今年も”韓流”の開幕! 早くも危機感つのる日本勢

女子プロツアーの開幕戦「ダイキンオーキッド」を制した朴仁妃(パク・インビ)。今年も韓流の勢いは衰えていない(沖縄・琉球GC)
女子プロツアーの開幕戦「ダイキンオーキッド」を制した朴仁妃(パク・インビ)。今年も韓流の勢いは衰えていない(沖縄・琉球GC)

 女子プロゴルフツアーが開幕しました。南国沖縄(琉球GC)で宮里藍、宮里美香、上田桃子の米ツアー組も顔をそろえ、日本女子ツアーのオープニングに花を添えましたが、フタをあけると今年もまた「韓流」の勢いは止まっていませんでした。米ツアーと日本ツアーをかけもちしている朴仁妃(22=パク・インビ)が最終日、66のベストスコアを出し、通算11アンダーで逆転優勝でした。韓国勢は昨年のアン・ソンジュに続いて2年連続の開幕戦優勝。昨季の最後2試合も、金ナリ(大王製紙エリエール)、朴仁妃(LPGAツアー選手権)が勝っており、韓国パワーは、年をまたいで3試合連続優勝の衰えぬ勢いです。これには小林浩美新会長も複雑な表情でした。
 
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上位6人中4人が韓国勢。辛うじて2位に食い込んだ日本人1位の佐伯三貴。(ダイキンオーキッド=沖縄・琉球GC)
上位6人中4人が韓国勢。辛うじて2位に食い込んだ日本人1位の佐伯三貴。(ダイキンオーキッド=沖縄・琉球GC)

 3ヵ月余のシーズンオフを経て、今年の女子プロゴルフはどんな顔をみせるのだろうか。サマ変わりの激しい”女子”の開幕に興味はつきませんでしたが、いきなり強さをみせたのはやはり韓国でした。日本勢は2位に大型プレーヤーの佐伯三貴(26)が入っただけで、上位は6人中4人が韓国選手。藍、美香の両宮里はなんと予選落ちで最終日はいませんでした。もう一人の上田桃子も2日目までは2打差の4位にいたものの、最終日は73とスコアを落として7位に終わる尻すぼみです。原江里菜、若林舞衣子、服部真夕といった復活を期待されている若手連もそろって予選落ち。金田久美子(21)、穴井詩(23)の2新鋭が上位に飛び込んできたのが、日本勢せめてものフレッシュさでした。
 
 勝った朴仁妃は、初日は10位、2日目は3打差の5位と目にもつかなかったのですが、最終日は7バーディー、1ボギーの66です。しかも上がり3ホールで2つ伸ばして2位以下を突き放しました。日本人上位の佐伯三貴も森田理香子(5位)も、この大詰の勝負どころでスコアを伸ばしきれません。
「厳しい場面でもう一つ伸ばしてくる。世界でもまれるてる強い選手は最後の一押しがある。でも佐伯さんが粘ったし金田さん、穴井さんも頑張って日本勢も新しい力も出てきています。差は縮まっていると思います」と、小林浩美新会長のコメントは苦しそうでした。
 

苦手トレを克服、プロ意識に目覚めて7位に入ったキンクミこと金田久美子。
苦手トレを克服、プロ意識に目覚めて7位に入ったキンクミこと金田久美子。

 昨年は新人のアン・ソンジュに開幕戦に勝たれて、そのまま賞金女王へ走りました。今年の開幕は08年全米女子オープン優勝の朴仁妃。昨年の韓国賞金女王で今季から日本に移るイ・ボミが、いきなり3位に入る活躍です。5位には09年米女子ツアー賞金女王の申ジエ(22)が入りました。脅威の選手が年々増える日本女子ツアー界。実は世界からターゲットにされているのです。
 日本女子ツアーは、試合数は多い(今年も34試合)、サポートしてくれるスポンサーが依然多く賞金も高い(今季28億6500万円)、4日間でなく3日間の試合が多い、試合の移動は楽、それに韓国勢には母国に近い・・と好条件がそろっていて、米国より魅力的な市場なのです。今季は昨年を上回る韓国勢の日本上陸がいわれており、女王奪回を合言葉にしている日本勢がどこまでたちはだかれるか。若手だけでなく、初日、2日目とトップに立って話題になった藤田幸希(25)は最終日になってパットが乱れて76もたたきました(10位)。”ストップ・ザ・韓国勢”の旗頭になっている横峯さくら(25)も優勝争いもできずに10位どまり。昨年優勝のなかった諸見里しのぶ(24)は47位に沈み、米女子ツアーのHSBC女子チャンピオンズ(シンガポール)で優勝争いの末、2位と健闘した有村智恵(23)も旅の疲れか26位発進と、一気に波に乗ることはできませんでした。
 
 昨年の日本女子ツアーは34戦中、韓国勢8人で15勝しました。今年も早くも危機感さえ感じられます。外国選手の”襲撃”に耐えようと、今年から海外ツアーの賞金ランク上位者に与えていた日本ツアーの予選会(QT)への優遇措置を廃止、4段階ある予選会はすべて1次から受けなくてはなりません。昨年も2勝した朴仁妃は、09年暮れに優遇措置を使って最終QTだけを受けて日本ツアーに参戦しましたが、これからの選手は、4次行われるすべての予選をクリアしなくてはならなくなりました。日本ツアー参戦へのハードルは高くなりましたが、母国に近い韓国の選手達はこれさえも乗り越えて日本ツアーを狙ってくるでしょう。
 
 日本と韓国の実力差はどこからくるのでしょう。「韓国は日本に比べ、ジュニア時代から国を挙げて組織的に育成しているところが違う」とよく言われますが、開幕戦を制した朴仁妃は韓国勢の強さについて「練習量の差だと思う」と、一言で表現していました。2位に入った佐伯は「韓国の選手ばかりじゃないですか」と悔しさをあらわし、横峯は「誰かが止めなければいけませんね」といい、上田は「日本ツアーなんだからみんな誇りを持って頑張らないと」と悔しさをにじませていました。口でいうだけでなく、朴仁妃の「練習量の差」という言葉をもう一度胸に手をあてて考えてみる必要があるのかもしれません。