メディアを招いた池田勇太異例の「感謝の夕べ」。なぜない”最多勝”のタイトル?

なじみのゴルフ記者に囲まれてご機嫌で話がはずんだ池田勇太(東京・赤坂)
なじみのゴルフ記者に囲まれてご機嫌で話がはずんだ池田勇太(東京・赤坂)

 ゴルフ界の”若大将”池田勇太(25)がまたまた男気いっぱいの「感謝の夕べ」を1月21日夜、東京・赤坂のカフェバーで行いました。招待したのはなんと約40人のゴルフ記者の面々。2010年の年間表彰式で、記者投票による「ゴルフ記者賞」を受賞。これにいたく感激した勇太が、自腹をきって投票してくれた記者たちと語り合おうという「感謝の夕べ」です。2009年にも日本プロ選手権でツアー初優勝するなど4勝した勇太は、そのオフに東京のホテルで約1000人を集める「感謝の集い」を自前でやって壇上で男泣きしました。3タックのパンツに刈り上げ頭の池田勇太。周囲に対して細やかな心配りをする”演歌男”なのです。勇太が赤坂の会で嘆いたのは、2年間連続で最多勝をとりながら、賞金ランキングは2位、4位で賞金王がとれない悔しさでしたー。
 
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自らカウンターの中に入ってサービスに努めた池田勇太(右)=東京・赤坂のカフェバー
自らカウンターの中に入ってサービスに努めた池田勇太(右)=東京・赤坂のカフェバー

 東京・赤坂の弁慶橋近くにある隠れや的なカフェバー。記者たちと関係者を入れると50人もが入るには、いささか手狭な会場になり、勇太は開口一番「狭くて申し訳ないですね。もう少し広いところにすればよかったです」と、ペコリと頭を下げて会は始まりました。「みなさんにはシーズン中、コースでいろいろお世話になりました。その上、ゴルフ記者賞もいただき感謝に耐えません。こういう席ですが、今夜はみなさんリラックスして食べて飲んでください。いつもは聞けない話なんかが出ればまたうれしいです」と勇太の”開会の挨拶”。
 
 旧冬12月5日、ツアー最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップが終わってから1月末まで、正月の2、3日を家族と温泉旅行したほかは「1日も休む日がなかった」という多忙なオフ。正月明けはロイヤル・トロフィーのタイ遠征もありました。石川遼に負けずにヒートアップしている池田勇太です。シーズンオフも男子プロはやはり”遼と勇太”が引っ張りだこの両横綱です。
 
 ビールにウイスキー。焼酎にワイン。無礼講でわいわいとプロとメディアが酒を酌み交わすことは珍しいことです。勇太もテーブルを交互に回って、多くの記者の話し相手になる気遣いを忘れませんでした。礼儀正しい石川遼とはまた違って、ざっくばらんで周囲に対して細やかな心配りのできる池田勇太の魅力があふれていました。見た目はいかつい男ですが、人をそらさない気配りは25歳の若者にはなかなかできないことです。
 

飛ばしでは負けていない池田勇太のドライバーショット(2010年日本プロ=パサージュ琴海で)
飛ばしでは負けていない池田勇太のドライバーショット(2010年日本プロ=パサージュ琴海で)

 時期が時期だけにどうしてもマスターズに話題がいきます。昨年は初出場のマスターズで一人予選を通過、29位と健闘した勇太の実績は今年につながります。2度目のマスターズへ期待は高まりますが「行く前からあれこれ考えてもしょうがないですよ。行ってからこの目で見て考えます。オーガスタは早く入ってもプレーをさせてくれない。選手が練習できるのは日曜からかな。それより前は出場選手といえども、メンバー同伴か何かでないと回れませんから」と、いつもの調子でした。
 最も大事というキャディーは、コースを熟知している地元のハウスキャディーに頼らず、プロになって8勝すべてをともにしてきた福田央(ひさし)キャディー(36)を今年も連れて行きます。こういうところも勇太の男意気を感じます。そして4月7日開幕のマスターズまでに、3ないし4試合の米ツアー挑戦を計画中です。まず2月17日からのノーザントラストオープン(ロス郊外リビエラCC)をスタートに、翌週23日からのWGCアクセンチュアマッチプレー(アリゾナ)、3月10日からのWGCキャデラック選手権(フォロリダ)の3試合はほぼ確定です。「ホンダクラシックにはハネられた」(池田)そうで、同じフロリダシリーズのトランジションズ選手権か、アーノルド・パーマー招待のどちらかに出られるよう調整中です。昨年も勇太はアクセンチュアマッチプレー、CA選手権、トランジションズ選手権、アーノルド・パーマー招待と、マスターズ前に4試合をこなしてオーガスタ入りしました。今年も大体同じスケジュールでのマスターズ挑戦となりそうです。2月に入ればハワイで最後の仕上げ練習のあと米国ツアーへ乗り込む予定です。
 
