高見和宏、波乱万丈のシニア初勝利。表彰式では”夫人でない女性”と2ショット!

シニア5試合目で初優勝。夫人でない"新しい伴侶"と優勝カップを前にうれしい2ショット。高見和宏(右)と加納亜美さん(左)=静岡。裾野CC
シニア5試合目で初優勝。夫人でない"新しい伴侶"と優勝カップを前にうれしい2ショット。高見和宏(右)と加納亜美さん(左)=静岡。裾野CC

 シニア1年目の高見和宏(50)が、シニアツアー5試合目のファンケルクラシック(22日最終日=静岡・裾野CC)で2位に5打差をつける初優勝で感激に浸りました。レギュラー時代の終盤から公私にわたっていいことがなく、左手親指じん帯断裂、シード権喪失、離婚・・。「でもシニアになったらオレはやれる!」と、50歳になるのを指折り数えて待っていたのでした。18番グリーンでの表彰式で、まだ再婚していない新しい”夫人”が飛び出し、カメラマンの2ショットに収まるというハプニングも。それほどうれし高見和宏の”再起”でした。
 
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池森賢二大会会長(ファンケル名誉会長)から優勝賞金1500万円のチェックを受け取る高見和宏(右)。賞金ランキング1位に浮上した(裾野CC)
池森賢二大会会長(ファンケル名誉会長)から優勝賞金1500万円のチェックを受け取る高見和宏(右)。賞金ランキング1位に浮上した(裾野CC)

 裾野CC、18番グリーン脇で晴れやかな高見の表彰式を見つめていた一人の女性が、高見が優勝カップを抱えてフォトセッションになると、つかつかと高見のそばに歩み寄りました。二人は抱き合わんばかりに寄り添い、カップを持ち上げて勝利の美酒を味わっていました。カメラマンは当然のように、この2ショットにフラッシュの雨を浴びせました。「奥さん、奥さん!」と、ポーズを求めるカメラマンもいましたが、二人は別に悪びれるところもなく笑顔を振りまき、優勝セレモニーを一層盛り上げる最後のシーンとなりました。
 
 実は、この女性、高見の”奥さん”ではありません。千枝夫人というれっきとした夫人のいる高見ですが、数年まえから別居生活で「離婚交渉」が現在も続行中なのです。で、くだんの女性はその後高見と知り合い、今は同棲中の新しい”ガールフレンド”、加納亜美(つぐみ)さん(34)でした。高見によれば「つぐみさんは、もう親も認めていて一緒に生活している人。自分の離婚が正式になれば、いずれは結婚するつもり」とのこと。つぐみさんは「わたしがいろいろいってもおかしいですから、高見さんに聞いてください」といいながらも「高見さんは指を怪我したり、シード落ちしたり、奥さんとうまくいかなかったり・・。ゴルフも家庭も一度に崩壊した苦しみがあったのです。ですからこの優勝はうれしいですね」と、思わず高見、復活の喜びを語っていました。
 

第10回記念大会のファンケルクラシック。3日間で22,135人のギャラリーを集め、シニアツアー最高記録を樹立。大勢のボランテアに囲まれる優勝の高見和宏(中央=裾野CC)
第10回記念大会のファンケルクラシック。3日間で22,135人のギャラリーを集め、シニアツアー最高記録を樹立。大勢のボランテアに囲まれる優勝の高見和宏(中央=裾野CC)

 高見は昨年12月に50歳を迎え、今年からのシニアツアーを心待ちしていました。開幕戦のスターツシニア(6月)は21位でシニアをスタートさせ、榊原温泉シニア、23位。PGAフィランスロピーシニアでは予選落ちの苦汁も飲みましたが、2週前の皇潤シニアでは14位と上昇して「少しずつシニアの雰囲気になれてきた。ぴりぴりしたレギュラーツアーと違って、シニアは先輩たちも気安く声をかけてくれるし、楽しくゴルフができる」といっていた矢先に5試合目の優勝が飛び込んできたのです。
 
 初日に67を出して3位につけ、2日目も68で2位。1位のブーンチュ・ルアンキット(タイ)を1打差で追う最終日でした。朝1番の1番ホールでセカンドがピンに絡む”OKバーディー”。
「あれできょうも調子がいい。いけるかも!」と、波に乗れたそうです。スコアの伸びないルアンキットを早々ととらえ9、10番と続くパー5を連続でとって首位を磐石なものとしました。結局は7バーディー、3ボギーの68。前日、三好隆がグリーン右のバンカーに落としてトラブルとなり「10」を叩いた18番(パー5)は「三好さんのこともあったし危ないホールだから」(高見)と、ドライバーを3Wに持ち替えてティーショットを打ち、池越えの第2打もグリーンは狙わずに7番アイアンで刻み、52度のウェッジで108ヤードの第3打。これをピン1メートルにつけて、最後7つ目のバーディーを奪って危なげなく逃げ切りました。
 

ドライバーの行方を見守る飛ばし屋・高見和宏。(ファンケルクラシックで)
ドライバーの行方を見守る飛ばし屋・高見和宏。(ファンケルクラシックで)

 高見和宏は北海道出身の数少ないプロの一人。東海大から千葉・習志野CCに入り研修生生活を続けましたが、プロテストは85年に10度目の挑戦でやっと合格する苦しみを味わいました。憧れのジャンボ軍団に入ったものの、飛ばし屋ぞろいの中で振り回していてスイングリズムを狂わせたりしました。北海道オープンなどのローカルでは勝てるのですが、ツアーではなかなか勝てず、94年のKSBオープン、95年のフィランスロピーの2勝だけ。今回シニア世代にはいって勝ったファンケルは、ツアーでは15年ぶりの3勝目でした。
 
 ジャンボ軍団を卒業するとレギュラーツアーでも06年以降はシード権も失いました。「でもシニアがある。シニアツアーに行ったら絶対やれる!」と、待ち望んでいた2年前、左手親指のじん帯を断裂する大怪我にみまわれたのです。3時間に及ぶ手術をしましたが「ゴルフはできるかどうか」の瀬戸際で「1年以上はクラブが振れなかった」苦しみ。そうしたとき声をかけてくれたのが、中山徹プロをヘッドにした室田淳、加瀬秀樹、宮瀬博文ら千葉グループの”雑草軍団”でした。今年2月には軍団仲間とサイパンキャンプにも参加してシニア初年度に備えました。
 
 飛ばし屋だが、荒っぽいゴルフでスコアがまとまらない高見でしたが、ショートゲーム、とりわけパットのうまさには定評がありました。「44~45歳ころからゴルフでも私生活でもいいことがなかった。でもこの1勝で、やはりシニアではやれそうという自信も湧いてきました。昔より、”もっとゴルフを楽しもうよ”というもう一人の自分がいた」と、苦難から立ち直り第二のゴルフ人生の始まり、といった高見です。表彰式で「この優勝でおごらず、練習を重ねてみなさんの期待にこたえたい」と優勝スピーチ。これを聞いていた軍団でも仲のいい加瀬秀樹から「おれ達には忘れずにおごれよ!」と、すかさず絶口調の祝福?が飛んでいました。
 
 がんと戦いながらゴルフを続けるシニアも何人もいます。年輪を積んだシニアツアーの世界にはいろいろな人間模様があるのですー。