スポンサーが選んだルーキー・オブ・ザ・イヤーは未勝利の藤本麻子(20)。 ”父離れ”で蘇ったアスリート系美女!

本格派らしく豪快で華麗なドライバーを放つ藤本麻子。
本格派らしく豪快で華麗なドライバーを放つ藤本麻子。

 ゴルフトーナメントを支えるスポンサーとメーカーなどの団体、(社)日本ゴルフトーナメント振興協会(GTPA)が毎年選出している2010年の「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」に、男子は薗田俊輔(21)、女子は藤本麻子(20)が選ばれました。ゴルフトーナメント界の活性化には若手選手の育成が重要とする同協会が、1998年から選考・選出している賞で、いわばスポンサーから見て特に魅力ある最優秀新人です。選考基準が厳しく、ツアープロになって2シーズン以内で、その年度の「来季シード権獲得者」。しかも人格、マナー、エチケット、将来性を加味して選考されます。選ばれた二人のうち、薗田は早くも1勝して”有名”になりましたが、女子の藤本麻子はまだ初優勝もしていないのにどうして白羽の矢が立ったのでしょう?
 
    ◇◆         ◇◆
 

GTPAの2010年ルーキー・オブ・ザ・イヤーのトロフィーを抱く藤本麻子(東京・九段グランドパレス)
GTPAの2010年ルーキー・オブ・ザ・イヤーのトロフィーを抱く藤本麻子(東京・九段グランドパレス)

 チャコールグレーのジャケットと同色のパンツを身にまとい、165㌢の藤本は一段と大きく見えました。男子の薗田に負けず劣らず、賞状と記念品を授与され堂々と受賞の喜びを語りました。「シーズン途中でスイングに悩みが出て苦しかったですが、後半戦やっと自分のゴルフができるようになりました。優勝は出来なくても1年間努力してこの賞をもらえたのは励みになります。今年は優勝できるよう頑張ります。韓国の選手には負けたくないです」ー。
 
 横峯さくらや古閑美保のような派手さとは違って、藤本はしっかりした体躯から長打を飛ばすアスリート系の美女です。ジュニア時代から一緒に戦ったヤニ・ツェン(曾雅 女ヘンに尼)=台湾・昨年の米女子ツアー最優秀選手)と親しく、オフには米フロリダにヤニ・ツェンを訪ねて一緒にトレーニングもした仲です。人望も厚く、後輩の女子選手から慕われる麻子。実はアマ時代から知る人ぞ知るの実力者です。14歳(中2)の04年から中国ジュニア4連覇。岡山・作陽高時代は”関西に藤本麻子あり”といわれて、06年からはJGAのナショナルチームの中心選手として活躍しました。08年(高3)の日本女子アマで8強入り。翌09年、高校を卒業した19歳でついに日本女子アマ選手権優勝を果たしました。その年7月のプロテストには一発合格(8位)、新人戦の加賀電子杯ではいきなり優勝でした。09年末の最終予選会では25位に入り、2010年からはツアーにフル参戦と順調な足跡を残しています。
 

GTPAの2010年度ルーキー・オブ・ザ・イヤー、男子の部で選ばれ、インタビューを受ける薗田俊輔(右)=東京・九段グランドパレス
GTPAの2010年度ルーキー・オブ・ザ・イヤー、男子の部で選ばれ、インタビューを受ける薗田俊輔(右)=東京・九段グランドパレス

 2010年は、全33試合(最終戦のツアー選手権は除く)に出場。優勝はありませんでしたが、トップテンが5回。20位以内は17試合もあります。予選落ちはわずか4試合と年間を通して安定した1年でした。推薦で2試合だけに出た一昨年の120位(115万2000円)からは大飛躍で、3324万7342円の賞金を稼ぎ賞金ランキングは27位。1年目で堂々のシード権を獲得しました。
 中でもフジサンケイでは初日、2日目の2日間で4回のチップインを演じる小技もみせ、最終日は17番まで首位に1打差に迫る優勝争いを演じました。惜しくも2位で初優勝を逃がしましたが、その前週の西陣レディスでは3日間を通して4位をキープ。最終日は、優勝した朴仁妃(パク・インビ)と同組でまわる緊張のラウンドでしたが、1バーディー、1ボギーのパープレーと耐えるゴルフでの4位でした。序盤戦から飛び出しフジサンケイの2位で、7試合で早くも賞金1000万円を越える躍進ぶり。夏場の暑さでやや調子を落とした時期もありましたが、年間を通してシード落ちの心配は全くない戦いぶりはお見事でした。
 
