絶妙!“ジョーのゴルフ”が魅せました。コマツOP、3ホールのプレオフ勝ち、尾崎直道。国内シニアに大きな「喝」!

シニアツアーでは高額の「優勝1200万円」のチェックを掲げる尾崎直道(コマツOP=小松CC)
シニアツアーでは高額の「優勝1200万円」のチェックを掲げる尾崎直道(コマツOP=小松CC)

“まむしのジョー”がまたやりました! 人並みはずれた粘りを身上とする尾崎直道(56)が、国内シニアツアーの今季第4戦、コマツオープン(石川・小松CC)で通算13アンダーで並んだ植田浩史(53)を、プレーオフ3ホール目のバーディーで下して開幕戦に続く今季2勝目。今年から参加した国内シニアツアーの賞金王はもうこれでほぼ手中です。その直道、今週は新しくハワイ・コオリナで開催される米シニアツアー(チャンピオンズツアー)から招聘賞がとどき、久しぶりに米シニアツアーに挑戦するそうです。今秋の日本オープン(沖縄・那覇GC)には特別推薦枠で招待される見通しもたっていて、まだまだおいそが氏のジョー・オザキです。 

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飛距離はそこそこだが、コースマネジメントなどゴルフのうまさは抜群。抑え目に打った最終日1番の尾崎直道のドライバー(石川・小松CC)
飛距離はそこそこだが、コースマネジメントなどゴルフのうまさは抜群。抑え目に打った最終日1番の尾崎直道のドライバー(石川・小松CC)

 4打差に16人がひしめく大混戦になったコマツオープンでした。その中には倉本昌弘や中嶋常幸の永久シードの仲間もいて、華やかで興味しんしんの最終日。こういう展開は直道にはもってこいの競り合いだったかも知れません。1打差の3位から出た直道は、1番のパー5を着実にとって発進。2番のボギーでちょっとつまずきましたが、3番からはバーディーラッシュ。前半9ホールで5バーディーを奪って早々と首位に立ちました。
後半に入っても10番をとり、15番のパー5は2オンさせてまたバーディー。13番でのミスをすぐ取り返しました。高見和宏、植田浩史、伊藤正己、中嶋常幸らがトップに競りかけてきますが、直道の粘りは最後まで緩みません。大混戦を締めくくるように、1組後ろ最終組の植田が、大詰の16、17番で連続バーディーをとって13アンダーとしたのです。1打先にいかれた直道は、あとのない最終18番(533ヤード、パー5)で魅せました。フェアウェイからの3打目は「残り85ヤード」(直道)。緩く上りのフェアウェイ。「90ヤードは飛ばさなくてはいかん。サンドウェッジで・・」と、決めた直道のショットは、理想の弧を描いてピン上5メートルに落ち、強烈なバックスピンでスルスルとカップ際、30センチにまで転がり落ちてきました。直道が頭に描いた通りのマネジメントです。イージーバーディーで13アンダー。後ろからくる植田とのプレーオフを決めたのです。

1番ティーグランドでスタート前、入念なスイングチェックをする尾崎直道(石川・小松CC)
1番ティーグランドでスタート前、入念なスイングチェックをする尾崎直道(石川・小松CC)

 同じ18番を使ってのプレーオフ。1ホール目はともにパー。2ホール目の直道は、3打目のアプローチをまた3メートルほどバックスピンさせてカップ20センチにつける再度の妙技。しかし植田もここをバーディーとして3回目の18番に戻ります。2週間前長野オープン(地方大会)で5ホールのプレーオフをやって勝っている植田も絶好調。巧みなパットを決めて譲りません。グリーンのカップ位置が左から右サイドへと切り変えられた3回目。ドライバーを浅い左ラフに入れた直道は、3Wをフルショット。見事にグリーンを捉え初めての2オン。10メートルのパットが1.5メートルもショートして周りはざわめきましたが、これを真ん中から入れたのが勝利のバーディーとなりました。3オンで2メートルにつけた植田はこれがカップの右をすり抜け、直道の粘り勝ちとなったのです。

シニアツアーでは老舗大会の一つ「コマツオープン」は今年も残暑厳しい中で開催された(石川・小松CC)
シニアツアーでは老舗大会の一つ「コマツオープン」は今年も残暑厳しい中で開催された(石川・小松CC)

 それにしても尾崎直のアイアンを操る技は18番グリーンを取り囲んだギャラリーをうならせました。本戦から4度続けて挑戦した18番。うち3回をバーディーとしたのですから文句はありません。ドライバーは植田ともどもあまり飛びません。せいぜい270ヤード前後でしょうか。300ヤードドライブがまかり通る現代では飛ばない方。18番グリーン後方で見守っていた倉本昌弘が「2人ともティーショットは“代打”を出せ!」などというきついヤジが飛んでいたほどです。
 「たしかにドライバーでは見せられないけど(18番でみせたような)こうした技が自分の砦(とりで)なんだ。これが崩れたらおれのゴルフはおしまい。(一緒に回った)中嶋さんのショットを見ていたり、朝から自分のバックスピンの感覚を確かめたりしながら、カンを養ってるんだ。それなりの自信はあるけどあんなに2度までも“OK”に寄るなんて、それは運だね」

国内シニアツアー3戦してはや2勝。表彰式で優勝スピーチする尾崎直道(12年コマツオープン)
国内シニアツアー3戦してはや2勝。表彰式で優勝スピーチする尾崎直道(12年コマツオープン)

 謙遜もちょっぴり交えた直道ですが、2打目からの多彩な技が、56歳の尾崎直を支えているのでしょう。6年間の米シニアツアーへの挑戦。結局はシニアでの優勝には恵まれず昨年は米賞金ランク35位で「30位まで」のシード権を得られず、国内ツアーへの復帰となりました。日本ではレギュラーツアー2度の賞金王。99年には史上5人目の“日本タイトル4冠”を果たし、ツアー32勝まで戦い抜いて永久シード選手となっています。今年は日本オープン(10月11日~14日、沖縄・那覇GC)に特別推薦選手として招待されることが内定しているなど、まだまだレギュラーツアーへの愛着も捨てがたい直道ですが、「シニアでもこうやって勝つと大勢の人が喜んでくれる。レギュラーの楽しみも残っているけど、シニアへのウエートが高くなってきている」と、つぶやいていました。
 さらに今週は新しくハワイ・コオリナで開催される米シニアツアーへの推薦をもらっていて「女房もハワイなら行きましょうよといってるので挑戦してくる」と、話しています。国内シニアツアーは3試合の出場で早々と2勝。2776万4750円を稼ぎ、2位の高見和宏には830万円余の差をつけました。あと4試合しかないシニアツアー。尾崎直のスケジュールでは、ISPSハンダカップは欠場の予定で、残る試合は3試合。初の賞金王の可能性はグンと高くなっています。
 中嶋常幸、室田淳、尾崎健夫、倉本昌弘、高橋勝成・・・こういったシニアのスターたちに、かげりが見え始めた昨今、ジョーこと、尾崎直道の出現は、国内シニアに大きな「喝」を入れた感が強いです。