勝利の女神から見放されたタイガー・ウッズ。今季初戦はジリ貧の44位。ギャラリーも昨年の半分に激減!

強かったころのオーラもみえず、苦戦が続くタイガー・ウッズ。
強かったころのオーラもみえず、苦戦が続くタイガー・ウッズ。

 不倫騒動などの影響で世界ランキング1位から陥落していたタイガー・ウッズ(35)の注目の今季初戦は44位に終わりました。米カリフォルニア州サンディエゴ郊外のトーリーパインズGCでのファーマーズ・インシュアランス・オープン(1月30日最終日)。優勝スコアから15打差もつけられた通算1アンダーで、4日間を通してトップ争いにも参加できず平凡でした。前身のビュイック招待時代を通じて6勝もしている得意なコースだったのにそれも関係なく、2シーズンぶりの復活優勝も夢でした。前売り券も5万5000枚で前年の半分にとどまり、”タイガーも並みの選手に・・”との声も出たほどです。生き馬の目を抜くシビアな米ツアーで、タイガー・ウッズが蘇るのはいつでしょうか。
 
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 太平洋を眼下に望むシーサイドに広がるトーリー・パインズ。7698ヤードでパー72と距離のあるコースに加えて、厳しく狭められたフェアウェイでツアーでも指折りの難コースです。風との戦いもあります。タイガーは昨年からスイングの改造に取り組んでまだ道半ば。今季初戦を迎えて「どれだけ進歩しているか早く見たい」と、モチベーションも上がっていて、初日はノーボギーの3バーディーを奪って69のスタートでした。「精神的なバランスもとれてきた」と話しました。ただ、この日はドライバーの平均飛距離329ヤード(出場選手中3位)をマークしたのですが、4つあるパー5のホールで一つもバーディーを奪えなかったのが気がかりでした。それでも2日目は前半で4連続バーディー。後半に入ってショットが乱れ出して3つのボギーをたたきましたが、終盤でまた2バーディーを取り返して初日と同じ69で凌ぎました。首位には5打差の12位でした。
 

愛人騒動から復活優勝を狙うタイガー・ウッズだが、改造中のスイングの乱れが気になる。
愛人騒動から復活優勝を狙うタイガー・ウッズだが、改造中のスイングの乱れが気になる。

 「問題はショットの精度」と、気を引き締めたタイガーでしたが、3日目に入るとガラッとショットがおかしくなりました。右に左に散らばり、フェアウェイをキープしたのは5度だけ。パーオンは10回。2オーバーの74と崩れて首位との差は5打から8打に広がり、この時点でもう優勝は絶望的となりました。最終日の反撃も期待されましたが、2バーディー、5ボギーの75と、さらに悪いスコアで、あのタイガーチャージは遠い過去のものでした。もちろん順位も24位から44位にまで落ちて、今季の初戦は後味の悪さを残しました。
 「スイング改造は時間がかかるもの。97年にやったときも2年かかった。これからは4月のマスターズへ向けて今年最初のピークを作るよ」。自分に言い聞かせるように話したタイガーですが、ショットの不調はどうもすっきりしません。
 
 一昨年11月、自動車事故を発端に愛人スキャンダルが発覚、無期限の活動を休止していたタイガーは、昨年4月のマスターズで戦列復帰して4位。6月の全米オープンでも4位でしたが、09年9月のBMW選手権以来、勝ち星から遠ざかっています。プロ15シーズン目で初めてツアー優勝のなかった昨年は、獲得賞金は129万4765ドル(約1億600万円)。プロ転向後最悪の賞金ランク68位でした。一昨年の賞金が1051万ドル(約8億6000万円)でしたから、一気に8分の1の減収となったのです。さらにCM解約や多くのスポンサー離れも相次ぎました。8月に離婚が成立したスウェーデン生まれの元モデル、エリン・ノルデグレンさん(31)への慰謝料は1億ドル(約85億円)とうわさされるなどタイガー・ウッズの周辺に明るい話題は皆無となりました。
 
 昨年10月末には、5年以上281週守り続けてきた世界ランキング1位の座もリー・ウエストウッド(英)に明け渡しました。 今年1月24日発表の最新ランキングでは、欧州アブダビ選手権で優勝したマルチン・カイマーに2位も奪われ3位に転落です。
 昨年は米ツアーの終わったあと、11月にはオーストラリア・マスターズ(09年優勝)に出ましたが4位どまり。12月には米ツアー外競技でタイガーがホスト役のシェブロン・ワールド・チャンレンジ(カリフォルニア州)にも出場しましたが、前日まで2位に4打差をつけて首位に立っていながら、最終日73とスコアを伸ばせず、16アンダーでグレーム・マクダウエル(英、10年全米OP勝者)とのプレーオフで敗れました。タイガーが最終日に3打以上の差をつけていて優勝を逃がしたのは初めてのことです。プレーオフで敗れたのも、15年のプロ生活で過去3回しかありませんでした。復帰後もこうして苦しい戦いを重ねながら2011年を迎えたのですが・・。
 
 タイガー・ウッズはいま新コーチのショーン・フォリー氏と組んでスイングも改造。再起にかけていますが、初出場の試合でもインパクト後片手を離したり、スイングリズムを崩すショットもたびたび見られました。4月7日開幕の今季初メジャー、マスターズが次の目標といっていますが、いまのタイガーには、かつての凄みのあったオーラが感じられません。米ツアーは4試合を終わりましたが、米ツアーわずか5戦目のジョナタン・ベガス(26)がべネズエラ人初の優勝者(ボブ・ホープ・クラシック)となるなど、上位にくるのは20歳代が多く、若年化は著しいものがあります。35歳のタイガー・ウッズをお年寄りとはいいませんが、うかうかしていると若い力に押し流されないとも限りません。米ツアーはそんな恐ろしい世界ですから。 次の試合を注目しましょう。