開幕戦を制したビジュアル系新星・斉藤愛璃! 今年の女子プロゴルフ界に光明!

李知姫、三塚優子の強敵先輩をプレーオフで下して“日本人最速”の開幕戦Vを果たした斉藤愛璃(沖縄・琉球GC=フォト:渡辺義孝)
李知姫、三塚優子の強敵先輩をプレーオフで下して“日本人最速”の開幕戦Vを果たした斉藤愛璃(沖縄・琉球GC=フォト:渡辺義孝)

 昨年7月のプロテストで合格したばかりのルーキーが、今年の開幕戦でいきなり初勝利を挙げる日本女子プロ界初めての快挙が起きました。22歳の斉藤愛璃(あいり)。神奈川・厚木北高出身。高2のときJGAのナショナルチーム入り。高3で日本女子アマ16強には名をとどめましたが、アマ時代はこれといった大きな戦歴もない無名選手。高卒から3度目の挑戦で昨年のプロテストに16位で合格。昨年末のファイナルQT31位で今季の出場権を得て開幕戦、ダイキンオーキッドレディス(沖縄・琉球GC)に晴れて登場した新人の一人でした。華やかな女子プロ界にこつ然と頭角を現したビジュアル系のシンデレラ。一昨年、昨年と韓国勢にさらわれていた開幕戦で新たなヒロインの誕生ですー。
           
             ★              ★

 愛璃さんは、高校卒業後プロテストを失敗していた2010年と11年、TPD(トーナメント・プレーヤー・デビジョン)単年登録で一応プロに転向していました。ツアー出場11戦目(アマ時代2戦、プロ9戦)の初優勝。村井真由美の16試合を抜く日本人最速Vも達成しました。

 2日目、インを30で回る「64」のビッグスコアを出し、11位から単独首位に躍り出ました。2位には昨年覇者の朴仁妃(パク・インビ)が2打差に迫る初めての最終日、最終組。いきなりダブルボギーをたたいて貯金をなくしてしまうスタートは、緊張感のカタマリでしたが、愛璃は耐えました。

 3番(パー3)ではカラーから20メートルの下りスライスのロングパットを鮮やかに沈め「お客さんがワァーっと騒いでくれて、それがいつもの自分を取り戻すきっかけになりました」と愛璃ちゃん。それから4つのバーディーを奪ってまたリードを広げたのは凄いゴルフです。2打リードできた大詰。17番、18番で連続ボギーです。勝利への最後のカベでした。

 18番はプレッシャーを感じていたの?
愛璃「最終ホールのボードをみたとき、私が1打リードしていて・・。見なければよかったなと思って・・。(3オンして)2パットでも大丈夫とか、勝手に思ってしまって最後自分のプレーができなかった。それが残念!」
 3オンで17メートルのファーストパットを1メートル強ショート。これを外して、通算10アンダーで3人のプレーオフに持ち込まれました。

 18番ホール。1ホール目で李知姫が脱落。2ホール目で三塚優子が最後の50センチあまりのパーパットを「ラインが見えなかった。芝の目が強く、目に取られてフックした」(三塚優子)と、左に外すハプニング。二人の強力な先輩ライバルが、次々と自分の方から崩れ去ってくれました。パーで上がっていた斉藤愛璃に勝利の女神は微笑みかけたのです。

1メートル65のすらりとした体躯から長打を飛ばす斉藤愛璃のドライバーショット(沖縄・琉球GC=フォト:渡辺義孝)
1メートル65のすらりとした体躯から長打を飛ばす斉藤愛璃のドライバーショット(沖縄・琉球GC=フォト:渡辺義孝)

斉藤愛璃の優勝コメント:
「夢みたいです。私が優勝できるなんて・・。最後三塚さんが短いパットを外してびっくりしました。ゴルフは何があるか、最後までわからないと改めて思いました。こういうこともあるんですね。2年くらい前からコーチが代わって(桜井大輔さん)コースを攻めるマネージメントなどをいろいろ教わってゴルフが変わってきました。オフのトレーニングで飛距離も前より伸びたのも大きい。セカンドの番手が1番手は違ってきました。グリーン周りも重点的に練習してパーが拾えるようになりました。あとは自分のゴルフがどこまでできるか。2日目を終わって、“もし自分が優勝したらどうしよう”とか余分なことを考えて、コーチに電話したら“自分のゴルフができるかどうか、あす試してきな!”といわれたんです。1番(ダブルボギー)はそれができなかったんですが、自分のプレーが2番からはかなりできたので、それは満足してます」

 プロの世界にはまだなじんでいないホヤホヤの新星ですが、重圧に負けない何かを持っている愛璃ちゃんです。クラブにも強いこだわりがあり、ドライバーはブリヂストンのツアーステージ・Xドライブ705。3番、5番ウッドはダンロップのゼクシオ7。7番ウッドは同スリクソンZ-TX。ユーティリティの6番は同ゼクシオ7。6~9アイアンはミズノ・JPX。ウェッジ(52度、56度)はクリーブランドCG16。パターはオデッセイ・ブラックシリーズ#1。ボールはツアーステージX-01。ウエアはデサント社・・・と徹底して別メーカーで好みのものをそろえています。特定の社とは契約せず「戦う道具なので、いろんなメーカーのものを使うのは抵抗もあったのですが、まずは結果を出すことが第一なので、今年は自分に一番ベストなクラブを使っていこうと」と、意思の強いところをみせています。
 愛璃という名前。母親みゆきさん(49) は「みんなに宝物みたいに愛してもらえるように、と願ってつけました。いつも周りに感謝して、プレーでも日常でも恩返しをできるプロになってもらえたら・・」と話していました。

 優勝が決まった瞬間、ほんの少し涙が出たという愛璃ですが、すぐ笑顔に変わりました。「思ったより以上に嬉しい気持ちがあふれ出たので・・。でも私は、うれし泣きよりも意外と嬉しいときは笑顔でいたいタイプなんです」と、真剣な表情もいいですが、笑顔がなんとも可愛い愛璃ちゃんです。

 華麗な女子プロ界にまた一人現れたビジュアル系の新星。それが開幕戦で誕生したのは、今年の女子プロゴルフ界に明るい光をともしたといえそうです。