片山晋呉を蘇らせるか”強運のキャディー”。11年ぶりに晋呉に呼ばれた大溝雅教さん

久々優勝争いに最後まで絡んだ片山晋呉。11年ぶりに呼び戻した強運キャディーと復活なるか?(三重・東建多度CC名古屋)=写真提供:JGTO
久々優勝争いに最後まで絡んだ片山晋呉。11年ぶりに呼び戻した強運キャディーと復活なるか?(三重・東建多度CC名古屋)=写真提供:JGTO

 国内男子ツアーがようやく幕を明けましたが、この開幕戦で一番目を引いたのは、2年間長いトンネルに迷い込んでいた片山晋呉(38)の”復活”でした。2打差の2位で優勝はなりませんでしたが、1回目の賞金王をとったときの大溝雅教(まさのり=45)キャディーを11年ぶりに呼び戻して気力充実の晋呉に注目です!東建ホームメイト杯(4月14~17日、三重・東建多度CC名古屋)の優勝は4勝中開幕戦3勝目という高山忠洋(33)。マスターズ帰り、年間賞金全額寄付で話題の石川遼(19)は単独3位。池田勇太(25)は8位タイ。藤田寛之(41)は12位タイでした。
 
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4勝中開幕戦3勝の"開幕戦男"。うれしい優勝カップを抱える高山忠洋。(三重・東建多度CC名古屋)=写真提供:JGTO
4勝中開幕戦3勝の"開幕戦男"。うれしい優勝カップを抱える高山忠洋。(三重・東建多度CC名古屋)=写真提供:JGTO

 日本の男子ツアー開幕は、マスターズの翌週!というのは、海外遠征組には厳しい日程です。マスターズ20位を引っさげてさっそうと登場した石川遼も、休みなしの強行軍で明らかに疲労の色は隠せませんでした。2ヵ月も米国にとどまって試合を続け、最後のマスターズにコンディションをピークにもっていった調整もありました。帰国して埼玉の自宅に帰り、東建のコースには開幕前日午後に入りました。まともな練習ラウンドもなく、いきなり国内モードに切り替えた石川遼クン。池田勇太や藤田寛之を抑えて3位に食い込んだのは上できといえるでしょう。1打差の2位につけていた最終日も苦戦でしたが、ギャラリーが集中する17番、18番の上がりを連続バーディーでフィニッシュしたのはさすがというところです。しかも18番は、グリーン右に外しながら、20ヤードの寄せをSWでチップインバーディーに仕留め、1万9千人の大観衆を興奮させました。
 

マスターズ帰りの強行軍にも耐えて単独3位に入った"話題の"石川遼。(三重・東建多度CC名古屋)=写真提供:JGTO
マスターズ帰りの強行軍にも耐えて単独3位に入った"話題の"石川遼。(三重・東建多度CC名古屋)=写真提供:JGTO

 とはいっても、最終日は4日間で初めてオーバーパー、72(パーは71)。ドライバーが曲がりに曲がり、フェアウェイをキープしたのはただの2回。2番と4番では池ポチャで珍しい3連続ボギーも。7番では左サイドのギャラリーに打ち込み、8、11番では右の崖下に落とすなど、およそ”マスターズ20位”の選手ではありませんでした。
 米国の2ヵ月間は6試合をこなし、試合のない日はショット練習、テニスや筋トレと”ミニキャンプ並み”の日々を過ごしました。
加えて長距離移動とあっては「マスターズ直後の日本開幕」は辛かったでしょう。昨年の東建は大たたきで予選落ちでしたが、今年は苦しみながらも3打差の単独3位に食い込んだのは、石川の成長のあとがうかがえます。獲得した3位賞金は884万円。バーディーは16個取りましたから160万円。計1044万円となり、マスターズでの922万5072円と合わせると、東北の被災地への寄付金は2試合で早くも1966万5072円となりました。「今年の獲得賞金全額を義援金にする」とした石川遼への注目度は、1試合ごとに高まっていきそうです。
 
 その石川遼に今年の開幕戦は負けなかったのが片山晋呉です。初日1イーグル、4バーディー(ノーボギー)の65を出してトップに立ち、最後の最後まで優勝争いにからみました。強風の吹いた3日目にスコアを崩しましたが、2打差を追った最終日は再び安定したゴルフを取り戻して高山忠洋を猛追しました。特に後半9ホールでは3つのバーディー。17番(パー5)は2オンして3メートルのイーグルパット。18番も同じくらいのバーディーパットと大詰のビッグチャンスを作りましたが、ともにパットが僅かにカップに嫌われて”2打差”が縮まりませんでした。しかし石川遼は抑えて、単独2位。久しぶりの晋呉ゴルフを見せつけました。
 
 「いいパットを打っても入らないんじゃしょうがない。悔しいより、試合ができるようになってるからこれからが楽しみ。やはり日曜日はこういう時間を過ごさないといけないんだね。楽しかった。2年ぶりの感覚だったから。最初にしては最高のスタートじゃないの?」
 

福嶋晃子(左)のキャディーをしていたときの大溝雅教キャディー(右)
福嶋晃子(左)のキャディーをしていたときの大溝雅教キャディー(右)

 復活優勝はお預けとなりましたが、晋呉に笑顔が戻ってきました。08年の日本オープンでツアー25勝を達成し、史上7人目の永久シード選手となり、09年のマスターズで4位に入ってから目標を失ったかのように優勝争いから遠ざかっていました。ゴルフ界きっての理論家であり、早くからショートウッドを採り入れるなどしてパワー不足を技術で補い海外でも活躍しました。賞金王5回。連続11年続いていた賞金ランク10位以内、10年連続賞金1億円突破もともに2010年には途切れました。
 そんな片山晋呉の”復活”です。その陰には一人のキャディーの存在を見逃せません。2000年、片山晋呉が一躍頭角を現し、初の賞金王となった年に、影となり日向となってバッグをかついだ大溝雅教キャディー(45)です。以来、片山とは別れて主に女子ツアーでバッグを担いでいた大溝さんが、このオフに突然片山からの電話を受けたのです。
「もう一度、オレのバッグを担いでくれないか?」ー。
 藤井かすみや福嶋晃子はじめ、不動裕理、上田桃子、北田瑠衣、飯島茜らのキャディーを勤めてきた大溝さんは、昨年から黄(ファン)アルム(韓国)のバッグを担ぎ「今年もファンのキャディーをやることがほぼ決まっていたのですが、晋呉からの頼みがあったのでファンに了解してもらった」(大溝さん)とのことです。 2月から3月にかけて宮崎で行ってきた片山晋呉のオフ・キャンプから参加。片山の集中した45日間キャンプで、気心のしれたふたりの二人三脚が再スタートしたのです。
 
 「晋呉も大人になってますね。昔ほどカッカしない。怒ることもやはりあるけど、あとで謝ってくれる。相変わらずゴルフはうまいし、パターも以前とは違う長尺にしてミスパットがないですね。東建ではいまひとつ入らなかったけど、ずっとパットの調子もよかったんですよ」
 11年ぶりに男子ツアーに戻り、晋呉の相棒にカムバックした大溝さんは楽しそうです。
「基本的には1年契約の帯同です」(大溝さん)とのことで、今季は久々”晋呉・大溝”のコンビで片山の復活優勝(08年11月の三井住友VISA太平洋マスターズ以来)での27勝目が見られそうです。大溝雅教さんのキャディー歴では、片山晋呉で5勝、女子ツアーで16勝と計21回の優勝をもたらしている強運のキャディーです。