“若大将”池田勇太、トーシン社長へ恩返しの今季1勝! 「勇太・遼・俊輔」トリオの全英オープンは?

「僕の原点」というトーシン・レイクウッドGCで今季初Vの優勝カップを抱く池田勇太(トーシントーナメント)=写真提供:日本ゴルフツアー機構
「僕の原点」というトーシン・レイクウッドGCで今季初Vの優勝カップを抱く池田勇太(トーシントーナメント)=写真提供:日本ゴルフツアー機構

 3タックのパンツで有名なゴルフ界の”若大将”が、今季新たに誕生したトーシントーナメントで初代チャンピオンになりました。池田勇太(24)。プロ4年目、今季自身国内7試合目で早々挙げた1勝(通算5勝目)は、今シーズンの大暴れを予感させるものがあります。好敵手の石川遼が全英オープンのため一足先に渡欧した”鬼のいぬ間”でしたが、代わって立ちふさがってきたルーキー・薗田俊輔(20)の追撃を押さえ込んでの快勝。大学出の先輩の意地をみせましたが、今年はマスターズ(29位)、全米オープン(58位)と世界の舞台も踏んできた”若大将”のゴルフは一段と凄みを増したようです。下部ツアー時代世話になったトーシン・石田信文社長への”恩返し”の優勝でもありましたが、男子ツアーは「勇太・遼・俊輔」の三つ巴の時代到来を告げています。
 
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 爆発力のある池田の一人舞台になるかと思われました。新しく誕生したトーシンですが、3日間は梅雨空に閉じ込められて、サスペンデッドが2日も続き、2日目は36ホールをプレーする過酷な大会でした。3日目もたたきつけるような雨で開始が遅れ、暗闇の最終9番グリーンには照明が当てられる中、池田は午後7時1分にホールアウトするありさま。そんな悪条件下でこの日9バーディー、1ボギーの64をたたき出し、前日3位から単独首位に立ったのでした。2位薗田には4打差をつけての最終日決戦。その薗田は前週のミズノよみうりでプロ5戦目で初優勝。勢いに乗って2週連続優勝を狙って虎視眈々でした。
 

昨年痛めた右手甲も腰もOK!快調なドライバーショットを放つ池田勇太(トーシン・レイクウッドGC)=写真提供:日本ゴルフツアー機構
昨年痛めた右手甲も腰もOK!快調なドライバーショットを放つ池田勇太(トーシン・レイクウッドGC)=写真提供:日本ゴルフツアー機構

 3日目と最終日は連日池田と薗田は同組でした。3日目は池田の猛チャージをみせつけられた薗田も負けていません。2日目には自身も同じ64を出していて「僕も同じスコアで回ってますから・・」と、最終日の勇太に挑戦状でした。「4打差」で逃げる4歳年上の勇太をどこまで苦しめられるか俊輔。遼はいなくても、この大会、最大の見せ場が最終日に用意されました。
 「この状況では逃げ切りの自信は全然あるよ」と、豪語していた勇太が、最終日フタをあけると、まず2番でグリーンを外して寄せられずにボギー。3番はグリーンエッジからの3打目が「風に戻された」(池田)と、2段グリーン上段まで上りきらず、スロープを逆戻りするなどでダブルボギーです。いきなり2ホールで3ストローク落としたのですから最悪のスタートでした。「今日は勝てないんじゃないか」(池田)と、不安が頭をよぎったのも不思議ではなかったですが、追っかける俊輔にいまひとつ迫力がみられなかったのが、池田にはラッキーでした。
 
 強風が吹いた最終日ですが、池田には落としてもすぐ取り返す復元力がありました。3つ落としたあと、すぐ4番で2メートルにつけてバーディー。6番では2.5メートルを入れて素早く2つ返したのは、さすが世界のトップ舞台を踏んできた強さでした。9番のボギーにもすぐ10番で3メートルのフックラインを読みきってバーディーで切り返しました。12番、ボギーとした勇太に対してバーディーとした俊輔。一気に2つ縮めて1打差に追い詰めました。立ち上がりに続いて、ここが勇太最大のピンチでしたが、どうしたのでしょう。俊輔は続く13、14番を連続ボギーです。これでは勇太は楽です。俊輔にもう追い詰める粘りはなく、勇太は16番で3メートルの難しい下りフックを決めて4打差とし、勝負は決まりました。
 
 優勝スピーチで池田はいいました「ここは僕にとってスタートの場所。原点なんです。そこでの新しいトーナメントで初代チャンピオンは気持ちがいい。誇りに思います」
 
 トーシンは今年レギュラーツアーへ初登場しましたが、これまでは下部ツアーのチャレンジ競技「トーシンチャレンジ」を開催していました。2年前、2008年9月に同じトーシンレイクウッドGCで行われた「トーシンチャレンジ」では、池田勇太は初日トップ、2日目(最終日)2位になったことがあります。そのときに主催のトーシン石田信文社長と知り合い、翌2009年1年間は「トーシン」とスポンサー契約を交わした間柄なのです。いわば石田社長への恩返しができた初代チャンピオンです。
 
 昨年は4勝を挙げ、最後まで石川遼と賞金王を争いました(2位)が、終盤は腰や右手甲を痛め辛い思いをしました。今年は福田努トレーナーと二人三脚で体調を万全にしながらツアーを戦っています。春先からの米国遠征は8試合。くたくたになった体もようやく疲れがとれてきたようです。2週後には今年3つ目のメジャー、全英オープン(セント・アンドリュース)が待っています。これには石川遼、薗田俊輔はじめ10人の日本選手が出場します。昨年の全英オープン(ターンベリー)は予選落ちでしたが、今年の勇太は違うでしょう。
 「コースが違うから、行ってみなくちゃ分からない」と、いつもと変わらないセリフですが「あぁ・・、セント・アンドリュースだから、記念写真はいっぱい撮ってくるかな」。 若くして”演歌”を演じる池田勇太。「勇太・遼・俊輔」トリオが同じ世界のメジャー舞台で戦う全英オープンは、7月15日~18日です。