★プロ初優勝で30分泣き続けた″神の子〝石川遼。3ツアーズへの可能性!?

勝負カラーの赤いパンツに、白ならぬ黒のポロシャツ。
勝負カラーの赤いパンツに、白ならぬ黒のポロシャツ。

17歳、高校2年生の石川遼が、並み居る先輩プロを抑えてついにやりました。1月、プロ転向宣言をしてからまだ10ヵ月も経っていません。その高校2年生プロが、深堀圭一郎との3打差を逆転しての劇的なプロ初優勝。マイナビABC選手権(兵庫・ABCGC 11月2日最終日)を制して得た優勝賞金は3,000万円。獲得賞金は7,000万円を超え賞金ランク6位に上がってきました。昨年5月、アマチュアで優勝したマンシングウェアKSB杯に続くツアー通算2勝目ですが、17歳1ヵ月15日のVは、ドンファンの20歳2ヵ月15日を大幅に更新するプロ最年少V記録です。2週前の日本オープン2位も驚きましたが、まさに日本版″神の子〝です。遼クンの夢「マスターズ優勝」も夢物語ではなくなってきそうです。

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 もう「遼クン」などと軽々しくいえなくなってきました。ジャンボ尾崎がこんなコメントを出しています。「彼はうまいゴルファーではなく、すごいゴルファーを目指している。みんながあいつの能力を知らないだけだよ」ー。
その″すごさ〝を、最終日、最終18番ホールでみせつけられました。16番で8メートルのバーディーパットを沈め単独トップに立った遼は、2打のリードを持って最終ホールへきました。優勝を目前にした525ヤードのパー5です。グリーン手前には池。左からフェアウェイを回っていくルートと、ショートカットで池越えに2オンを狙うルートとがあります。遼のドライバーは、距離は300ヤード近く出ましたが、左のラフ。ややつま先下がりのいやなライでした。10人のプロがいたら9人までは左からの安全ルートで3オンを狙うでしょう。
 「タイガーだったらどうするか分からないですけど、″石川遼〝はあそこで狙っていきましたね。刻んだからといって、必ずパーがセーブできたかっていうと、ちょとでも右へいけば池に入りますからね。あの状況で自分が勝つためには、あれでよかったと思っています」と遼クン。
 距離は171ヤード。ピン位置は右から5ヤード。果敢な挑戦は7番アイアン。打ったあと右足が一歩前に出ていくような不安定なライからのショットは、やはり距離が足らずグリーン手前エッジ。刈り込んだスロープを逆に転がったボールは池の浅瀬にポチャリ。遼クンはひるみません。スパイクのまま水に入り、ボールの手前約10センチから水に入れたSWのウォーターショット。20ヤード先のカップの左へ落ち、右へスピンしながら3メートルに寄ったのです。まさにミラクルショットでした。昨年5月、アマチュアで初優勝したマンシングウェアでも、17番で30ヤードもあるバンカーから直接ほぉり込んだショットとオーバーラップしました。偶然というより、遼にはこうした素晴らしい小技のテクニックがあるのです。「攻めるゴルフ」に徹する遼ですが、この小技とうまいパッティングがあるからこそできる攻撃ゴルフです。

 

プロ初優勝のカップを両手で突き上げる″ガッツポーズ″
プロ初優勝のカップを両手で突き上げる″ガッツポーズ″

最後80センチのウイニングパットを沈めると右手こぶしを下から突き上げ天にとどけとばかり叫んだ雄たけび。専属キャディーの加藤大幸(ひろゆき)さん(25)と抱きあったら吹き出てきた涙は、表彰式から記者会見場まで約30分以上も流れ続けました。会見場で涙が収まるまでまだ約1分・・「もう大丈夫です・・」とようやくインタビューが始まりました。
 「やっぱり一番嬉しいかなって思いますね。いままでゴルフをやってきた中で、ジュニアの時の優勝も含めて一番嬉しかったな。マンシングウェアの優勝は、いまでも実感がないくらいですから・・。いまは一番落ち着いてプレーができています。自分の体とか頭とかが、自然な状態でプレーできます。気持ちに起伏があったらいいスコアなんて出せるわけないって思えるようになりましたね。1打1打に怒ったり、悔しがったり、ワーッって泣いたりとか、そういうものはほとんど必要のないものなのかなと思いますね」

 ゴルフセンスがある上に石川遼の練習量はだれよりも負けません。「どんなに疲れていても遼が練習を休んだ日はありません」(加藤キャディー)という。ドライバーをマンぶりしては曲げた日々。19試合中8試合の予選落ちで苦しんだ時期もありました。しかし、遼は一歩一歩確実に階段をのぼってきました。いまではドライバーのめちゃ振りはかげを潜めました。数多くのトッププロたちと一緒にラウンドすることでスイングのリズムやタイミングを覚えたのでしょう。片山晋呉を見習って体のバランスを整える左打ちの素振りも始めました。ダウンスイングも静かになって暴れません。狭いフェアウェイへドライバーで攻め抜いた日本オープン2位。そしてこの優勝。石川遼の進化した何よりの証でしょう。

 ツアーの残り試合は「5」。みんなビッグな試合ばかりです。獲得賞金は7213万166円で6位に上がってきました。すでにシード権は確定しましたが、この先どこまで賞金ランクを上げるか。それによっては日本シリーズのあとに控えている日立3ツアーズ選手権(男子ツアー、女子ツアー、シニアツアーの3団体による団体戦)にも男子ツアー(JGTO)のメンバー入りする可能性が出てきました。石川遼が出場すれば、3ツアーの人気沸騰は目に見えるようです。スポンサーもノドから手がでるほど欲しい選手でしょう。