢最上位の8位に浮上しましたが、期限切れでパリ五輪出場は逃がす結果となりました。「メジャーに勝ってありえないくらいうれしいです。パリ五輪はダメでしたが、また1試合1試合頑張って今年2勝目を挙げたいです」と、気を取り直す古江はけなげでした。
逆に、“ラストゲーム”でメジャー2位に入り五輪出場権を獲得した山下美夢有は「オリンピックは特別な大会でなかなか出られないと思うので、すごく嬉しい気持ち。優花と二人で日本代表として頑張る。いいコンディション作りをして試合に臨みたい」と、笹生と組んでの五輪初出場へ意気込みを語っています。五輪のゴルフ競技は2016年リオデジャネイロ五輪で112年ぶりに復活し、21年の東京五輪(霞ヶ関CC)では稲見萠寧が世界ランキング1位の実力者ネリー・コルダ(米国)には1打及ばなかったものの、リディア・コ(ニュージーランド)との銀メダルをかけたプレーオフを制し日本人初のメダル(銀)をゲットした大殊勲が記憶に新しい。それに続くパリ五輪出場です。フランスでの開催コースは「ル・ゴルフ・ナショナル」(女子のパー72)。金メダリストには8月の「AIG女子オープン」(全英女子)。25年のメジャー4試合の出場権を付与されるほか、世界ランクの高額ポイントを与えられます。笹生・山下実力者コンビの一発大勝負が楽しみです。
一方男子は、2大会連続の松山英樹と初出場の中島啓太の2人。東京五輪では銅メダルをかけたプレーオフで敗れた松山がリベンジをかけます。世界NO1のスコッティ・シェフラー(米)のほか、東京五輪の金メダリストで今季は「全米プロ」「全英オープン」などメジャー2勝のザンダー・シャウフェレ(米)ら、4人枠をもつ米国は全員世界ランク10位以内に名を連ねている強力布陣です。ロリー・マキロイは今回もアイルランド代表として出場。東京五輪では松山と同じく銅メダルを争うプレーオフに敗れており、その雪辱を期して臨みます。開催国フランスからは、1月の米ツアー「ファーマーズインシュランスOP」で優勝したマチュー・パボンが地元の利を生かして狙っています。会場の「ル・ゴルフ・ナショナル」(男子のパー、71)は欧州ツアー「フランスOP」の会場でもあり、昨23年10月には久常涼がこのコースで優勝を遂げています。
五輪出場を待ちわびていた松山英樹は6月「全米オープン」6位のあと、欧州に飛んで7月に「スコットランドOP」予選落ち。次の週「全英オープン」では予選は通過したものの連日70台のゴルフで、トータル12オーバー、66位に終わっています。手首にはテーピングを巻いてのプレーでやや不安を感じさせますが「最近アイアンがずっと悪いので練習しないと・・。それとやはりパッティングが問題」と、最終調整に時間をさいています。4年に1回。国を代表して主に2人しか出場しない五輪ですから力が入ります。
初出場の中島啓太は欧州での試合を続けていますが、「スコットランドOP」「全英OP」と連続して予選落ち。「全英」では2日間で17オーバー、150位での予選カットで「応援してくれている人にたいして情けない、だらしない結果になってしまった」と大反省。6月上旬に右足裏を痛めて日本で休養。それも気になるところだが、昨年は日本ツアーの賞金王。今年は3月に「ヒーローインディアンOP」で欧州ツアー初優勝と力をつけてきた中島です。来季は米ツアー昇格を目指して欧州ツアーの年間ポイントアップを狙っています。「日本代表に選んでいただいたのだから、自覚をもって恥ずかしくないプレーをしたい」と、日の丸を背負って戦う4日間に新たな思いを集中させています。日本勢の奮闘を待ちましょう。
【パリ五輪ゴルフ、主な代表《男子》】
《男子》
米国(スコッティ・シエフラー。ザンダ―・シャウフェレ。ウィンダム・クラーク。コリン・モリカワ)
英国(トミー・フリートウッド。マシュー・フィッツパトリック)
アイルランド(ロリー・マキロイ。シェーン・ローリー)
オーストラリア(ジェィソン・デイ。ミンウ・リー)
スペイン(ジョン・ラーム。ダビド・プイグ)
フランス(マチュー・パボン。ビクトル・ペレス)
韓国(トム・キム。アン・ピョンフン)
日本 (松山英樹。中島啓太)
《女子》
米国(ネリー・コルダ。リリア・ウ。ローズ・チャン)
英国(チャーリー・ハル。ジョージア・ホール)
オーストラリア(ハンナ・グリーン。ミンジ―・リー)
フランス(セリーヌ・ブティエ。ペリーネ・デラクール)
ニュージーランド(リディア・コ)
タイ(アタヤ・ティティクル。パティ・タバタナキット)
韓国(コ・ジンヨン。エイミー・ヤン。キム・ヒョージュ)
日本(笹生優花。山下美夢有)
(了)