“ミキティー”悲願の日本女子アマNO1を手中に。挑戦6年目の正直!

6年目の挑戦で悲願の日本女子アマチャンピオンになり優勝カップを抱く酒井美紀。(ツキサップGC)=写真提供:日本ゴルフ協会=
6年目の挑戦で悲願の日本女子アマチャンピオンになり優勝カップを抱く酒井美紀。(ツキサップGC)=写真提供:日本ゴルフ協会=

 ”うわさの大物”酒井美紀(19)が、ついに日本女子アマチュアNO1の座を勝ちとりました。2010年日本女子アマチュア選手権が6月22日から5日間、北海道・札幌市のツキサップゴルフクラブで行われ、酒井は決勝の36ホール・マッチプレーも史上最年少優勝を狙った宮崎市立東大宮中3年の柏原明日架(14)を接戦の末1アップで破り、悲願の初優勝を果たしました。2週間前、全日本パブリックアマに優勝したばかりの美紀ちゃんですが、6年連続出場した日本女子アマのラストチャンスに見事”日本一”を手にしたのです。感涙にむせんだのもむりもありませんが、このビッグタイトルを背に、7月末のプロテスト(7・27~29 千葉・キングフィールズGC)で一発合格を目指す”ミキティー”です。
 
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 まるでゴルフ劇画のようなストーリーです。主人公はもちろん酒井美紀。福島・いわき市出身。この春、東日本国際大学付属昌平高を卒業、早くから志していたプロゴルファーを夢見て、アマチュア最後の年をゴルフ三昧(ざんまい)に過ごしてきました。東北女子アマチュア選手権で優勝、6月には全日本女子パブリックアマチュア選手権優勝。プロツアーにも推薦等で出場し、フジサンケイレディス20位(ローアマチュア)、先週のニチレイレディス39位(ローアマチュア)と、すべて予選を通過するなど、アマチュア最後のシーズンを順調に調子を上げていました。
 

恵まれた頑健な足腰でビッグドライブを飛ばす酒井美紀。左はキャディーを務めた姉・美香さん(北海道・ツキサップGC)=写真提供:日本ゴルフ協会=
恵まれた頑健な足腰でビッグドライブを飛ばす酒井美紀。左はキャディーを務めた姉・美香さん(北海道・ツキサップGC)=写真提供:日本ゴルフ協会=

 ”ミキティー”の今年の目標は、いままで勝てなかった「日本女子アマ優勝」と、初めて挑戦する「プロテスト合格」の2つです。その最初のターゲット、日本女子アマの決勝ラウンドは、まず荒井舞を19Hで下し、比嘉真美子(3アンド2)、青木瀬令奈(3アンド2)、土岐香織(3アンド1)と連破して14歳柏原との決勝戦へと勝ち上がりました。3年前、07年高1の日本女子アマでは、決勝戦で今年プロルーキーとして健闘している綾田紘子に1アップで敗れ、悔し涙を流しました。それに次ぐ2度目の決勝戦進出です。
 前半は、2ホール連続ダウンを喫するなど苦しいスタートで、14歳柏原のペースで試合は展開しました。後半も2ダウンで迎えた29番ホール。ここで酒井は”流れを変えなくちゃあ・・”と考えました。「疲れを吹き飛ばしてやろうと思い、歩くテンポをスピードアップし、もやもやしていたドライバーも、シャフトが折れそうになるぐらい思い切って振ってやりました」。

今年徹底的に練習したアプローチが冴えた。ラフからリカバーする酒井美紀。(ツキサップGC)=写真提供:日本ゴルフ協会=
今年徹底的に練習したアプローチが冴えた。ラフからリカバーする酒井美紀。(ツキサップGC)=写真提供:日本ゴルフ協会=

 そうすると会心の弾道でドライバーも飛び始め、先に飛ばされていた柏原のドライバーも逆にアウトドライブする変わりようです。歩くスピードを変えたことで、何かが自分に戻っていることを実感しました。このホールを取り、ここからさらに3ホール連続アップして(4連続)一気に逆転です。2アップで残り2ホールとなったドーミーホールの35ホール目。第2打がグリーンオーバーしてボギーとし、柏原に一つ返されます。きわどい勝負になった最終の36ホール目。パー5の3打目、グリーン手前からのチップが「きょう最高のアプローチだった」(酒井)と、ピンそば30センチにつきました。グリーン奥のラフに第2打を打ち込んでいた飛ばし屋の柏原は、チップインイーグルを狙ってきましたが、僅かにカップ脇を通り過ぎ、両者バーディーで分けて酒井の1アップ勝利が決まりました。
 
 「柏原さんは飛ぶし、小技も上手でした。私は前半、リズムがおかしくてドライバーも右にフケてばかり。おまけにアプローチまで距離感が合わなくて・・。どうなるんだろうとちょっと焦りました。でもこれが最後の日本女子アマなので、絶対に勝ちたかった。尊敬する麻子さん(藤本麻子=昨年の日本女子アマチャンピオン)の次に自分の名前を優勝カップに刻みたかった」
 
 念願がかなった”ミキティー”は、涙ながらに感激の優勝を語りました。尊敬する藤本麻子からは大会直前に「ミキティー、自分のゴルフをすれば今年は勝てるよ!」のメールが届きました。マッチプレー進出を決めた夜には再び「これからは体力勝負。疲れるだろうがそれを顔や体に出しちゃダメ!」と、2度目のメールが酒井のもとに届いたそうです。リードされても再度のメールを思い出しながら、酒井は心を落ち着けたのでした。
 酒井が尊敬する先輩・藤本麻子(20)は岡山・作陽高出身。昨年プロテスト一発合格、QT25位。アマチュアのタイトル総なめで、06年からJGAナショナルチームで活躍してきた新鋭です。プロルーキーイヤーの今年は、初優勝こそまだですが、すでに2000万円弱を稼いでシード権は確実にしています。
 
 酒井は、小2のときからいわき市内でゴルフ練習場を営む父・正孝さん(56)に教わりながらゴルフを始めました。姉の美香さん(26)もプロゴルファーを目指してかつては研修生をやり、プロテストも2度挑戦したゴルフ通です。いまでは自身の女子プロはあきらめ、ミキティーのマネジャー的存在で常に付き添っている心の支えです。時にはキャディーもやり、今回のツキサップでもキャディーバッグをかつぎ妹の”アマ日本一”へのカゲの力となりました。父親・正孝さんによれば「美紀は特別練習好きでもないが、とにかくカンがいい。雨とか風の中での距離もカンで打つ。ここ数年、1年1年精神的に成長したのが大きい」という。
 今春高校を卒業してからの練習では、苦手だったアプローチの練習を徹底的にやり、それが試合で効果を出しているようです。頑丈な足腰を土台に、ダイナミックなドライバーが本来のミキティーの売り物ですが、小技を磨いた成果が実ったともいえるでしょう。7月のプロテストの”目玉”として注目を浴びそうです。