アルバトロスとホールインワン連発の奇跡! ハーフ「27」のミラクル! 有村智恵&諸見里しのぶの快挙

スタンレーレディス初日にアルバトロスとホールインワンを連発して驚かせた有村智恵。
スタンレーレディス初日にアルバトロスとホールインワンを連発して驚かせた有村智恵。

 海の向こうのメジャー、同時開催の全英オープンも影が薄くなるような神がかり的なゴルフが、日本の女子ツアーで連続して起こりました。スタンレーレディスの初日(静岡・東名CC)有村智恵(23)が、「3万年に1回」というアルバトロスとホールインワンを同一ラウンドで達成する奇跡を起こしました。と思うと最終日には、諸見里しのぶ(25)が8連続バーディー(最後はイーグル)で前半ハーフ「27」の国内史上最小ストロークをマークして2度びっくり! 連日の暑さのせいで何かが狂った?のでしょうか。富士山を仰ぐ東名CCで、それこそゴルフの神様が降臨したような出来事連発で、ゴルフ界は騒然でした。有村智恵が初日の勢いをキープして通算15アンダーで昨年4月のスタジオアリス以来、1年3ヵ月ぶりの8勝目をあげました。
 
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 アルバトロス(あほうどり)が飛んだのは、気温31.6度を記録した大会初日、東名CC 8番(503ヤード、パー5)でした。軽い打ち下ろしのフェアウェイにビッグドライブを放った有村の残りは190ヤード。2オンを狙って3番ユーティリティを振り抜きました。「ちょっと薄めに当たってよかった。しっかり当たっていれば大きかった」(有村)というボールは、ピン手前5メートルに落ちてそのままカップに消えました。パーより3打少ないアルバトロスは、ホールインワンより難しいとされ、統計的には「1万7896ラウンドに1度」。日本女子ツアーでは10回目のことでしたが、その最後はやはり有村で、09年のフジサンケイレディス1R。それに続いて、有村の″連続〝2回目の快挙でした。
 

飛ばし屋ではないが、安定したショットには定評がある有村智恵(右)と小田亨キャディー(左)。
飛ばし屋ではないが、安定したショットには定評がある有村智恵(右)と小田亨キャディー(左)。

 これまで試合でホールインワンのなかった有村は、キャディーと「ホールインワンよりアルバトロスの方が多い人なんていないよね」と笑い合ったそれから約2時間後。16番(135ヤード、パー3)。8番アイアンでのショットは「完璧」(有村)。5メートル手前に落ちたボールはそのまま真っ直ぐカップに消えたのです。ティーグラウンドでホールインワンを見届けた有村は、思わず持っていたクラブを落とし、両手で口をふさいで奇跡に顔を引きつらせました。「どうしよう。怖い!」小田亨キャディーにつぶやく有村。アルバトロスとホールインワンの同時達成などというのは、統計によれば「1080万9184ラウンドに1度」。毎日1ラウンドしても「2万9614年に1度」の奇跡なのです。
 

スタートを待つ有村智恵。右は横峯さくら。
スタートを待つ有村智恵。右は横峯さくら。

 このパー5の8番ホール、初日のアルバトロス「2」に続いて、2日目は2オンしてイーグルを決め「3」。最終日はバーディーの「4」。3日間でこのホールだけで6アンダーを稼ぐ幸運のホールとなりました。ホールインワンの16番は2日目、3日目ともにパーで、この2ホールを合わせますと、計8アンダーをたたき出して優勝のキーホールとなりました。
 16番のパー3は、有村にとって実は因縁のホールなのです。06年プロテストをトップ合格した有村は、07年7月のスタンレーで2日目トップタイに立ちましたが、最終日は台風のために中止となり、首位に並んでいた有村と上田桃子、横峯さくらの3人が、16番を使って3ホールの合計で争うプレオフだけを行いました。2ホールボギーの横峯がまず脱落。有村・上田の一騎打ちとなり、プロ初優勝を目前にした有村は4メートル、2メートルと連続してバーディーチャンスにつけながらパットが入りません。3ホールで勝負がつかずサドンデスになった4ホール目。3.5メートルの上田。2メートルの有村と、ともにバーディーチャンスを迎えます。先に上田が沈めたあと、有村はこれを右に外して初優勝を逸しました。グリーンサイドで泣き崩れた有村が印象的でしたが、あれから4年。トッププレーヤーにのし上がった有村は、因縁のホールで強烈なリベンジを果たしたことになります。
 
 奇跡を起こした有村が2日目からも崩れなかったのはお見事です。最終日はさらに5連続バーディーなど67で通算15アンダーに伸ばし、追ってきた横峯さくらを3打引き離して完全優勝でした。「初日の奇跡を、いい思い出にするために頑張った。忘れられない3日間になりました」。
 今年は国内ツアー開幕前、シンガポールでのHSBCチャンピオンズ(米ツアー)で有村は3日間首位を走り、最終日に惜しくもカリー・ウエブ(豪)にかわされた1打差の2位があります。4月の米ツアー、クラフト・ナビスコ選手権でも7位に入るなど好調。国内でも11試合で7試合がトップテン入り。この優勝で賞金ランク5位に上がってきました。2つ上の宮里藍を慕って熊本から仙台市の東北高にゴルフ留学。5月にも被災地慰問している有村は、22日から再び宮城・石巻市の避難所を東北高出身選手とともに訪れ、この奇跡を語り、復興への思いを伝えます。
 

スタンレーレディス最終日にハーフ「27」を出した諸見里しのぶ。
スタンレーレディス最終日にハーフ「27」を出した諸見里しのぶ。

 一方、2日目27位と優勝には程遠かった諸見里しのぶが、最終日にもうひとつのミラクルを演じました。1番をピン20センチにつけてバーディー発進すると、7番まで連続バーディーの連発。有村がアルバトロスを出した8番(パー5)では、9Wでピン右7メートルに2オン。このイーグルパットも決まり、8番までオールバーディー以上という夢のようなゴルフを展開しました。9番は2打目をグリーン左に外し惜しくもパーに終わりましたが、「ハーフ・27」は国内男女でも初めてのツアー新記録でした。「朝から距離感がよかった」というアイアンとパットがさえた9ホールでしたが、後半一転してバーディーが奪えず1ボギーのみ。通算8アンダーの64。前日の27位から3位にまで急浮上しました。「遼クンの58に追いつくチャンスだったのに・・。でも次につながるいい経験でした」と、ちょっぴり悔しがっていましたが、一昨年は6勝も挙げながら9月の日本女子プロに勝って以来、約1年10ヵ月も優勝から見放されている諸見里にすれば、久々の手ごたえだったでしょう。前週にトライした全米女子オープンで予選を通過、34位と頑張ったのに続くこの爆発。長いトンネルから抜け出す起爆剤になるかもしれません。
 昨年3月の中日クラウンズでは石川遼が「58」を出して逆転優勝するハプニングがありましたが、今年は女子ツアーで久々上がった花火も華やかでした。