 ところで、酒を酌み交わしながら勇太が嘆いた?のは、日本国内で2年連続賞金王を逃がしたことです。08年に初シードをとり、09年は一気に4勝して最多勝。賞金も1億5855万余を稼ぎましたが、賞金レースは石川遼に破れて2位。昨年も2年連続最多勝の4勝を挙げて1億4504万円余と積み上げましたが、賞金ランキングは4位。賞金王になった金庚泰(キム・キョンテ)とは3600万円の差でした。石川遼(賞金3位)にも2年連続で後塵を拝しています。
 

通算112勝、賞金王12回を誇る"憧れの人"ジャンボ尾崎の世界ゴルフ殿堂入り発表にかけつけ、石川遼(右)とともに花束を贈った池田勇太(左)=2010年10月、横浜のホテル。
通算112勝、賞金王12回を誇る"憧れの人"ジャンボ尾崎の世界ゴルフ殿堂入り発表にかけつけ、石川遼(右)とともに花束を贈った池田勇太(左)=2010年10月、横浜のホテル。

 賞金王を2年連続で逸したのは、額が少なかったのですから仕方ありませんが、勇太がいいたいのは「最多勝には何も(タイトルが)ない」ことです。「最多勝しても別になにもいわれない。自分では、2年も続けて最多勝の年間4勝したのは誇りに思っているんです。なのに・・ですよ。ゴルフ界は勝利数より賞金王なんですかね・・」。
 ジャンボ尾崎は生涯112勝(うちツアーは94勝)もしており、賞金王も12回を数えます。しかし最多勝何回、というのはあまりいいません。ツアーではシーズン終了後に部門別の1位が発表され、それぞれ表彰されますが、「最多勝」というタイトルはありません。プロ野球などは年間の最多勝投手は高い評価を受けますが、ゴルフの場合は勝ち星よりも賞金王への関心が高いようです。
 米ツアーでは「年間最多勝」(Most PGA Tour Wins Year-by-Year)は、しっかりと記録に残され、オフィシャルガイドブックにも記載されています。何年は誰が最多勝で何勝、というのはすぐ分かるようになっています。日本のツアーブックにはその項目はありません。
 生涯25勝を達成すると永久シード権が与えられ、いま男子ツアーには7人の永久シード選手がいます。また世界ランキングは、マスターズはじめ世界のメジャーへの出場権に直結するように最近はなっています。勝ち星は大切です。年間最多勝を挙げるような選手は、賞金ランキングも必然的に上がっていきますが、大会ごとの賞金額が違うため、必ずしも優勝回数と賞金王が一致することはないのです。仮に、年間優勝はゼロでオール2位なら賞金王にはなれるでしょう。それだけに、最多勝利は最多勝利で意義があり、称えられてしかるべきです。
 
 今年こそ勇太は「国内にウエートを置いて」賞金王を狙います。昨年のように国内ツアーが始まってからも7試合の海外試合に海を渡ったハードスケジュールは避けます。世界のメジャーには依然、意欲を持っていますし、米ツアーのシード権取得の夢も捨ててはいません。その中で国内での賞金王が目の前にちらついているのです。3年連続最多勝という”隠れた記録”の達成も忘れていません。貪欲な勇太なのです。
 
 勇太と記者たちの懇親会は、楽しく賑やかに約3時間も続いて午後10時前にお開きになりました。ゴルフ記者と盃をかわしながらの懇親で「裸の池田勇太」を知ってもらいたいとの願いもあったのでしょうか。今年、もし最多勝で賞金王をとったら、勇太はどんなパーティーを用意するのでしょう!?
 
◆最近10年のゴルフ記者賞(1985年から設定)◆    
 
2010年  池田勇太 (賞金4位)
2009年  石川遼  (賞金王)
2008年  石川遼  (賞金5位)
2007年  石川遼(アマでツアー優勝)
2006年  谷原秀人 (賞金2位)
2005年  片山晋呉 (賞金王)
2004年  谷口徹  (賞金2位)
2003年  伊澤利光 (賞金王)
2002年  谷口徹  (賞金王)
2001年  伊澤利光 (賞金王)