ベガス、ファウラー人気に勝てなかった石川遼! 2ヵ月の長期米国滞在、もまれて成長するか?

今年は2ヵ月間の滞米生活のあと3度目のマスターズにのぞむ石川遼。吉と出るか凶と出るか?
今年は2ヵ月間の滞米生活のあと3度目のマスターズにのぞむ石川遼。吉と出るか凶と出るか?

 石川遼(19)が、2ヵ月に及ぶ長期の米国生活で”苦戦”が続いています。といっても滞米3試合目のキャデラック選手権(フロリダ)では、”モンスター”といわれるドラルTPCを3日目までアンダーパーで回る健闘をみせました。マスターズ(4月7日開幕)まであと2試合をこなし、最終ターゲットのオーガスタに乗り込みますが、今年の遼クン、周到なスケジュールを消化しながら着実な足取りかもしれません。今回の試合で米ツアーでベネズエラ人初優勝(ボブ・ホープクラシック)を飾って話題となったジョナサン・ベガス(26)と、昨季の米ツアー最優秀新人、リッキー・ファウラー(22)と同組にさせられた遼クン、さすが米国では2人の人気には及ばなかったようですが・・。
 
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沖縄キャンプでニュークラブをしっかり打ち込み、スイング改造もした石川遼。米ツアー3試合目でようやく手になじんできた。
沖縄キャンプでニュークラブをしっかり打ち込み、スイング改造もした石川遼。米ツアー3試合目でようやく手になじんできた。

 3月のフロリダは、温暖の地とはいえ方向が定まらない特有の強い風が吹き荒れます。18ホール中、7ホールで池がからむ難解なコース。だれがつけたか”モンスター(怪物)”。その中を3日目まではアンダーパーのゴルフをした石川はお見事でした。特筆ものは1ラウンド目の65。朝、瞬間最大風速23メートルという嵐の襲来で試合は2時間45分も中断。まだスタートしていなかった石川はラッキーでした。嵐が去った後はウソのような無風状態となり、そこでスタートできた石川は1番でいきなり7メートルのバーディーパットを沈め、12番までに長いパットを面白いように決めて6バーディー(1ボギー)。5つもスコアを伸ばして日没サスペンデッドとなりました。
 2日目は初日の残り6ホールを入れて24ホールを回る長丁場。スタート前に日本の巨大地震を父親の勝美さんからのメールで知った遼は「被災した人たちへの思いがあった」と気力を奮い立たせたそうです。第1ラウンドの残り6ホールで2つ伸ばし、首位に1打差の7アンダー。単独2位という好スタートでした。この貯金が結局4日間の最後まで効きました。第2ラウンドではスコアを4つ落とす苦戦を強いられましたが、後半の2番では14メートルのバーディーパットをねじ込むなど粘りもみせ、順位は19位まで落ちましたが、なんとかこらえました。
 1Rの「65」は石川の海外試合自己ベストです(従来は「67」)。入りまくった1Rのパット数「23」と平均パット「1.333」は米ツアー自己ベストで、この日の66選手中で1位という出来栄え。1日とはいえ、海外に出て難しいコースでこうしたゴルフができるようになったのは、石川の進化を物語るものといえるでしょう。3日目も前半で2つ伸ばし、ピンチの多かった後半も粘り抜いてパープレーで凌ぎ、70とまたアンダーパー。順位も16位まで回復したのですから評価できます。
 

ヨネックス「イーゾーン・380CC」小ぶりで洋ナシ型の新ドライバー。自分の意見も取り入れて完成した"マスターズ仕様"は、遼クンお気に入りの新兵器。
ヨネックス「イーゾーン・380CC」小ぶりで洋ナシ型の新ドライバー。自分の意見も取り入れて完成した"マスターズ仕様"は、遼クンお気に入りの新兵器。

 石川は今回の米国遠征、第1戦のノーザントラストオープンは予選落ち。第2戦目のアクセンチュアマッチプレー選手権は1回戦敗退と最悪の出足でしたが、そのあとはアリゾナに留まって「1日、300から400球の打ち込みをした。手のマメが痛くなった」というミニキャンプまでこなしました。今年から新調したドライバーとアイアンもようやく手になじんできたようです。「ドライバーも構えたところにストレートボールが打てるようになった」と、明るく話していたそうです。
 

米ツアーでさまざまな経験を積む石川遼。ベガス、ファウラーの人気には勝てなかった!
米ツアーでさまざまな経験を積む石川遼。ベガス、ファウラーの人気には勝てなかった!

 1、2戦は足踏みしましたが、2ヵ月間の滞米スケジュールは着実に効果を上げているようです。そんな石川が”遭遇”したある出来事は、キャデラック選手権の初日、2日目のペアリングに今年米ツアーでの新しい人気者になっている2人の若手と同組になったことです。米ツアー出場わずか5戦目のボブ・ホープ・クラシック(1月)でベネズエラ人初の優勝者となったルーキー・ベガス人気はうなぎのぼりです。南米に近いマイアミでの試合でしたから特に盛り上がったのでしょう。そしてもう一人は、昨年の最優秀新人のリッキー・ファウラーで、米国ファンはいまこの若きファウラーにも熱を挙げています。そんな2人の中に日本の石川遼が入れられたのですからたまりません。日本では絶大の人気を集める遼クンも、米ツアーにいけばまだまだ”格下”。3人の中では3番人気です。ベガスやファウラーがホールアウトすると、どっと動くギャラリーには「(注目度が低いので)かえってやりやすかった」と苦笑いでした。日本ではいつも大ギャラリーを動かす石川も、少々勝手が違ったでしょうが・・。
 
 最近、米ツアーも選手のペアリングには神経を使っています。今年からキャディラックを冠スポンサーに迎えたこの試合。出場選手は世界ランキング50位以内など69人に絞られ、予選カットのない4日間トーナメントです。組み合わせは、世界ランキング1位から24位までは順位にしたがって組み、それ以下では主催者の意向でファンが興味を引くペアリングを作りました。ベガス、ファウラー、石川遼組は、数組作られたまさに”注目組”(フィチャー・グループという)の一つでした。その組み合わせで遼は3番人気になったとは、いかにもアメリカですが「すごい2人と一緒にプレーしても、物おじしなくなってきた」(石川)と、冷静に受け止めていたのはさすがでした。ちなみに、あまり仲のよくないタイガー・ウッズとフィル・ミケルソンが同組になったのもギャラリーの大人気でしたが、これは主催者の思惑ではなく、世界ランキング(ミケルソン4位、ウッズ5位)によるものでした。
 
 もまれて、いろんな経験を積んで、石川遼は成長していきます。このあとは、トランジションズ選手権(17~20日)、アーノルド・パーマー招待(24~27日)と3週連続でフロリダシリーズをこなし、1週休んで今年3年目で「今年が一番ワクワクしている」というマスターズにのぞみます。2ヵ月間の滞米生活で米国のコースにも慣れ、風土や食事などの環境にもなじんだ今年の石川遼への期待は、ますます高まってきています。