“半泣きです”シードをなくした細川和彦、渾身の単独3位の喜び!夏男の復活なるか!?

シード権を落とした今季、5試合目のVanaH杯で単独3位に食い込み、復活の足ががりをつかんだ細川和彦。
シード権を落とした今季、5試合目のVanaH杯で単独3位に食い込み、復活の足ががりをつかんだ細川和彦。

「あした行くはずだった次のマンデーはもういらない!」どん底に落ちた細川和彦(41)、渾身の単独3位で笑顔がはじけました。VanaH杯KBCオーガスタ(福岡・芥屋GC)、4日間ともアンダーパー、最終日も68をマークして通算15アンダーはもちろん今季自己ベストスコア。優勝の金亨成(キム・ヒョン・ソン=韓国)には3打届きませんでしたが、最終18番で約2メートルのバーディーパットを沈めて単独3位を確保。小さく右こぶしを突き出したガッツポーズには、さまざまな思いがこめられていました。今年はシード権をなくしている細川にとって、次週のフジサンケイクラシックは、出場権がなく、27日に行われるマンデートーナメント(予選会)に出場する予定だったのです。もうそれもいらない。今季初めて経験する3週連続出場がかなって、細川は復活への闘志を燃やしています。

    ☆★          ☆★

 細川はプロゴルファーの明暗、その陰の悲哀を嫌というほど味わってきた今シーズンでした。昨年、賞金ランキング79位で、長くキープしてきたシード権を失いました。暮れの最終予選会は37位。「30位内ならもっと出られるかと思った」という今年のツアーは、外国人選手の欠場が例年より少ないなどで、なかなか出場の枠がおりてきませんでした。会場に行って欠場選手の空きが出るのを待つ“現地ウェイティング”も何試合もやりましたが、思うように出場のチャンスはきませんでした。4月のつるやオープン(40位)、5月の日本ツアー選手権シティ杯宍戸ヒルズ(43位)、7月のサン・クロレラクラシック(予選落ち)、8月の関西オープン(51位)と、“月イチ”にも及ばない試合数で悶々(もんもん)の日々を過ごしてきました。練習の合間、2人の男の子(小6と小3)と遊ぶ時間が増えるのも複雑な心境でした。やっとチャンスが巡ってきた5試合目のKBCオーガスタ。1995年、細川のツアー初優勝は、この真夏のKBCオーガスタでした。父親・和男さんと18番グリーンで抱き合って涙を流した思い出の芥屋(けや)GC。いまではツアーで唯一の高麗グリーンですが、細川にはゲンのいいコースなのです。その思い出の地でつかんだ復活の手ごたえは格別です。
 難解な高麗グリーンをよく知っている細川は、今週8本ものパターを会場に持ち込んで難しいグリーンの征服に万全を期しました。
ピン型パターを選び、4日間の平均パット数13位(1.6429)は、その効果の現れといえるでしょうし、最終18番でプレッシャーのかかる2メートルのバーディーパットを見事に決めて単独3位をつかんだのは値打ちものでした。獲得賞金は748万円。通算では866万9,280円で60位。70位までのシード選手の圏内へ、大きく前進した貴重な1戦となりました。
 「5位以内なら次週の試合出場OK」のツアー規定によって、マンデーに挑戦することなくフジサンケイへの出場が確保されました。そうでなければ、休む間もなく27日の月曜日は次週フジサンケイのマンデー予選会に駆けつける手はずでした。
「マンデーに出るならキャディーバッグ(クラブ)を持って帰らなければいけなかったけど、これで宅急便で送り返せます。もう“半泣き”ですよ」と、試合後は喜びを表現していました。今週は今季初めて3試合連続出場となります。夏に強い細川が、勢いに乗って本領を取り戻す絶好の舞台が整いました。
 

VanaH杯KBCで3位に入り、ツアー規定により今週30日開幕の「フジサンケイクラシック」の出場権を確保した細川和彦。そうでなければ27日のマンデー予選会に出るはずだった。
VanaH杯KBCで3位に入り、ツアー規定により今週30日開幕の「フジサンケイクラシック」の出場権を確保した細川和彦。そうでなければ27日のマンデー予選会に出るはずだった。

 ツアーの約半分を終わったいま、細川はVanaH杯KBCにかける気持ちを「初心に戻って頑張る」と話していました。“初心に戻って”といえば聞こえはいいですが、出場試合数も激減して収入もまま成らぬ現状は厳しいものです。これまでずっと使ってきた帯同キャディーをやめ、今週はハウスキャディー(女性)を採用して試合に臨みました。残り距離やクラブ選びもほとんど自分で測定して決めてプレーしました。「気分転換で、久しぶり新鮮だった」(細川)とはいっていますが、いいかえれば背水の陣でもあったのです。かっては飛ばし屋で鳴らし、構えたら時間をかけずに打つテンポのいいプレーは、日本ツアーのトップグループに名を連ねたほど。00年には米ツアーにも積極的に挑戦。ケンパーインシュランスオープンでは、惜しくも優勝を逸する2位に入ったこともあります。01年のシーズン後半に激しい腹痛に見舞われて緊急入院。結果は難病指定の潰瘍性大腸炎と診断され、体重も飛距離も落ちる苦しみを味わいました。すぐに完治する病ではなく、漢方治療や各地の医者を訪ね歩いたりの闘病生活を続けながらのツアー参戦でした。以前のような強さも陰をひそめて、ツアー8勝はしていますが、05年の日本ゴルフツアー選手権宍戸ヒルズカップ以来、優勝から遠ざかってもう7年になります。昨年10月にはひざの半月板を痛めて泣きっ面に蜂でしたが、トレーニングを指導してもらっている筑波大のドクターの懸命の治療で、今季はそれもほとんど気にならない回復をみせています。

 今季は少ないチャンスをつかんでいかなくてはならない厳しい立場はまだ変わりません。KBCの単独3位が復活へののろしとなればすばらしいことですが、まだまだ予断は許しません。最終的にシード権確保の賞金ランク70位に入るには、およそ1,500万円のラインは確保する必要があります。(昨季の当確ラインは1,479万8,510円でした)。あと700万円は稼がなくてはなりませんが、これからの秋の陣、何試合に出られるか。トーシンとANAオープンにも出られそうで、さらに日本人の出場選手が制限されるパナソニックオープン(アジアンツアー=9月20~23日)、キャノンオープン(10月4~7日)と、秋の大きな2試合の推薦出場は決まっています。これからの活躍次第ではもっと出場試合数が増える可能性もあります。“夏男・細川”、復活へよみがえるか、まず今週のフジサンケイに注目です。