憧れは今田竜二!冷静なゴルフで日本アマチャンピオンになった阿部裕樹(21)日大ゴルフ部主将。

平成22年度のアマチュアゴルフ"日本一"になり、感激の優勝トロフィーを抱く21歳・阿部裕樹(日大主将)=愛媛・愛媛GC(写真提供:日本ゴルフ協会)
平成22年度のアマチュアゴルフ"日本一"になり、感激の優勝トロフィーを抱く21歳・阿部裕樹(日大主将)=愛媛・愛媛GC(写真提供:日本ゴルフ協会)

 平成22年度のアマチュアゴルフNO1に日大4年生の阿部裕樹(21)が決まりました。7月10日に最終日を迎えた第95回日本アマチュアゴルフ選手権(愛媛・愛媛GC)で、阿部は、中部アマ2位の権藤紘太(21)を10アンド8という大差で下して初優勝を果たしました。36ホールマッチプレーの最終日、午前の9ホールで早くも4アップを奪い、18ホールで5アップ。後半も阿部ペースで進み、28ホール目のドーミーホールで早々と勝負がつきました。10アンド8は00年にマッチプレー方式が復活して以来、最大差の圧勝。日大ゴルフ部主将を務める阿部の会心の勝利でした。
 
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 阿部は栃木県出身。祖母佐依子さん(66)の影響で8歳からゴルフを始めました。ジュニア時代もさしたる戦績はありません。08年に国体で優勝、09年関東アマ5位くらいのキャリアでしたが、日大3年の昨年になって日本学生2位、関東アマ3位とがぜん頭角を現しました。そして今年初出場の日本アマ。144人が出場した中で、2日目までのストロークプレーでは、イーブンパーまでが42人という大混戦。阿部は2日目で5アンダー(68、71)とし、4位で楽々と決勝32人によるマッチプレー(3日間)に進みました。
 
 順調に勝ち進んだ決勝36ホールの相手は、中部アマ2位の権藤。朝スタートの1番で、権藤がいきなり1メートル弱のパーパットを外しました。阿部にはラッキーな立ち上がりです。2番でも同じようなショートパットをミスする権藤。アウト終盤でもまた短いパットに嫌われた権藤はすっかりペースを失いました。ハーフで4アップ。最初の18ホールで阿部が失ったのは13番だけ。5アップで午前の部が終わりました。
 

今年のアマチュア王者となった阿部裕樹のドライバショット=愛媛・愛媛GC(写真提供:日本ゴルフ協会)
今年のアマチュア王者となった阿部裕樹のドライバショット=愛媛・愛媛GC(写真提供:日本ゴルフ協会)

 阿部は「どんなに差がついても、アップはないものだと思って自分のペースを守ってこうと思った」と、心を引き締めての午後の部でした。阿部のピンチといえば朝の18番で落とし、午後3番でもとられて、その差が4アップとなったとき。阿部ペースの試合が流れを変えるかどうか。まだ残っているホール数からいって決して安全圏ではありませんでしたが、次の4番(22ホール目)で阿部にバーディーがきました。しかも続く5番(23ホール目)で、また権藤が1メートル強のパットを外して阿部のホールとなりました(6アップ)。
 「あの5番のパットを外したとき、集中が切れた感じがしました」と権藤。その言葉通り、7、8、9番と3連続で阿部の勝ち。9番では90ヤードをサンドウェッジで”あわや”の20センチにつけるスーパーショット。22ホール以降は6ホールで5つとる猛チャージで、あと9ホールを残して阿部の9アップと大差がつきました。
 中盤、緩みかけていた阿部のゴルフが、5番で権藤が外してから蘇りました。球に切れが戻り、アプローチがぴたぴた寄っていきました。最後の9ホールに入った10番(28ホール目)。ここで権藤が勝たない限り、分けても次のホールに進めないドーミーホール。阿部は145ヤードのセカンドを8番アイアンでピン5メートルにつけました。権藤はグリーンを外して3オン。阿部の最初のパットは20センチに寄りパー。権藤は4打目のパッティングをする前に”OK(コンシード)”を出してボールを拾い上げ、決着がつきました。8ホールを残して10アップ。10アンド8で阿部の完勝でした。
 
 「運に恵まれました。(今週の試合は)自分がいいプレーをしているゲームよりも相手がミスしてくれたマッチが多かったです。ただ僕もいいパーをいくつか拾えたことが大きかったですね。うれしいです」。
 終始冷静なゴルフで第95回日本アマチュア選手権を制した初出場、21歳阿部裕樹のコメントでした。
 
 阿部の憧れは米ツアーで活躍している今田竜二。ドライバーは260ヤードそこそこだが、アプローチの小技を利かせてリズムを作っていくの阿部流のプレースタイルも今田竜二に似ています。アマチュアの最高峰を極めた阿部の次の目標は、やはりツアープロ。来春の卒業を待って次なる大きな夢に向かって新たなスタートを切ります。