石川遼クンの一挙一動に大騒ぎしている日本の男子ゴルフですが、ここにもう一人、強烈な個性を持った22歳のルーキーが頭をもたげてきました。池田勇太。東北福祉大をこの春卒業した若者ですが、昨年11月にはQTを受験(予選落ち)、同時にプロ転向を宣言したプロ一年生です。先週行われたコカ・コーラ東海クラシック(愛知・三好CC西)では最終日、最終組で回り、最終18番まで武藤俊憲と優勝争いを演じて惜敗して脚光を浴びました。遼クンがプロ初優勝した関西オープンでは遼クンの2位。ゴルフも豪快で、石川遼とはまた違った個性でこれからスター街道を歩みそうな逸材です。
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濃くつり上がった眉毛、鋭く光る眼光。いまどきでは古くさい?3タックの太めのパンツ。歩き方は大股で堂々としていて、まるで″20年選手〝のような風格を漂わせます。侍の格好でもさせればピタリ決まるのではないでしょうか。ジャンボ尾崎に憧れ、千葉学芸高から東北福祉大とゴルフに熱中して″千葉に勇太あり〝と知る人ぞ知るの存在でした。03年の世界ジュニア優勝はじめ、日本学生、世界大学ゴルフ選手権など、アマ時代にはいくつものタイトルも手中にしてきました。
そして今年出場5試合目のコカ・コーラ東海クラシック。初日4位から2日目にはトップタイに立ち、3日目も優勝した武藤俊憲と8アンダーで並んで最終日決戦。16番の名物パー3(190ヤード)では、左から迫る崖もものともせず、ピン1メートルにつけてバーディー。17番(パー4)ではグリーン脇のバンカーに落としたボールが″目玉〝になる大ピンチを、ピンに当てて横50センチに止まるナイスパーセーブ。10アンダーで並び最終ホールで決着!と、勇太の夢は目前でしたが、左ラフから打った勇太のセカンドはグリーン手前に落ち、スロープを逆に滑り落ちて右手前の池に落としました。ここで万事休す。しかし、最後の最後まで堂々の優勝争いをした池田勇太の姿は、TVを通じても全国のファンの目に焼きついたはずです。
単独2位に入った勇太は1200万円を獲得、今季出場ツアー5試合の合計賞金額は1321万8000円で目下賞金ランク50位。70位までが得られる来季へのシード権の最低ラインは「1500万円」と想定されています。5位以内に入れば次週の試合にも出られるので、今週のキャノンオープン(戸塚CC)はOK。その次の日本オープンにも関西オープン2位などで出場権があります。続くブリヂストンオープンの推薦出場も確定的で、上り調子の池田勇太のシード権獲得はほぼ大丈夫でしょう。
コカ・コーラ東海が終わった翌日、千葉のあるゴルフ場で池田勇太に会いました。真っ白ジャッケットをスマートに着こなした勇太クンは爽やかでした。生々しい日曜日のことも聞きました。
「18番のセカンドショットはラフからだったのでフライヤーを警戒して(短めに)打ったのですが、計算通りのフライヤーにならなかった。その分ショートしたんですね。仕方ないです」。
17番、ピンに当てた″目玉ショット〝も聞きました。
「かなりひどい目玉だったので、15センチ手前から思い切って打ってやろうとサンドウェッジを開いてぶつけました。方向が問題だったのですが真っ直ぐ飛び、ピンに当たってラッキーでした」。
もちろん、これが横にはねずにカップに沈んでいれば、昨年石川遼がマンシングウェアでやったような初優勝につながるカップインバーディーになったかも知れません。しかし、勇太クンには勝利の女神が微笑みませんでした。
関西オープンで4日のうち3日間一緒に回った石川遼クンについても聞きました。
「遼クンの見せ場はかっ飛ばすドライバーと思われている方が多いでしょうが、僕はそれよりパッティングとアプローチの巧さにびっくりしました。グリーンへの乗せ方も、パットが難しくならない方へしっかり乗せてきたり、そういうところが素晴らしいと思いました。遼クン、17歳でしょう。みんながもっと静かにしてやったら、もっともっとやれると思いますね。僕が17歳のときは、あくまでもアマチュアとしてでしたが、遼クンはプロとしてですからね。毎試合、気持ちよくゴルフをやってるようにみせていても、気持ちよくやってないのじゃないですかね。でも実力はありますよ」
6歳年下のスーパープレーヤーには、その実力を称えながらも同情もちょっぴりみせていました。
ところで22歳の池田勇太クン。3タックがついた太めのパンツに、シャツも大きめできっちりと着ているゴルフファッションです。今風の細身でローライズ、シャツは体に密着するようなタイトなものとはおよそ縁がありません。
「僕は以前からこういう服でやってきましたから。ファッションも考えますが、それよりゴルフをするのに機能的なものがいい。細身のパンツだったりすると、グリーンでパットラインを読むのにも窮屈でしょう。そんなことを気にしないでやれる服装がいいですね」
太い眉毛も、最近の若者のように細くそり落としたりする気は全くないといっています。勇太に遼。どちらが先にツアー初Vを果たすか? 見ものです。
<8月の関西オープン>
石川遼のプロ初勝利で沸いた関西オープン(滋賀GC)では「4日間のうち3日間、遼クンと同じ組で回った」と、勇太は石川遼との優勝争いが楽しかったようです。初日から突っ走った石川遼に食い下がり、初日、2日目4位、3日目2位、最終日は最終組で優勝を争いましたが遼クンと同じ「69」で逆転はならず、4打差の2位。
<今季の池田勇太>
●レギュラーツアー
東建ホームメイト杯 43位タイ
つるやオープン 予選落ち
サン・クロレラ 予選落ち
バナ杯KBC 26位タイ
コカ・コーラ東海 2位
●チャレンジツアー
8試合出場
エバーライフカップ プロ初優勝
2位が2回
ベストテン6回
賞金ランキング 2位
(10月7日現在)