TV解説と掛け持ちで20年ぶりの優勝・羽川豊。“学士プロ三羽烏”復活か?

シニア4年目、待望のシニア初優勝でトロフィーを抱く羽川豊(中央)と松井功PGA会長(左)杉山美樹大会名誉会長(右=トータルエネルギーグループ会長)=埼玉・森林公園GC
シニア4年目、待望のシニア初優勝でトロフィーを抱く羽川豊(中央)と松井功PGA会長(左)杉山美樹大会名誉会長(右=トータルエネルギーグループ会長)=埼玉・森林公園GC

 国内シニアツアーが遅まきながら開幕、第1戦の公式戦トータルエネルギーCUP PGAフィランスロピー(埼玉・森林公園GC)でシニア4年目のレフティー羽川豊(53)がプレーオフを制しての開幕戦勝利しました。羽川豊といえば、倉本昌弘、湯原信光と並んで“学士プロ三羽烏”とうたわれた一人ですが、プロでは日本オープンチャンピオン、マスターズ選手に上り詰め、“世界的なレフティー”と称された名手です。パターイップスに悩んで現役をいったん離れ、最近はもっぱらTV解説者で活躍していましたが、長尺パターでよみがえり、シニア入りを機に8年ぶりに現役復帰。シニア初優勝で20年ぶりの優勝の美酒にひたりました。プロゴルファーはいくつになってもゴルフツアーで脚光を浴びる“ハスラー”は忘れられないのです。これで倉本昌弘、湯原信光、羽川豊がすべてシニアで勝ち星を上げ、“学士プロ三羽烏”の復活も話題になりそうです。
 
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よみがえった“世界的レフティー”羽川豊のドライバーショット(森林公園GC)
よみがえった“世界的レフティー”羽川豊のドライバーショット(森林公園GC)

 羽川は初日から2日間とも70で回って4アンダー、8位タイ。首位の佐藤剛平までは4打差での最終日、全くノーマークのスタートでした。アウトではひとつ伸ばして5アンダー。ところがインに入って突然の爆発でした。長いパットがポンポン入って10番から3連続バーディー。15、16番も連続バーディーにして31。ベストスコアの66で回って通算10アンダー。初日から首位にいた佐藤剛平とのプレーオフに持ち込んだのです。
 プレーオフ(18番の繰り返し)ではフェアウェイ中央に打ってくる佐藤に対して羽川は1、2ホールとも第1打を左に曲げてラフ。2度とも10メートル以上の長いパットを残しましたが、ナイスタッチでカップ近くに寄せてパーセーブでした。カップの位置を、奥目からグリーン真ん中近くに変えた3ホール目。佐藤が根負けしたようにグリーンを外し、寄せた1メートルがカップをなめて外れ、パーの羽川が優勝となりました。
 
 「勝つってこんなにうれしいとは思わなかった。久しぶりだものねぇ。後半、プレッシャーのかかった中でボギーを打たなかったし、ショットもうまく打てたので、まだいけるなと思ったです」解説ではなく、自分のゴルフをじっくりと振り返った羽川は、満面の笑顔でした。
 2000年の日本プロを最後にツアーのフィールドから姿を消していた羽川。プロゴルファーにはショットで腕が下りてこなかったり、パットで手が動かなくなるイップス(病)があります。羽川は「パットのとき手が震えてしまうイップスにかかった」そうで、以来8年間はツアーを一時離れてTV解説者に“転身”していました。全英オープン、全米オープンはじめ内外のツアーでテレビ解説、「多くの選手を見て勉強になった」という羽川に“春”がよみがえったのです。この優勝は、レギュラー時代の95年関東オープン以来16年ぶり、ツアーとしては91年3月、インペリアル、静岡オープンと2週連続優勝して以来、20年ぶりのことでした。
 

表彰式で並んだ羽川豊(左)とプレーオフで敗れた佐藤剛平(中央)。右はホストプロ・白浜育男=埼玉・森林公園GC
表彰式で並んだ羽川豊(左)とプレーオフで敗れた佐藤剛平(中央)。右はホストプロ・白浜育男=埼玉・森林公園GC

 レギュラーツアーでは81年に日本オープンと日本シリーズに優勝。82年はマスターズに招かれて15位に入る大健闘をしました。レギュラーでは通算6勝していますが、40歳を過ぎてからパターイップスとは・・・。
それにしても、どうやって難物のイップスから逃れられたのでしょう?
 中尺を使ったり、グリップを変えてみたり、さまざまなことをやってきた羽川が、家の隅にあった長尺を手にしてやってみると「1メートルのパットに突然手が動いた」(羽川)のです。シニア入りする2年前のことでした。それ以来、長尺パターはもう離せなくなりました。コースに出てもなんとか2パットでいけるようになり「長年悩んだグリーン上での不安感がなくなった」(羽川)のです。 
 08年にシニア入りしてから4年目。09年の日本プロシニアで唯1試合の予選落ちがあった以外予選落ちはなく、シード選手をずっとキープしています。これまで優勝はなかったですが、現役時代の実力はダテではありませんでした。やはり一枚上のプレヤーとしてシニアツアーの中心選手でした。解説の仕事で海外にも数多くいっていますが、国内では海老原清治プロの練習仲間。「海老原さんのゴルフや話は、参考になることが多い。体が空いているときは一緒に週2回くらいはラウンド練習している」とのことですが「シニアのゴルフで目立つのは、100ヤード以内でのミスが多いこと。やはり体が硬くなっているのでしょう。今年はオフに走りこんで下半身を強くしました。トーナメントで優勝を争う緊張感が忘れられません。それとシニアのよさをもっと世間に伝えていきたい」と話す羽川です。
 
 今年も1月のザ・ロイヤルトロフィー(タイ=アジア対欧州対抗戦)や全米オープンも解説しました。今週は英国に飛んで全英オープンのTV解説。その翌週は全英シニアオープンのマンデートーナメント(予選会)に自らも出場して本戦出場を目指します。解説に試合にフル回転の羽川豊。まだ53歳は若いです。シニアツアーで優勝を果たしての渡英ですから、今年の全英シニアオープンの予選は注目です。
 ちなみに羽川が出る全英シニアオープンのマンデートーナメントには、奥田靖己、植田浩史、高松厚もトライします。