 さすが振興協会のスポンサー達は、この藤本麻子を見逃しませんでした。あと一歩で初優勝は成りませんでしたが、ルーキー・オブ・ザ・イヤーの名に恥じないシーズンといっていいでしょう。
 振興協会の藤本麻子への評価は
★前年度賞金ランク120位から27位と大きく躍進した。
★優勝争いに絡みながらのトップテンフィニッシュが5回。トップ選手としての力量を発揮した。
★20歳の若さにこんごの更なる活躍が期待できる。
 としています。
 
 藤本選手にその喜びを聞きました。

GTPAルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。壇上で喜びの挨拶をする藤本麻子(東京・九段のグランドパレス)
GTPAルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。壇上で喜びの挨拶をする藤本麻子(東京・九段のグランドパレス)

 「シーズン前半は自分のゴルフができていたのですが、後半戦に入ってスイングに悩みが出てゴルフまでおかしくなりました。(10歳からずっとゴルフを教わってきた)お父さんと話し合って、9月のミヤギテレビ杯ダンロップからお父さんは付き添わず自分で何でもやるようにしたのです。そうしたら徐々に自分のゴルフがしっかりできるようになってきたのです。それで終盤はまた頑張れました。ただ、夏に体力がなくなり集中力が出なくなったんです。これが反省点で今年はオフから体力強化のトレーニングを積んでスタミナをつけています。去年、初優勝はできなかったのですが、フジサンケイで優勝争いができたのが力になりました。今年は優勝できるように頑張りたい。韓国の選手には負けたくないですから」
 
 1月は10日から3週間グアムで自主トレをやりました。最初の10日間は3勤1休。後の11日間は休みなしのスケジュール。朝8時からランニングとバイクこぎによる有酸素運動を取り入れ、午後はラウンド。夕方4時からは体幹を鍛えるトレーニング、夕食後は再びランニングというハードな練習をこなしました。2月1日の振興協会の表彰式を終えると3日にはハワイへ飛び、ゴルフラウンド中心の合宿練習を2週間計画、「スイングを固めてきます」と、年明けからはゴルフ漬けの毎日を送っています。
 
 山陰に近い岡山・津山で育った藤本は、空手のほかスキーも趣味で得意。毎年オフにはスキーは欠かさないのですが「今年も行きたかったけど、トレーニング続きなのでこの上スキーに行ったらちょっとハード過ぎるかなと思って、今年は止めました」と、残念がっていました。1月31日に遅い初詣へ行き、引いたおみくじに「損して得とれ」とあったそうです。「いまの頑張りは実るけど、もっともっと頑張れ」とも書かれていて、それを今年のモットーにしたいと誓いました。
 
 悲願のプロ初優勝へ。麻子の夢は今年きっと実現するでしょう。同世代の宮里美香、森田理香子が一足先に10年にツアー初優勝しました。スポンサーが選んだ20歳の”最優秀新人”は、負けじとしっかりと目標を見据えています。
 
 
 
【これまでのGTPAルーキー・オブ・ザ・イヤー(女子)】
 
 2010年 藤本麻子
 2009年 森田理香子
 2008年 三塚優子
       原江里菜
       服部真夕
 2007年 上田桃子
 2006年 飯島茜
       諸見里しのぶ
 2005年 横峯さくら
 2004年 宮里藍
 2003年 古閑美保
 2002年 高橋美保子
 2001年 山口裕子
 2000年 藤野オリエ
 1999年 米山みどり
       韓熙圓
 1998年 坂上晴美